極超音速はブラフ、米露対立の真意は?
昨日、次のニュースが報道されました。きな臭くも何か変です。
ロシアが極超音速ミサイル配備へ 迎撃困難との見方も
ロシアのプーチン大統領は26日、米国の「核戦略見直し」に対抗して開発を急いでいた新型の極超音速ミサイル「アバンガルド」を2019年にも実戦配備すると発表した。核弾頭の搭載ができ、米国のミサイル防衛システムによる迎撃が難しいとされる。配備されれば米ロの核開発競争の激化につながる恐れがある。
ロシア軍が同日、中西部オレンブルク州から約6千キロ離れたカムチャツカ半島の標的に向けた発射試験に成功した。モスクワの国防省施設で試射を見届けたプーチン氏は、「想定される敵のミサイル防衛システムでは攻略は不可能。大きな勝利だ」と話し、米国のミサイル防衛システムを無力化する能力を強調。「来年にもロシア軍に実戦配備される」と明言し、「ロシアにとって最高の新年のプレゼントだ」と自賛した。
ロシア政府によると、アバンガルドはマッハ20の極超音速で敵国のミサイル防衛システムをかいくぐりながら飛ぶため、迎撃が非常に困難だとされる。米国が2月に発表した、新たな小型核兵器や核巡航ミサイルの開発などを含む「核戦略見直し」に対抗し、プーチン氏が3月に開発を明らかにしていた。(モスクワ=石橋亮介)
引用元:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASLDV73Z5LDVUHBI02C.html
年末で忙しいので、この記事のおかしい点を簡単に列記します。
1)早過ぎる実戦配備
年末にやっとミサイル実験が初成功して、翌年に配備だなんて、開発プロセスとして早過ぎます。普通に考えたら、量産型製造設備、管制システムを含む発射設備をこれから準備しなければならないはずですから。
2)マッハ20のミサイルは機能しない
音速の20倍というのは大気圏を離脱するロケットのスピードです。こんなスピードで飛ぶのだから、空気抵抗の少ない成層圏かそれ以上の高度を移動すると思うのですが、そんな高速度で弾頭を切り離せば、弾頭は対流圏内に入ると猛烈な空気抵抗を受け、あっという間に2000℃位まで到達するはずです。よしんば、弾頭の形状が維持できても、起爆装置などが機能するとはとても思えません。実はこの話、高高度から自由落下するこれまでの大陸間弾道ミサイル(高度数100km以上)にも言える話だったりするのです。つまり、今回の話に限らず
大陸間弾道弾(ICBM)はそもそも嘘だった
のではないかということです。北朝鮮のミサイルが高度4000kmに到達なんて言われましたが、それはもはや笑い話に等しいということになります。
※以下3)は2019/1/2の追記です
3)そもそも極超音速では飛べない
マッハ20以上のスピードを出すには、空気抵抗の少ない成層圏以上の高度と書きましたが、これだけスピードを出すなら、空気抵抗熱による超高温化を避けるため、殆んど空気のない成層圏の高層、高度50km辺りを飛ぶことになるかと思います。でもちょっと待ってください。弾道という「投げ上げ」運動ならば、高く上げて後は自然に落ちるだけですから、飛ぶことを意識する必要はありません。しかし、「飛ぶ」という運動は、空気層に対する浮力をもって機体を浮かすことが前提のはずです。ですから、空気が無い高層域では浮力を得られず、水平飛行は無理という結論になります。よって、マッハ20で敵の防衛網をスイスイと潜り抜ける飛行イメージは完全に誤りと言えます。
■米ソ冷戦は茶番だったのか
そうなると、冷戦時の米ソの核開発競争とは何だったのかという話に行き着きます。米国の優秀な科学者たちがそんな物理学の基礎を理解できないはずもなく、今回の極超音速ミサイルの件にしても、「ロシアの新たな脅威!」と茶番のお相手をしてるようにしか見えません。米国もロシアも軍事産業で国民を養わなければなりませんから、国の事情はお互い様ではあります。「お互いたいへんだなぁ」ということでしょうか。
なるほど、米ソが対立して数10年間、一度も核ミサイルが飛び交ったことがない理由がこれで分かりますよね。「核抑止力」なる便利な方便もありましたが、いささか使い古され気味。いい加減ネタが尽きての極超音速ミサイルなら、それも有りかなと納得もできます。でも、いっそのことこんな茶番は止めてしまえばいいのにね。
■何故このタイミングでの実験なのか
茶番は茶番だとして、このニュース、どうしてこのタイミングなのでしょうか?確かに米国で小型核開発云々(*)の話が最近出ていましたが、それに対抗する意味での応答だとしても、やはり今回の実験は唐突にしか見えません。ここでヒントになるのが、前回の記事で紹介した「エコノミスト2019」の表紙ではないかと、私は考えます。
図1:日本とプーチン
そして、ここ直近の日本を取り巻く動きは
12/18 護衛艦「いずも」の空母化を大綱に盛り込む
12/20 韓国護衛艦からP1哨戒機がレーダー照射される
12/26 日本政府IWCから脱退を表明
となります。この3つに共通して絡むのは「海」です。日本が海を基点に何かをやらかそうとしている。韓国海軍の動きはそれに対する牽制ともとれるし、大国でありながら、不凍港が少ないロシアにとっては、日本の太平洋上での動きは脅威と映ります。これらから考えられる今回のアバンガルド実験成功の発表理由は、米露緊張に格好付けた
日本への牽制
ではないかと、私は考えます。
エコノミストの表紙に描かれた駿河湾、果たしてロシアは日本の駿河湾を注視しているのでしょうか?そうだとすれば、その理由はなんでしょうか?本ブログも再び駿河湾に注目です。
*小型核開発:超大国はこの世に核兵器など無いことをよく知っています。このご時勢で核武装論とか言ってる人は、もう一度広島・長崎が本当に核爆発だったのかを問い直してください。
キリストの御国にて記す
管理人 日月土
ロシアが極超音速ミサイル配備へ 迎撃困難との見方も
ロシアのプーチン大統領は26日、米国の「核戦略見直し」に対抗して開発を急いでいた新型の極超音速ミサイル「アバンガルド」を2019年にも実戦配備すると発表した。核弾頭の搭載ができ、米国のミサイル防衛システムによる迎撃が難しいとされる。配備されれば米ロの核開発競争の激化につながる恐れがある。
ロシア軍が同日、中西部オレンブルク州から約6千キロ離れたカムチャツカ半島の標的に向けた発射試験に成功した。モスクワの国防省施設で試射を見届けたプーチン氏は、「想定される敵のミサイル防衛システムでは攻略は不可能。大きな勝利だ」と話し、米国のミサイル防衛システムを無力化する能力を強調。「来年にもロシア軍に実戦配備される」と明言し、「ロシアにとって最高の新年のプレゼントだ」と自賛した。
ロシア政府によると、アバンガルドはマッハ20の極超音速で敵国のミサイル防衛システムをかいくぐりながら飛ぶため、迎撃が非常に困難だとされる。米国が2月に発表した、新たな小型核兵器や核巡航ミサイルの開発などを含む「核戦略見直し」に対抗し、プーチン氏が3月に開発を明らかにしていた。(モスクワ=石橋亮介)
引用元:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASLDV73Z5LDVUHBI02C.html
年末で忙しいので、この記事のおかしい点を簡単に列記します。
1)早過ぎる実戦配備
年末にやっとミサイル実験が初成功して、翌年に配備だなんて、開発プロセスとして早過ぎます。普通に考えたら、量産型製造設備、管制システムを含む発射設備をこれから準備しなければならないはずですから。
2)マッハ20のミサイルは機能しない
音速の20倍というのは大気圏を離脱するロケットのスピードです。こんなスピードで飛ぶのだから、空気抵抗の少ない成層圏かそれ以上の高度を移動すると思うのですが、そんな高速度で弾頭を切り離せば、弾頭は対流圏内に入ると猛烈な空気抵抗を受け、あっという間に2000℃位まで到達するはずです。よしんば、弾頭の形状が維持できても、起爆装置などが機能するとはとても思えません。実はこの話、高高度から自由落下するこれまでの大陸間弾道ミサイル(高度数100km以上)にも言える話だったりするのです。つまり、今回の話に限らず
大陸間弾道弾(ICBM)はそもそも嘘だった
のではないかということです。北朝鮮のミサイルが高度4000kmに到達なんて言われましたが、それはもはや笑い話に等しいということになります。
※以下3)は2019/1/2の追記です
3)そもそも極超音速では飛べない
マッハ20以上のスピードを出すには、空気抵抗の少ない成層圏以上の高度と書きましたが、これだけスピードを出すなら、空気抵抗熱による超高温化を避けるため、殆んど空気のない成層圏の高層、高度50km辺りを飛ぶことになるかと思います。でもちょっと待ってください。弾道という「投げ上げ」運動ならば、高く上げて後は自然に落ちるだけですから、飛ぶことを意識する必要はありません。しかし、「飛ぶ」という運動は、空気層に対する浮力をもって機体を浮かすことが前提のはずです。ですから、空気が無い高層域では浮力を得られず、水平飛行は無理という結論になります。よって、マッハ20で敵の防衛網をスイスイと潜り抜ける飛行イメージは完全に誤りと言えます。
■米ソ冷戦は茶番だったのか
そうなると、冷戦時の米ソの核開発競争とは何だったのかという話に行き着きます。米国の優秀な科学者たちがそんな物理学の基礎を理解できないはずもなく、今回の極超音速ミサイルの件にしても、「ロシアの新たな脅威!」と茶番のお相手をしてるようにしか見えません。米国もロシアも軍事産業で国民を養わなければなりませんから、国の事情はお互い様ではあります。「お互いたいへんだなぁ」ということでしょうか。
なるほど、米ソが対立して数10年間、一度も核ミサイルが飛び交ったことがない理由がこれで分かりますよね。「核抑止力」なる便利な方便もありましたが、いささか使い古され気味。いい加減ネタが尽きての極超音速ミサイルなら、それも有りかなと納得もできます。でも、いっそのことこんな茶番は止めてしまえばいいのにね。
■何故このタイミングでの実験なのか
茶番は茶番だとして、このニュース、どうしてこのタイミングなのでしょうか?確かに米国で小型核開発云々(*)の話が最近出ていましたが、それに対抗する意味での応答だとしても、やはり今回の実験は唐突にしか見えません。ここでヒントになるのが、前回の記事で紹介した「エコノミスト2019」の表紙ではないかと、私は考えます。
図1:日本とプーチン
そして、ここ直近の日本を取り巻く動きは
12/18 護衛艦「いずも」の空母化を大綱に盛り込む
12/20 韓国護衛艦からP1哨戒機がレーダー照射される
12/26 日本政府IWCから脱退を表明
となります。この3つに共通して絡むのは「海」です。日本が海を基点に何かをやらかそうとしている。韓国海軍の動きはそれに対する牽制ともとれるし、大国でありながら、不凍港が少ないロシアにとっては、日本の太平洋上での動きは脅威と映ります。これらから考えられる今回のアバンガルド実験成功の発表理由は、米露緊張に格好付けた
日本への牽制
ではないかと、私は考えます。
エコノミストの表紙に描かれた駿河湾、果たしてロシアは日本の駿河湾を注視しているのでしょうか?そうだとすれば、その理由はなんでしょうか?本ブログも再び駿河湾に注目です。
*小型核開発:超大国はこの世に核兵器など無いことをよく知っています。このご時勢で核武装論とか言ってる人は、もう一度広島・長崎が本当に核爆発だったのかを問い直してください。
キリストの御国にて記す
管理人 日月土
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