気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

数合わせにこだわると、ろくなことはない

2014-10-12 09:38:23 | 日記

 

 

 レーガン、ゴルバチョフの米ソ両首脳とともに冷戦終結の立役者となったサッチャー英首相は在任中、行く先々で「女性首相であることはどんな感じか」と聞かれた。そんなときは、いつもこう答えたという。「分かりません。男の首相をやったことがないから」。

 ▼サッチャーさんが、英国史上初めて女性首相に就任し、「和製サッチャー」の登場はいつか、と話題になってからもう35年もたった。「自称・鉄の女」は何人もおられたが、いまだ誰一人として宰相の座を射止めていないのは、ご存じの通りである。

 ▼「女性が輝く社会」をうたい文句にしている安倍晋三首相は、さきの内閣改造で5人の女性閣僚を登用した。もろ手を挙げて賛成したいところだが、早くも政権のアキレス腱(けん)になっている。

 ▼国会論戦で、野党は5人の女性閣僚に攻撃の的を絞っている。大半はうまく防御しているが、朝日新聞出身である松島みどり法相の旗色が悪い。どう見てもうちわにしかみえないものを「討議資料」と言い張ったり、東京都内に住みながら特例で認められた赤坂の議員宿舎に帰らなかったり…。

 ▼女だから、という理由のみで入閣させたわけではあるまいが、数合わせにこだわると、ろくなことはない。政府は、役員や管理職への女性登用の数値目標設定を民間企業に義務づける法案を準備中だが、本末転倒もはなはだしい。

 ▼政治がやるべき仕事は、男女ともに働きやすい環境づくりである。サッチャーさんはこうも語っている。「男女の別に関係なく、人間は能力で決まる」。女性であれ、男性であれ、懸命に働いた者が報われるのが、自由社会である。数値目標という手法からは、彼女が最も忌み嫌った社会主義の腐臭が濃く漂ってくる。

10月11日 【産経抄】