気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

見習うべきはスペイン

2014-10-17 10:12:17 | 日記

 「私の顔を見たくなければ、早く成立させてほしい」。3年前、当時の菅直人首相が、退陣を受け入れる条件に挙げるほど執心したのが、再生エネルギー特別措置法案だった。

 ▼電力会社に、固定価格で太陽光や地熱、風力などの再生可能エネルギーの買い取りを義務づけたものだ。小欄は、脱原発のイメージ作りのための思いつきのアイデアと批判した。案の定である。

 ▼一昨年7月に制度がスタートすると、買い取り価格が高めに設定された太陽光発電に、参入が集中した。天候に左右される太陽光は安定性に欠ける。大量に受け入れると周波数が乱れて、停電の恐れがある。買い取り費用を上乗せする、電気料金の負担の大きさも深刻な問題だ。経済産業省が制度の見直しに乗り出すのは、当然である。元首相の負の遺産に、またも振り回された。

 ▼2022年までにすべての原発を止めるドイツでは、すでに14年前から同じ制度を導入している。ドイツ在住30年の作家、川口マーン恵美さんによると、この間に標準家庭の電気料金は、約2倍に跳ね上がった。さらに電力不足を補うために、自国産出の石炭を燃料とする火力発電を増強して、CO2排出量が急増している。「日本はドイツの脱原発をまねるべきではない」と小紙のインタビューで述べていた。

 ▼むしろ手本にふさわしいのは、スペインかもしれない。この国も太陽光発電の高額買い取りがバブルを招き、停止に追い込まれた苦い経験をもつ。もっとも、さすが風車に立ち向かったドンキホーテの国である。昨年、風力発電が電力供給源のトップに立った。

 ▼特筆すべきは、原子力発電もほぼ同じ割合を占めていることだ。エネルギー政策は、なによりバランスが大切である。

 

2014.10.17 05:05 【産経抄】