情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

物理法則は神経回路を説明できるか?

2019-06-13 15:49:41 | 情報と物質の科学哲学
クオリアの伝道師茂木健一郎による『脳とクオリア-なぜ脳に心が生まれるのか-』、日経サイエンス(2001)から一部を引用します:

ニューロンが、どれほど複雑な構造とメカニズムを持とうとも、自然法則に従う物質に過ぎない以上、私たちのも、自然法則に従う自然の一部であると見なさなければならないのである。(太字指定は当ブログによるものです)

この主張によれば、脳回路そのものも当然物理法則で説明できる筈です。
しかし、これは明らかに間違いです。
何故なら、ヒトの誕生以降、脳回路の形成は周りの環境による影響を多大に受けます。
特に、幼児期から成人に至るまで多くのことを学習しますが、それは脳回路の形成に影響します。

脳回路の形成に関するHebbの学習則はあまりにも有名ですが、これは学習によって脳回路の物質的構造が変化することを証明しています。
つまり、学習という非物質的行為によって脳の物質的構造が変わるのです。

脳科学者でもあるクリックや茂木健一郎もこのことは十分承知している筈です。
それにも拘らず、彼らは心は脳回路という物質現象に還元できると言います。

(1)学習により脳回路の物質的構造が変化する(Hebbの学習則)。
(2)心は脳回路の現象に還元できるので、心を物理法則だけで説明できる。
これらを両立させることは不可能です。
何故なら、(1)には学習という非物質的概念があるからです。

クリックや茂木らが心の現象は脳回路の物質現象に関する物理法則だけで説明できると確信しているのは極めて不可解です。

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物理法則は人間を説明できるか?(続)

2019-06-13 09:03:14 | 情報と物質の科学哲学
自然界にあるすべてのものはヒトも含めて物質からできている。
物質に関わる現象は、すべて物理法則に従う。
故に、ヒトに関わる現象はすべて物理法則に従う。

唯物論者および物理還元主義者は、この説明で満足します。
クリックやペンローズ、クオリアの伝道師である茂木健一郎らは、心の現象もすべて物理学で説明できる筈だと主張しています。

ここで注意してほしいことがあります。
ヒトに関わる現象のうち物理法則で説明できるのは、ヒトの物質的側面だけだということです。
ニューロンの現象やヒトの行動も物理法則に反することはありません。

しかし、ここで話は終わりません。
ニューロンやヒトに関わる現象が物理法則に従うことは、必要条件であり十分条件ではありません。

不思議なことに唯物論者らは、この明白な事実に気が付いていません。
気が付いていても、そのことが問題になることはないと思っています。

さて、次のような場面を考えてみましょう。
一人の男性が歩いて横断歩道のところまで来ました。
歩行者用に信号が赤なので止まりました。

この男性の行動を物理法則だけで説明できるでしょうか?
説明できないことは自明です。
赤信号で止まるのは物理法則によるものではなく、交通規則によるものだからです。
この部分が男性の行動を説明するための十分条件になります。

唯物論者らは、この十分条件については無視します。
人間の行動が交通規則に従うのは、脳が交通規則を解釈して自分の行動を決めるように脳の神経回路が作られているためだと言います。

でも、そのように神経回路が作られるのは物理法則だけによるものではありません。
交通規則を認識して学習することも影響しています。
認識および学習という概念は、非物質的なものであり物理法則とは無関係です。

脳にこのような非物質的機能があるのは生物進化によるものであり、全くの偶然によるものです。

物理法則だけで説明できるのは自然現象に関するものに限られます。

電気モーターの現象は物理法則で完全に説明できますが、モーターそのものを物理法則で説明することは原理的に不可能です。
モーターの設計図は物理法則を参考にして作られますが、それは必要条件に過ぎません。
設計図は非物質的なものであり、物理法則によって生成されるものではありません。

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