情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

ボルンの確率解釈を実証する二重スリット実験

2023-01-19 10:49:07 | 物理学
電子の二重スリット実験を多数回繰り返すと干渉縞ができます。
この干渉縞は、電子の到達位置における波動関数の合成ベクトルの絶対値の2乗にボルンの確率解釈を適用することで説明できます。
この確率解釈は量子力学における公理(仮説)になっています。

しかし、このボルンの確率解釈は単なる解釈ではなく、実験的裏付けがあることが以下のようにしてわかります。

干渉縞は、検出器に到達した電子の個数を検出器ごとに集計した総数の大小により出来るものです。
つまり、干渉縞は各検出器に到達した電子の頻度分布を意味します。
この頻度分布を規格化すれば確率分布になります。

ということは、二重スリット実験における電子検出板における「確率分布」を波動関数と確率解釈を用いて説明できることを意味します。

これらの事実から次の結論が得られます。
ボルンの確率解釈は量子力学の公理(仮説)とされていますが、二重スリット実験は確率解釈を「実験で証明」していることが分かります。
確率解釈は仮説ではないのです!!!
そこで、確率解釈を「ボルンの検出原理」と名付けます。

ボルンが確率解釈を提案した経緯については下記の著書に詳しく出ています。
マックス・ヤンマー(井上健訳)『量子力学の哲学(上)』、pp.49-55、紀伊國屋書店(1991,3)




シュレーディンガー方程式は検出された電子に適用できない!

2023-01-16 09:53:29 | 物理学
当ブログでは波束(波動関数)の収縮問題が擬似問題であることについて繰り返し取り上げてきました。

今回のブログでは、電子銃から放出された電子について分析します。
電子銃から自由空間に放出された電子の波動関数は、シュレーディンガー方程式に従います。

一方、検出器で検出された電子はシュレーディンガー方程式に従いません。
何故なら、この電子の位置が確定したことにより運動量は不確定になります(ハイゼンベルクの不確定性原理)。
このため検出された電子の波動関数は電子銃から放出された直後の波動関数ではなくなるのでシュレーディンガー方程式に従いません。

従って、検出後の電子に対してシュレーディンガー方程式を適用することはできません。
この事実は、波束(波動関数)の収縮という概念自体が成り立たない、波束の収縮問題は疑似問題であることを意味します。


波束の収縮問題に隠された落とし穴

2023-01-15 10:53:30 | 物理学
波束の収縮問題に関して当ブログで度々取り上げてきました。
今回は、別の視点から波束の収縮という概念自体が成り立たないことを証明します。

波束の収縮とは、複素空間で広がっていた波動関数が粒子の検出位置という1点に収縮することです。
この収縮という状況がシュレーディンガー方程式では説明できないというのが波束(波動関数)の収縮問題と呼ばれているものです。

今回のブログで取り上げたいのは収縮問題の議論では粒子の検出位置が「1点」としていることです。
しかし、このことは検出器が有限の大きさを持っていることと矛盾しています。
検出位置は「1点」ではなく有限の広がりを持っているからです。

結局、観測によって波束が「1点」に収縮するという考え方自体が間違っているのです。
この事実は波束の収縮問題自体が成り立たないこと、波束の収縮問題は擬似問題であることを意味します。

従来の議論では、検出器の大きさが有限であることを見落としていたのです。

量子力学に潜む情報概念: 電子の波長は物理量ではなく電子の情報的属性である

2023-01-04 09:54:52 | 物理学
電子には質量、電荷、運動量などの物質的属性(物理量)のほかに、運動量と関係する波長があります。
この電子の波長という概念は、電磁波の波長の概念とは本質的に違うものです。
電磁波の波長は測定器で直接測定できる物理量ですが、電子の波長にはそのような性格はありません。
しかも、電子の波長には実空間における延長性もないのです。

電子の波長は、干渉縞の情報から間接的に求まるものです。
その意味で、電子の波長は物質的属性ではなく情報的属性として理解すべきものです。

電子の波長λと運動量pとの間にはド・ブロイの関係式p=h/λ(hはプランク定数)があるので、電子の波長はこの式から求まるではないかと思うでしょうが、このときの波長はド・ブロイの関係式によるものであり実験によるものではありません。

電子に波動的性質があることを実証するには電子の干渉縞に頼るしかないのです。

従って、電子には質量、電荷、運動量などの物質的属性(物理量)のほかに波長という情報的属性があることが分かります。
電子にこの情報的属性があるために干渉縞という現象が生じるのです。

量子力学は、この干渉縞を複素ベクトルである波動関数の状態の重なりにより生じるものとしています。
しかし、波動関数は複素ベクトルなので実空間における延長性がない抽象的概念なのです。
二重スリット実験における干渉縞を電磁波のような波の重なりいう力学的モデルで説明することは不可能です。

量子力学は電子に情報的性質があることについて気付いていませんが、私には本質的な意味がある筈だと確信しています。

光子の波長も光子の物質的属性ではなく情報的属性なのです。

量子力学に情報的属性に関する内容がある理由は、粒子と波動という一見矛盾する性質を持つ電子や光子などの量子を統一して扱うためなのです。

近年、量子力学は量子情報科学という分野で大いに注目されていますが、このときの情報概念はシャノン流のものであり、前述の情報概念とは関係ありません。