No Room For Squares !

レンズ越しに見えるもの または 見えざるもの

街道抜けた先にある町 〜(最終回)川崎村に見る小沢一郎の影

2021-06-26 | 街:岩手



新潟県に行くと、道路が余りに立派で驚くことがある。秋田県を走る国道よりも立派な道路が、実は農道だったということもあった。言わずと知れた「田中角栄」さんの恩恵なのだと思う。世間では、田舎(地方)に立派な道路があれば「土建屋の利益の巣窟」と揶揄され、「費用対効果」がない無駄道路という烙印を押される。地方に住む者の立場として考えると、確かに無駄な道路が存在することは否定できない。それでも車社会ゆえに、交通事故一つ、土砂崩れ一つで、交通が遮断され、日常生活が維持できなくなる。複数の道路がなければ、陸の孤島状態が長期間続く地域もある。潤沢な社会資本に囲まれた都市部の住民には理解できないこともあるのだ。高速道路も「無駄」と叩かれ続けて久しいが、分断している高速道路が繋がった地域では、物流が機能し始める。すると大手の工場が進出し、地元での雇用が確保され、若者の流出に歯止めが掛かる。人口流出が抑えられれば、地場の様々な産業が活性化する。田舎とは、かくも非効率な努力を続けないと維持できないのである。そもそも道路を費用対効果だけで評価するのであれば、地方には道路を作らず、都会にだけ多くの道路を走らせれば良い。都会にしか立派な道路がなければ、どうやって都市部から外へ出かけるのだろうか。地方で生産した生鮮食品は、どうやって都市部に運ぶのだろうか。まさか砂利道をトラックが走るものでもあるまい。田舎(地方)が維持できないということは、すなわち日本という国体も維持できないことを意味すると思う。

以前、どこで見つけたのかは失念したが、「電柱埋設」のことを書いた文章を読んで呆れ果てたことがある。そこでは次のようなこと(趣旨)が書いてあった。「諸外国では電柱の地下埋設は当たり前だ。東京もそれを進めるべきだ。電柱があることにより、歩道が狭くて私も不便な思いをしている。足を引っかけそうになったこともある。事故にでもなったら大変だ。1kmあたり数億円で出来るので、地方の無駄な道路建設をすべて止めたら、早期の実現が可能だ」。もう絶句した。電柱の地下埋設は、確かに進めるべき話だとは思う。一方で、地方では歩道すらない道路、国道とは名ばかりの狭く古い道路、そんなものが多く残っている。高速道路だって切れ切れに分断されている。その整備よりも、自分が足を引っかけないように電柱を埋設しろと。その為に地方の道路整備をすべて止めろと・・・。僕も過去には、東京に10年近く住んだことがある。その時は地方都市のことなんて考えもしなかった。そういうものかもしれない。

さて、話が逸れてしまった。岩手県は、「小沢一郎」という政治家を輩出した地域である。今は何党所属なのか知らないが、かつては自民党幹事長として剛腕を振るい、旧民主党政権自体には「影の首相」とも言われた存在である。一関市は衆議院の岩手3区となり、小沢氏の地盤である。今でも各地でポスターなどを見かける。その割に、この地はその「利」を得ていないような気がする。最小公倍数としての地元に「利」をもたらしつつ、最大公約数としての国家国民のために働く人、それこそが国会議員なのではないか。問題があるとしても、田中角栄は新潟県の為にも働いた。小沢氏と岩手県の関係は、その関係とは程遠いように見える。岩手の人は、「地元のことなんて無視して、国家全体のことだけを進めて欲しい」と考えるのだろうか。それとも僕が知らないだけで、有形無形の恩恵があるのだろうか。岩手の町並みや街道を見るたびに、複雑な思いを持つ。これらの町は、大物政治家とは無関係に歴史的に発展し、そして衰退していくだけではないか。むしろ小沢一郎氏が存在しなければ、岩手県はもっと発展したのではないか、そんな気がしてならない。理屈っぽくなったので、この辺りで止めにしたい。多くの町を歩くと、理屈っぽくなって敵わない。

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4 コメント

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Unknown (しまねこ)
2021-06-26 21:33:33
こんにちは。
仰せの通り、新潟県に入ると道路がたいへん立派ですね。
うちで長岡に帰省するときには、青森もしくは秋田から国道7号線を南下していきます。
村上市を過ぎるくらいまではのんびり気分ですが、新新バイパスに入ると一気に緊張感が増します。
初めて通った時は、どこかで間違えて有料道路に入ったのかと焦りました。
今でも、この交通量で、この速度ですか!うわぁぁぁ!となって、降りるIC間違えたりしてます。

新潟は都会だから立派な道が要ったのか、立派な道をつけたから発展したのでしょうか。

数日前に作家の立花隆氏の訃報に接し、一度きちんと「田中角栄研究」を読んでみようかと思っていたところでした。
入手が難しいかもしれないので図書館へ、と思いましたが、こちらは緊急事態宣言は解かれたものの、公共の施設が再開するのはまだ先になるようです。オリンピックマラソンは来るようですけど。
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しまねこさん (6x6)
2021-06-27 07:20:39
新潟のバイパス、僕も何故か緊張します。
北陸自動車道に乗ると、逆に安心します。
みんな結構なスピードで走っていますが、取り締まりとか、どうなっているのか心配にもなります。
逆に駅前とか市の中心部の交通は、ナーバスではないのも不思議です。

角栄さんについては、是非が分かれる方だと思いますが、「日本全国を新幹線と高速道路で結び、工場を地方に移転させる」という発想は、今だに生きているんだなと感慨深いです。

そう考えると、岩手はもっと発展してよかったのにとも思います。
日本海側、しかも北部の秋田は難しいですが・・・。
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確かに… (ダム)
2021-06-27 08:45:16
ロクさん、お早うございます。
しまねこさんとのやり取りを拝読して少々、記したくなりました。
新新バイパス、思い当たります(笑)。
僕は今、帰省時にしか利用しませんが、こう何と言いますか、車がごちゃごちゃ走ってる感覚(苦笑)がいつもあります。
急に車線変更してくるのは、名古屋でも当たり前なのですが、また違った緊張感が新潟のバイパスにはあります。

~逆に駅前とか市の中心部の交通は、ナーバスではないのも不思議です。~

全く仰る通りです!本町や古町の界隈も割合、のんびり車を運転することができます。こう、走る以外ない、目的地に行くしかない道路は、かえって緊張するのかしら…。

僕は子どもの頃、角栄さんは「ヨッシャヨッシャで悪いことをした政治家」という先入観がありました。
でも、年を経ていくにつれて、悪いことも沢山したかもしれないけど、新潟を始め、世のために良いことも沢山した政治家だという認識に落ち着きました。
僕が生まれた年に、日中共同声明にこぎつけた手腕もなかなかと思っています。
新潟の道は、田舎でも広く走りやすい。
そのおかげで、豪雪時に除雪された雪が脇にうず高くなっても、僕のようなたまの地元人は安心して帰省することができています。
秋田県の良さが、ロクさんはじめ、地元の方が困惑しない程度に知られることを祈念しています!
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ダムさん (6x6)
2021-06-28 06:13:22
おはようございます。
「車がごちゃごちゃ走ってる感覚」。本当のその通りですね。しかも結構な数で、結構な速度で、右へ左へ。ちょっと独特の感じで最初は本当に驚きました。
でも一般道は快適で走りやすいです。嗚呼、こんなこと書いていたら、新潟に行きたくなりましたよ。

追伸:角栄さん、僕も少し詳しく知りたいなと思っております。
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