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本命不在といわれる「ポスト岸田」レースに変化が見られている。支持率が上昇基調にある岸田文雄首相は「ポスト岸田も岸田」と長期政権を当然視するが、2年後に迫る自民党総裁選を巡っては早くも再選を危ぶむ声も広がる。さらに、自民党内の権力バランスに異変が生じ、有力候補の面々が出走断念に追い込まれる可能性も出ているのだ。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「ポスト岸田は岸田」を揺るがす
“ファクターS”とは?
昨年9月の自民党総裁選で、当時の首相だった菅義偉氏を不出馬に追い込む形で権力の頂点に立った岸田文雄首相。世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大第6波という高波を越え、3月の「まん延防止等重点措置」全面解除から支持率が上向いている。
マスコミ各社の世論調査では昨秋の政権発足時からいずれも上向き、日本経済新聞の4月の調査では64%と高水準にある。3月下旬から岸田氏はインドやカンボジア、ベルギーを相次いで訪問し、大型連休中は東南アジアや欧州を訪れる「首脳外交」に精を出す。
高い政党支持率に支えられる自民党。今夏の参議院選挙でも優位は動かず、「ポスト岸田」レースも本命不在とあれば、2024年の党総裁選で岸田氏の再選は不動というのが大方の見方だ。だが、ここで順風満帆なはずの岸田氏を揺るがす「ファクターS」が登場する。
首相の再選は困難と見るのは、全国紙のあるベテラン記者だ。「コロナ対策では未知の要因として『ファクターX』が注目されましたが、自民党の次期総裁選では『ファクターS』、つまりは菅前首相の動向が鍵を握ります。菅氏のことを蛇蝎のごとく嫌う岸田氏としてはいら立たしい動きでしょうが」。
ポスト岸田レース
「有力候補7人」の現在地は?
昨年の自民党総裁選で、政権を支えていた二階俊博幹事長(当時)への「岸田氏による執拗な攻撃」(二階派議員)に遭い、内閣改造・党役員人事もできないまま退陣に追い込まれた菅元首相。昨秋の岸田政権発足後は「非主流派」に転じ、政府や党のポストから離れて目立った活動も控えてきた。その菅氏がいよいよ再始動を決め、今夏の参院選後に80人規模の「勉強会」を発足する。
この動きが総裁選に与える影響を全国紙政治部記者が解説する。
「菅氏は史上最長の安倍晋三政権を官房長官として支え、一時は冷え込んだとも言われましたが、安倍氏との関係は盤石です。所属議員が90人を超える自民党最大派閥のトップと、80人規模となる『菅グループ』のトップが組めば、総裁選での勝負は圧倒的に有利となるでしょう」
今夏の参院選での獲得議席にもよるが、400人に達しない自民党所属の国会議員の中で「安倍派+菅グループ」の総勢は過半数に迫る。他派閥にも安倍氏に共鳴する保守政治家は多数存在しており、「安倍・菅連合」が協調すれば、絶大な権力を握る現職宰相といえども対抗するのは数字上困難となる。
言い換えれば、2年後の自民党総裁選の勝利者は安倍氏も菅氏も「乗れる」ことが条件になるというわけだ。では、「ポスト岸田」候補の誰がその条件に当てはまるのか。
最も先に消えるのは、他ならぬ岸田氏である。菅氏とは4月22日にも議員会館に赴いて会談しているが、「ほとんど視線も合わせないような関係」(政治ジャーナリスト)とされ、総裁選で「菅グループ」が推すことは考えにくい。
次に、昨年の総裁選で安倍元首相の全面支援を得て、3位の188票(議員票114票、党員票74票)を獲得した高市早苗・自民党政務調査会長はどうか。
高市氏は「歩みを止めない」と宣言し、ポスト岸田への立候補に向けて安倍派への復帰が予想された。ところが、「帰れるかなと思っていたが、特にお誘いもない。しばらく一人ぼっちかもしれない」(高市氏)という状況で、安倍派内にも高市氏の復帰には異論がある。菅グループとも距離があるとされ、「条件」には当てはまらない。
では、前回総裁選で2位だった河野太郎・自民党広報本部長(元ワクチン相)は適合するのか。
昨年は退陣直後の菅氏が支援に回り、若手・中堅にも改革手腕に期待する「河野シンパ」が多い。ただ、安倍氏サイドには「河野氏は何をするのか分からない危うさが残っている」(安倍氏周辺)との見方がある。今度は安倍氏がみこしを担げないというわけだ。
有力候補には、林芳正外相の名も挙がる。首相を目指して参院議員から衆議院にくら替えした、閣僚経験が豊富な政治家ではある。しかし、地元・山口県では父親の代から安倍氏側としのぎを削ってきた関係だ。衆院小選挙区の区割り見直しに伴って山口県の定数は1減となる予定で、ライバル関係にある林外相を安倍氏が推すことは考えにくい。
最大派閥・安倍派には、かつて安倍氏の「秘蔵っ子」といわれた稲田朋美元防衛相や下村博文元文部科学相など、総裁選への意欲を示す人々もいる。稲田氏には、安倍氏も「国のかじ取りをしていくトップを十分に目指していく実力はあると思っている。日本初の女性首相を目指して頑張ってもらいたい」とエールを送るが、保守色が強い候補に菅グループが乗れるかは疑問だ。
政策力や外交力が高いと評される茂木敏充・自民党幹事長も3月末、「いずれかのタイミングで皆さんの期待に応えていかなければならない。その思いを強くした」と意欲を示した。
昨年12月に開かれた茂木派の政治資金パーティーでは、岸田氏とともに初当選同期の安倍氏から「残されている国の重要ポストはあと一つぐらいしかないのではないか」と持ち上げられ、菅氏との関係も悪くはない。その意味では「有資格者」だ。
ただ、「高市氏を含めた党内調整力には疑問符がつきます。閣僚時代から言われていた『パワハラ』も嫌悪されており、仮に茂木氏を担ぐ方向でまとめようとしても集約できないのではないでしょうか」(自民党のベテラン秘書)と不安視する向きもある。
意味深長な安倍元首相の発言
その「真意」は?
絶対的な「有資格者」が見えず、混沌としているかのように思えるポスト岸田レース。菅氏は意中の人物の名を挙げることを控えているが、安倍氏は前出の茂木派の政治資金パーティーでこう発言して笑いを誘ったことがある。
「同期で一番の男前は岸田文雄。一番頭が良いのは茂木敏充。そして、性格が良いのが安倍晋三といわれている」
先ほどの茂木氏を首相に推薦するかのような意味深長な発言と併せて、安倍氏の真意はどこにあるのか。参院選後に自民党第2勢力になると見られる「菅グループ」に参加する予定の議員の一人は、こう解説する。
「前回の総裁選で安倍氏は『河野氏だけは勝たせたくない』と決選投票で岸田氏支援に回った。しかし、最初から同期の岸田氏を応援したわけではない。それと同じで、初めから茂木氏を担ぐつもりはないでしょう」
その上で、こう断言した。
「安倍派と菅グループが乗る候補者が勝つことになるのは間違いない。しかし、いま名前が挙がっている中にはいない別の人物になるな」
現職宰相はまたも総裁選で不出馬に追い込まれるのか。ダークホースは一体、誰なのか。
それは首相経験者である2人が垣間見せる「性格の良さ」から見ていくしかない。
以上、ダイヤモンドオンライン
個人的には、高市早苗が首相になってもらいたいが、数の論理で苦戦?
菅元首相と安倍元首相の思惑で決まりそう?
本当に日本を守れるかという視点でポスト岸田を選出してほしい。
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