さだまさしさんの小説「眉山」(幻冬舎文庫)。映画化され、そして今回、初めて舞台化され、今、明治座で公演中。
出版された直後から気になっていて「読みたいなぁ」と思っていた本。
ぼくらの世代では さだまさしさんというと「グレープ」というフォークグループのイメージが強い。「無縁坂」「精霊流し」「あこがれ」などの名曲を残している。自分は「フレディもしくは三教街」が好きだった。グレープ解散後はソロ歌手として活動されていて、「雨やどり」「関白宣言」などのヒット曲がある。歌詞があまりにも少女趣味的ということで、当時の若い男たち(自分たち)は悪く言う人が多かった。タモリなんかがかなり悪く言っていたけど、自分はその頃の曲も好きで、「雨やどり」はフォークギターで弾いたりしていた。もう20年以上前の話。
その頃から「なんて情緒的で、小説のような歌詞を書くのだろう」と思っていたけど、最近はついに本当の小説家になってしまわれた。曲も好きだったから小説も読んでみたけど、そこでまたびっくり。「歌詞のような小説」というか「絵画的な小説」だと思った。ひとつひとつのシーンが絵のように浮かんでくるし、まるで曲が流れていくように読めてしまう。
徳島に住む龍子と東京で旅行会社に勤めるその娘咲子の母子愛をテーマにした物語。一人娘を母親だけで育てた気丈な龍子が検査入院し、娘 咲子は母の病気がすでに抜き差しならない状況であることを知る。咲子は東京の会社を辞め、徳島に戻り母の看病をすることを決意する。
眉山に育まれたおだやかな故郷で、地元の人たちと助け合いながら看病する咲子。あまりにも毅然とした母の生き方に戸惑いながらも、それは幸せな日々だったと思う。
先日 明治座の舞台を観たときにパンフレットを買ってきた。その中で咲子役の石田ゆり子さんが素晴らしいことを言っている。
「人間は辛い事があると逆に、幸せを感じられる機会が与えられるのではないかと思っています」
まさしくそんな情景が歌のように流れていく小説。
そして徳島の夏といえば阿波おどり。活気あふれる阿波おどりの喧騒の中で、いよいよ病状がすすんでしまった龍子、咲子親子がみたものは。。。
徳島は仕事で何回か訪れたことがある。大好きなビジネスパートナーたちがいる場所。
そんな思い入れのある土地を舞台にした とても可憐で、さわやかな小説に出会えて感激でした。
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