自民党の大分裂はあるのか?
石にかじりついても政権を手放したくない石破首相
まずは、首相の座に居座りたい石破氏を批判する記事を引用してみます。
——石破首相は28日午後に記者会見し、「首相を辞めない」ことを明らかにした。理由は「国政は一時たりとも停滞が許されない」からだそうだ。しかし持っていた256議席の四分の一に当たる65議席を失い、自民党単独過半数も、与党過半数も失った首相は首班指名も受けられない、予算も通せない。それなのに堂々と続投するというのは実に不思議な話だ。自民党関係者によると、実は昨日から「辞めない」と言っていたという。なんなのか。――
次に、共同通信の世論調査記事を引用します。
——衆院選の結果を受けて共同通信社は28、29の両日、全国緊急電話世論調査を実施した。石破内閣の支持率は32・1%で、内閣発足に伴う10月1、2両日調査の50・7%から18・6ポイント下落した。不支持率は52・2%。与党過半数割れとなった自民、公明両党の連立政権継続を望むとしたのは38・4%で、望まないが53・0%だった。(中略)
望ましい政権の枠組みは「政界再編による新たな枠組み」が31・5%と最多で、自公の少数与党政権は18・1%。一方、石破茂首相が過半数割れの責任を取り辞任すべきだとの回答は28・6%にとどまり、辞任は必要ないが65・7%だった。――
この記事では、「自公政権の継続望まず53%」、「石破首相の辞任不要が65%」とお調査結果となっていて、訳が分からないと言えます。
X(旧ツイッター)では、「これらの数字を読むと石破内閣を支持しない人が石破氏の方が都合が良いと考えているだけで辞任不要のアンケートにはほぼ意味がない」と言っている人がいますが、これが正解かも。まぁ、共同通信の捏造世論調査だと思います。
大平・福田の40日抗争の時とそっくり
今回の「首相やめろ」、「やめない」のスッタモンダと似たような事件が以前にもありました。その事件についてわかりやすく書かれている記事がありましたので引用します。
——裏金疑惑をはじめとした「政治とカネ」をめぐる問題を抱えた自民党に、有権者は鉄槌を下した。自公過半数割れは、2009年以来、15年ぶりのことである。だが、政界全体を巻き込む“本当の大嵐”がやってくるのはこれからだ。自民党総裁選で注目を集めた勢いで解散総選挙を乗り切ろうとした石破茂・首相の目論見は大きく外れ、恨みを募らせた反主流派との政争が始まる。
発火点と見られるのは高市早苗・前経済安保相。高市氏を支持する反主流派は、ここぞとばかりに“石破降ろし”に動き出す可能性が高い。この石破氏と高市氏の対立は、石破首相の退陣、さらには自民党の大分裂へと発展する可能性も秘めている。(中略)
「大平・福田の40日抗争の時とそっくり」
そうした展開がかつてあった。(中略)
「40日抗争」は自民党総裁選で現職首相だった福田赳夫氏が大平正芳氏に“まさかの敗北”を喫して退陣に追い込まれた翌年(1979年)の総選挙直後に起きた。大平首相が総選挙で議席を減らすと、福田派、中曽根派、三木派の反主流派が退陣を要求して大紛糾。
大平氏が拒否すると、首班指名選挙に大平氏と福田氏の2人が立つ異例の事態となり、自民党は真っ二つに割れた。【注:この結果、首班指名では、誰も過半数の票を得ることができず、自民党の上位2名による決選投票にまでもつれ込んだ。】
僅差で大平氏が首班指名を受けた後も、反主流派はなおも抵抗して総選挙から内閣発足まで40日間かかった。戦後政治史に残る権力闘争だ。40日抗争では最終的に党分裂には至らなかった。――
自民党は分裂するのか
今回は、自民党の大分裂の可能性も指摘する向きもあります。ある政治ジャーナリストによれば・・・。
――高市氏が石破降ろしをしたとしても、必ずしも次の総理になれるかどうかはわからない。高市氏が総理になれない状況なら、グループを引き連れて『高市新党』として党を割る可能性もないとは言えない——
しかし、筆者に言わせるとこれはあり得ない話です。なぜなら、自民党でなければ国政も国会も動かせない仕組みが自民党内に完成しているからです。
例えば、党内に政務調査会を設置していますが、そこでは、自民党としてどのような政策・法案を打ち出すかを取りまとめ、その方針を内閣に伝え、法案と予算案に反映させる重要な仕事をしています。当然、会合には各省庁から優秀な官僚がやってきて法案整備の手伝いをするわけです。
自民党以外にも政務調査会に似た組織をおいていますが、ほとんどが組織仕事ではありませんし、個人の力量にたよっているので知恵の蓄積がありません。第一、野党の議員は国会開催中も適当に時間をつぶしているだけで勉強はしていません。政府のあら捜しだけをしていれば議員としての仕事は全うしていると思い込んでいます。
その点、自民党の議員は、国会開催中は、毎朝、朝食を兼ねて政務調査会の会合に出席して、耳学問で知識を詰め込みますので、どんな愚かな議員でも専門分野であればいっぱしのことは言えるようになるのです。
もし、仮に自民党を出ていこうものなら、国会議員としての最低の情報はどこからももらえません。まして、官僚からの特別の「ご進講」などももらえるはずもありません。これは10人以下の政党も同じで、例えば、れいわ新選組などが、テレビなどの討論で。いつも頓珍漢なことをいって失笑されるのは、基本的な知識を教えられる場がないからです。
この政策の一点を考えてみるだけでも、勉強システムの出来上がった自民党から飛び出すと、情報砂漠の中で悲哀をかこつことになります。しかも、党組織の様々な分野で国会議員としての資質を育てられるわけですから、誰も飛び出すことはしませんし、飛び出せば、島流しに会うのと同じなのです。
だから、常に主流派を後ろから鉄砲を撃っていた石破首相も、安倍元総理を「国賊」と呼ばわった村上誠一郎現総務大臣も自民党を離党しなかったのです。
むしろ、自民党は分裂するよりも、弱体化してきた野党勢力を呑み込むようになってきました。古くは、新自由クラブからはじまって、細川護熙の自由党の一部、保守党(のちの保守新党)、新党さきがけなどがあり、2010年代には、次世代の党も吸収したということができます。
したがって、自民党は、党内抗争はあるといえ、分裂することはありません。また、「自民党をぶっ潰す」といってもつぶれることはありません。自民党をこの世から葬り去りたいなら、大化の改新、あるいは、明治維新のような大変革運動か、左翼による日本革命しかありません。
ただし、左翼による日本革命は無理筋ですが、大化の改新、明治維新などの大変革運動は、眼下の世界情勢と強い政治不信が渦巻いている現下の日本を考えると、その可能性は十分にあると言えます。
それがいつになるのかはわかりませんが、かすかな胎動を筆者は感じています。願わくば、筆者の目の黒いうちに大変革が起きてほしいものです。