帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔一〕冬は

2011-02-15 05:55:54 | 古典

 



                      帯とけの枕草子〔一〕冬は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、君が読まされ、読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」。
「心におかしきところ」を紐解きましょう。


 

 枕草子〔一〕冬は


 冬はつとめて、雪のふりたるはいふべきにあらず。霜のいとしろきも、またさらでも、いと寒きに、火などいそぎおこして、すみもてわたるもいとつきづきし。ひるになりて、ぬるくゆるびもていけば、火をけの火もしろきはいがちになりてわろし

 

(冬は早朝、雪が降ったのは言わないでいいでしょう。霜のたいそう白いのも、またそうでなくても、ひどく寒いので、火など急ぎおこして、女官が・炭を持ってくるのもぴったり時に適っている。昼になって、暖かく緩んでくると、火桶の火も白い灰がちになって見ぐるしい……冬は供寝の翌朝、白ゆきが降ったのは言うべきではない。しものひどく白いのも。またそうでなくても、身もたいそ寒いので、火を急ぎ起こして、心は澄んでくるのがまったくふさわしい。昼になって、身も温くゆるんでいけば、心の炎も火桶の火のように白い燃えかすばかりとなって、みすぼらしい)。

 

 「つとめて…早朝…ことのあった翌朝」「つとむ…務…するべきことをする…はげむ…精を出す」「雪…白ゆき…おとこ白ゆき…おとこ白玉…おとこの魂…おとこの情念」「霜…白…下」「火…情熱の火」「すみ…炭…済み…澄み」「灰…炭の燃えかす…情念の白き燃えかす」。

言葉は聞き耳異なるもの。字義とは異なった意味に気ままに戯れるもの。それを知れば、雪については言うべきでないということが納得できるでしょう。


 
 言うべきでないと言ったけれど、あえて、白雪の歌を聞きましょう。


 古今和歌集 巻第六 冬歌 坂上是則

 あさぼらけ有明の月と見るまでに よしのの里にふれる白雪

 

 (夜が明けほのぼのと明るくなるころ、有明の月かと見るほどに、吉野の里に降った白雪……朝ぼらけ、つき人おとこ健在と見るほどに、好し野のさとに降ってる白ゆき)


 「有明の月…残月…朝まで大空に残る月…朝まで健在なつき人おとこ」「月…万葉集では、月人壮士・つきよみをとこ。それ以前は、ささらえをとこと呼ばれていた…男」「見…覯…媾…まぐあい」「吉野…所の名、名は戯れる。好し野、良し野、見良し野の好し野」「野…山ばではなくなったところ」「里…女…さ門」「さ…美称」「と…戸…門…女」。

 


 伝授 清原のおうな


 聞書  かき人しらず   〔2015・8月、改訂しました)