日本海 A寝台 大阪行き 上段

2009-06-27 22:42:06 | 旅行
21時40分、定刻通り大阪行き「日本海」が東能代駅の1番ホームに入ってきた。改札が始まったのはおよそ7分前。駅には日本海に乗るであろうと思われる客が数名いるだけで、待合室のホームにあったテレビを見ていた。駅の外は暗くて、さびしかった。



A寝台は一番青森ほう、つまり後ろに連結されている。そこまでホームの明かりは届かないから、そこで待っているのもまた、さびしい。


思った以上にお客はいるようだ。A寝台は下段がほぼ完売。車端の4区画が残っているだけで、それらはたぶん乗り心地が悪いから残っていたのだろう。僕の寝床は橋のほうの上段だった。


はしごを使って寝台に上がる。思っていた以上に狭い。しかも窓が小さいから、少し無理な体勢を続けないと外の景色は見えない。といっても真っ暗だからそれほど不便でもないのだが。とはいっても、暗闇の中で家の明かりが流れていくのを見るのは、それはそれで実に楽しい。むしろそういうのが好きだ。


さて、寝台についている浴衣に着替える。車掌が検札に来る。少し待ってくれ、と頼む。チェックもすんだら今度は減光。秋田につくときには放送はかからないらしい。すでにカーテンが閉まっている寝台も多くある。


さすがにこれでは車内観察は無理なので、明日の朝にでもすることにした。それより狭い寝台の中でつまみを広げる。少し狭い、いや狭すぎる。寝る場所で精いっぱいで荷物をどこに置くかも苦労するのに、それでいて昨日止まったホテルより高いとは何事だ、とか頭の片隅で思いながら、ペットボトルの栓を開いた。




乾杯。



おそらくこの旅は正解だったのだろう。少なくとも、行かずに後悔するよりは何十倍もいいはずだ。それならばいまごろ自分は死んでいただろう。太陽の光を浴び、草の香りをかぎ、生命の息吹を肌で感じたこの2日間は、偶然の産物と称するにはあまりにもできすぎていると思った。まあ天気が良くてよかった、寝床が見つかってよかった、まだこんないいところがあるとわかってよかった。


そしてまどろむ。






そんなわけで人間は日常に戻っていく。車内で迎え朝日が雲に隠れていたのが一つ、心残りか。



お金は取り戻せても時間は取り戻せない、そう強く思えたひと時だった。






<最後は小説風に>

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