「浅見貴子 特別展」、「常設作家 新作展」アートフロントギャラリー
2018年6月1日(金) – 6月10日(日)
先日の日経日本画大賞展で惹かれた(日記)、浅見貴子さんの作品を見たくて、代官山のヒルサイドテラスへ。
この日はその前に青山スパイラルに行っていたので、偶然にも槇文彦先生の建築が続きました。
浅見さんの作品は、5点。
大賞の「影向図」は2015年の作品でしたが、それより前の作品が4点と、2016年の作品が1点。(写真は許可をいただけました)
「山椒の木」2016
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この作品も紙の裏から筆を押しあてて、動かして描いたよう。
葉っぱ越しに、ぱあっときらめく光の粒、木漏れ日、葉っぱのきらめき、枝と葉に水分がいきわたる時のみずみずしさ、そういうものを感じていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/0a/32c554b9bcc1b4bae01eb77cf934a075.jpg)
ひとしきり時間を過ごした後でふわ~と広がる、よろこびのような感情。上手く言えないけれど、うれしくもあり、濁りが取れたような安心感もあり。
あまりにきれいで、なぜか喜ばしい気持ちになる。
ここから年代をさかのぼって、木の作品が続く。
「松図1401」2014 2m×2mの大きな作品
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大きな木の中に入る感じ。先程の山椒と比べると、たしかに松の木。
木が生きているのが見える感じ。松の硬くて、エネルギッシュな。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/a2/5c3f463f3cd22ac0fe345d073124c615.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/94/0f672d3c542a63126335b50dca0e6155.jpg)
「樹木図6」2007
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/60/82a3b1d177d6e0d54d609ec2a7174bac.jpg)
下から見上げる位置にいるんだろうか。裏から濃さの違う墨で描き、表から胡粉と墨で描き、複雑に何段階にも重なっている。茂る葉、重なり、無数の枝の線。
この作品から「影向図」まで10年(!)、「影向図」はずいぶんシンプルな描き方になっていたのだ。10年、この墨の手法を続けてこられたのだなあと思う。大賞展の図録の推薦文に「磨き上げられ、研ぎ澄ましてきた」とあった。浅見さん自身も余白の取り方を工夫したとおっしゃっていた。
この先、墨の木の作品を、浅見さんはどんなふうに描かれるんだろう。少しずつ変わっていくのかな。来年もまたどこかで拝見したいもの。
木の作品以前の作品も、とても心に残る作品だった。
木の作品も、"目にはさやかに見えねども、風の音にぞ”感じるような作品だったけれども、それよりさらに10年前の作品も、具象を描くことなく、それを表したような。
「深閑」1994
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/d9/def4d120196563630eeddcabc13530ea.jpg)
夢かうつつかのようなたらしこみに、銀箔が流れるように。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/47/e2f4a8527b9b1b2472ad49307fb34675.jpg)
月の夜空をみるような。銀河を見るような。むしろブラックホールかもしれない。
いえ、何万光年も先の惑星の表面のような。水の痕跡が見える。ような、ばっかりだけど。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/02/c9d846ef02bbf4083375272bfeec3695.jpg)
深淵ななにか。夜の闇のここちよさ。無意識の遠い記憶に刻まれているのかも?。どこかに「還る」のだとしたら、その還るべき場所のような。(還るなんて言葉が浮かび、ちょっと書くのがはずかしくなる。)
木の作品もそうだったけれど、なんだかやっぱり安らぐ感じ。
「精Ⅲ」1998
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/d9/d8c7c2c6ab65230899cca24118f37aef.jpg)
胎内のような?。放出される生命のもと。水中のようでもあり、なにかの生命の根源的なものような。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/cb/d4c2c91554e417c84dc51380f6390bc9.jpg)
目に見えないどころか、意識にも把握することのできない、体内の誕
生レベルからの記憶の痕跡に触れたような。
画風は違うけれども、木の作品にずっとつながっているような感じも。
このギャラリー全体が深淵な空間でした。
時々見たい、ふと見たくなる絵。影向図もそうでしたが、見て最後にはなんだか心が整うというか、ああ見に来てよかったと思う。
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