
共感しました。読みながら何度も「そう、そう!」ってうなずいていました。「ITシステムは導入したようなんだけど、会社は何も変わらないなぁ」と思っている社長さん。「自分たちの仕事ってもっとクリエイティブなものなんじゃないかなぁ」と思っているSE、プログラマーの皆さん。ぜひこの本を読まれることをお薦めします。本当に目からウロコ。発想、視点が変わるだけで、こんなに世界の見え方が変わるなんて驚きです。
正直言って同じ業界(ITシステム開発会社)に身を置く者として、この本の中で語られていることを自分が語れなかったことは大いに反省しました。これからもっと勉強です。
「儲かるITシステム」を作るためには まず社長が「ITシステムは設備投資である」と認識し、システム化・IT化する「目的 と 優先順位 と 納期 と 予算」を定めるのが第一歩ということ。何のためにITシステムを導入するのか、それによって何を実現したいのか、そういった展望を社長が明確に思い描くことが「儲かるITシステム」を作る最初のいちばん大事な仕事だった。
一方現状の日本の多くの社長たちはITシステムの構築を「経費」ととらえ、「ITのことはよくわからないからシステム担当者やシステム会社に任せてある」と発言し、直接関わろうとしない。あとは「できるだけ安ければいい」という発想でITシステムを導入してしまう。この最初の段階での社長の「間違い」が世の中に「儲からないITシステム」を蔓延させる大きな理由になっていたのだ。
そして肝心な自分たちITシステム開発会社の方も、プログラムを作る技術者を「人月(にんげつ)」という単位で計り、「プログラム制作には何人で何ヶ月かかる。だからいくら」という計算で見積りを提出してしまう。そこには「業務改善するための提案」的要素はなく、「言われたものをそのとおりに作ります」という姿勢しかなかった。
「そもそも人月(にんげつ)などと言っても技術者の能力は一人ひとり全然違うのに・・」「野菜じゃないんだからキログラムいくらみたいな売り方はおかしい・・・」いつもそんな風に思っていたけど、それをそのままにしてきたのは「ITシステムは設備投資だ」という展望を自らが持てなかったからだ。このことは本当に不徳の致すところだ。
そしてITシステムを導入する前に「社内の仕組み」を徹底的に分析し、仕事が効率的に進捗するように変える必要があって、その過程が「システム化」。そしてその上でITシステムを導入して、より早く、より迅速に、より正確に経営資源である情報を蓄積できるようにする。その過程が「IT化」。この2つのステップを踏むから経営に役立つITシステムが出来上がるのだ。
これまで自分たちシステム開発業界が「システム化」の過程を省き、「言われたとおりつくります」的なスタンスにたって、「IT化」だけを行ってきた理由は、端的に言うと「システム化」という打ち合わせ(→ タダ働き)が増え、お金を払っていただける「IT化」の部分はどんどん小さくなってしまうからだ。「システム化」のヒアリングの段階でお金をいただけることは日本ではほとんどなく、「IT化」するところだけ「何人月(にんげつ)」といって費用を見積もってきた。
事前打ち合わせと仕組みの分析をきちんとやるとシステムは「シンプル・イズ・ザ・ベスト」の方向に向かうし、それが良いシステムを作るコツなのだが、そのためには十分な事前の打ち合わせが必要で、一方「IT化」のボリュームは減っていくのだ。
またこれまでの慣習に基づく現場担当者の「こうしてほしい」「こうでないと困る」という要望をそのままうのみにしていくことで、「社内の仕組み」を見直し、効率的に組み替える「システム化」するチャンスを逃すだけでなく、「IT化」の費用は高額化し、経営には役立たない複雑なシステムが出来上がる・・・。
最初に方向性を間違うと 後からどんなに苦労してもいいものは出来上がらない。これまで「システム会社の苦労」と「顧客側の満足」がなかなか一致してこなかった理由はここにあったのだ。
まずお客様の「目的 優先順位 納期 予算」を確認し、お客様も自分たちも納得したらヒアリングも含めて徹底的にシステム化・IT化に取り組もう。お客様の会社の仕組みをコンサルティングし、その「システム」をITに乗せるという仕事のやり方に切り替えていこう。
もちろん自分たちシステム会社は最先端のテクノロジーを修得し続け、お客様の業務を理解し、改善提案するスキルを磨き続けよう。それはその道のプロとして当然のこと。努力あるのみだ。SE、プログラマーの仕事はがぜんクリエイティブに輝きだすと思う。
自分にとってはこれからの仕事の取り組み方を根本的に変えてしまうほどインパクトのある1冊。「役立つITシステムを作りたい」と思っている多くの人たちにお奨めします。
| Trackback ( )
|
システム開発は、単なる受注生産ではやれなくなっているのが現状ではないでしょうか。
今求められるのは、いかに効率よくITシステムに投資するか。「80-20の法則」にしたがって、いかに使いやすい80をカバーするコアシステムを構築するかだと思います。手作業をコンピュータシステムに移植しただけでは、どうやっても無駄の多いシステムになるし、効率化には寄与しない。
顧客のリクエストに対してより良い提案できる、ソリューション能力が必要なのだと思います。またこれが、顧客との顧客とのWIN-WIN関係を築くことになるのだと考えます。
…こういう話は、上長には受けが悪いんですがね。(^^;
システム開発に限らず様々なビジネスがターニングポイントにきているような気がしますね。耐震偽装とか、賞味期限の偽装とか、いろいろな業界で一度発注する側も受注する側も、やり方を見直すときにきていますよね。
新しいシステムに切り替わってもそれは「ラクして儲ける」ことができる世界なんか当然なくて、シビアな競争は当然アリですよね。
ソリューション能力、いい言葉ですね。ぼくらの業界はこの能力が求められることになりますね。