■■■■■
帯とけの枕草子〔一〕冬は
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、君が読まされ、読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」。「心におかしきところ」を紐解きましょう。
枕草子〔一〕冬は
冬はつとめて、雪のふりたるはいふべきにあらず。霜のいとしろきも、またさらでも、いと寒きに、火などいそぎおこして、すみもてわたるもいとつきづきし。ひるになりて、ぬるくゆるびもていけば、火をけの火もしろきはいがちになりてわろし
(冬は早朝、雪が降ったのは言わないでいいでしょう。霜のたいそう白いのも、またそうでなくても、ひどく寒いので、火など急ぎおこして、女官が・炭を持ってくるのもぴったり時に適っている。昼になって、暖かく緩んでくると、火桶の火も白い灰がちになって見ぐるしい……冬は供寝の翌朝、白ゆきが降ったのは言うべきではない。しものひどく白いのも。またそうでなくても、身もたいそ寒いので、火を急ぎ起こして、心は澄んでくるのがまったくふさわしい。昼になって、身も温くゆるんでいけば、心の炎も火桶の火のように白い燃えかすばかりとなって、みすぼらしい)。
「つとめて…早朝…ことのあった翌朝」「つとむ…務…するべきことをする…はげむ…精を出す」「雪…白ゆき…おとこ白ゆき…おとこ白玉…おとこの魂…おとこの情念」「霜…白…下」「火…情熱の火」「すみ…炭…済み…澄み」「灰…炭の燃えかす…情念の白き燃えかす」。
言葉は聞き耳異なるもの。字義とは異なった意味に気ままに戯れるもの。それを知れば、雪については言うべきでないということが納得できるでしょう。
言うべきでないと言ったけれど、あえて、白雪の歌を聞きましょう。
古今和歌集 巻第六 冬歌 坂上是則
あさぼらけ有明の月と見るまでに よしのの里にふれる白雪
(夜が明けほのぼのと明るくなるころ、有明の月かと見るほどに、吉野の里に降った白雪……朝ぼらけ、つき人おとこ健在と見るほどに、好し野のさとに降ってる白ゆき)
「有明の月…残月…朝まで大空に残る月…朝まで健在なつき人おとこ」「月…万葉集では、月人壮士・つきよみをとこ。それ以前は、ささらえをとこと呼ばれていた…男」「見…覯…媾…まぐあい」「吉野…所の名、名は戯れる。好し野、良し野、見良し野の好し野」「野…山ばではなくなったところ」「里…女…さ門」「さ…美称」「と…戸…門…女」。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人しらず 〔2015・8月、改訂しました)