コラム(423):
日米首脳会談とクアッド、中国に与えた衝撃
一連の外交日程が終わりました。この期間中の24日には、中国軍とロシア軍の爆撃機計4機が日本列島を周回する形で編隊飛行し、クアッド(日米豪印戦略対話)首脳が帰国した翌日の25日には、北朝鮮が弾道ミサイルを3回連続発射しました。いずれも事前に準備していたもので、かの国々が一連の会合を強く意識していたことがわかります。
日米豪印の足並みが揃った
23日に行われた日米首脳会談では、岸田首相から「防衛費増額」の意思表明がなされ、バイデン大統領からは「日本の防衛への全面的な関与」の約束と、「台湾防衛のために軍事的に関与する」ことが明言されました。
24日のクアッドでは、旧ソ連時代からロシアの友好関係にあるインドに対しては対中包囲網で足並みをそろえさせることに成功し、政権交代したばかりのオーストラリアに対しては対中批判に転じた労働党のアルバニージー首相を完全に取り込んだと見られます。
もともとクアッドは安倍元総理の発案で、仲の良いインドのモディ首相を取り込んで対中包囲網を形成したいきさつがあります。伝統的にソ連・ロシアとつながりのあるインドであるにもかかわらず、モディ首相が日本との連携を重んじたのは、ひとえに安倍元総理の功績であると言えます。
さらに、クアッドの構想を受け継いだ菅前首相がバイデン大統領主導の形にすることで完成形にさせて地域の安定を図ったとことは日本国民にとっても、国際社会にとっても大変評価すべき外交の成果と言えます。
いわば、バイデン大統領に花をもたせる格好でクアッドが成功したわけですが、中国に配慮する日本のメディアは過小評価せざるを得ず、これに応じた世論も関心がさほど高くないように見受けられます。しかし、中国政府のヒステリックなまでの反応を見ると、日本で行われた一連の会合が、覇権主義中国の終焉をもたらす極めて歴史的に重要な会合であったということがわかります。
中国の不安、怯え
いま、中国は対中包囲網の強化に怯えています。それは、一連の外交日程が決まった段階から、政府の報道官がいつも以上に声を荒げて居丈高に批判を展開したことからもわかります。
事実、趙立堅報道官は「クアッドは時代遅れの冷戦思考に満ちたもので軍事的な対抗の色合いが強く、時代の流れに背いていて人心は得られないに決まっている」と述べていますが、非難の声を大きくした他国への攻撃は、「弱い犬ほどよく吠える」のことわざ通り、自分の内面を必死で守り、取り繕うとする心理のあらわれです。
しかも、この発言の仕方ではかえって日米豪印の団結を促進させる効果を及ぼします。ロシアにしろ、中国にしろ、また、北朝鮮にしろ、公式発表の仕方にもっと知恵を使わなければ、敵を増やすだけと思うのですが、人間の心の機微は理解できないようです。
また、王毅外相は「最終的に失敗する運命にある」との発言は、自分の願望を表明しただけですが、言葉のはしはしに、クアッドが中国解体につながるとの不安から発せられた言葉であることがわかります。「中国政府の失敗」を「クアッドの失敗」と言葉を置き換えて自らの心を慰めようとしているのです。素人から内面の動揺を見抜かれないような公式見解の発表を中国政府は心掛けるべきではないかと思えるほどですが、その分、中国政府には余裕がなくなっているのだろうと思います。
一方、中国の機関紙と化した朝日新聞も同様に、次々と沸き上がってくる不安を必死で抑え込んでいるように見えます。署名記事では「共同声明には『中国』という文字も盛り込まれていなかった」として、クアッドが中国包囲網ではないかのような印象付けをしています。動揺を落ち着かせようと自己暗示をかけているような雰囲気が伝わってきます。
クアッドは中国を自己崩壊へと導く
クアッドはどうやら習近平政権のこれまで認識したくなかった国家崩壊への不安を顕在化させたようです。強気一辺倒で自身に満ちた中国政府が動揺しはじめました。イライラし始めて、上から目線で他国を非難する姿勢は、不安が一気に沸き上がってきた証拠にほかなりません。
これを沈めるには、中国が、南シナ海に軍事基地をつくり周辺諸国を圧迫さてきた行為、さらに、台湾や尖閣・沖縄に攻め込もうという意思を捨てれば簡単に解決します。
そもそも、クアッドを成立させた原因は中国の覇権主義にあるのですから、原因をつくった思いと行為を捨てれば、中国にとっての不安の元凶であるクアッドも解消されます。そんな簡単なことがわからない中国は、おのれの沸き上がる不安にさいなまれ、不安を打ち消そうともがき苦しんで自滅の道をたどりそうです。
人間、不安を強く抱いている人に破滅願望が強いように、人びとの集合体である国家も生命体であり、為政者の強い不安の心理が国家を破滅にと向かわしめます。そのことを理解した上で、私たちは中国の毒を食らわないようにしなければならないと思います。
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