鬼を退治した「桃太郎」は、鬼ケ島から大量の宝物を持ち帰る。絵本では、隠れ蓑(みの)や打ち出の小槌(こづち)とともに、真っ赤な色のサンゴの木が描かれている。いわゆる「宝石サンゴ」は、発祥の地である地中海から、シルクロードを運ばれて日本にやってきた。奈良・正倉院に残されているサンゴのビーズもそのひとつである。
▼日本で本格的なサンゴ漁が始まったのは、明治に入ってからだ。次々に新漁場が見つかり、ヨーロッパに輸出するまでになった。やがて乱獲が深刻な問題になる。なにしろ一度取り尽くすと、回復するまで100年以上かかる、希少な資源である。
▼外国船による密漁にも悩まされた。現在は、中国漁船がやりたい放題の違法操業を続けている。中国では、宝飾品として珍重され、特に品質のいい日本の「赤サンゴ」は、富裕層の間で引っ張りだこだという。
▼平成24年には、平均取引額が1キロ約150万円にまで高騰し、さらにその数倍の値段がつくこともある。中国漁船は、沖縄近海で警備が厳しくなると、東京・小笠原諸島周辺にまで姿を現し、ついに100隻を超える規模になった。小笠原の漁師の怒りと、住民の不安は募るばかりだ。
▼「天高く馬肥ゆ」といえば、秋の好時節を指す言葉だが、古代中国では不吉な意味合いをもっていた。秋になると、春夏の間に牧草をたっぷり食べた馬に乗って、北の遊牧民が収穫物を略奪しに来る、と警告しているのだ。澄み切った秋空のもと、略奪者たちは船に乗って、西からやって来た。
▼宝石サンゴは中国では、パンダと同じ国家重点保護野生動物一級に指定されている。密漁は、日本人がパンダ狩りをするのと同じ、と警告したとしても、話が通じる相手ではない。
<補遺>
小笠原諸島嫁島の沖合約5キロ付近で目撃された不審船。赤い旗を掲げ、背後にも複数の船が見える=9月22日(父島の住民提供)
小笠原に押し寄せる中国船、「宝石サンゴ」密漁か 「守るすべない」「島民は不安」
2014.10.12 産経
世界自然遺産に登録されている小笠原諸島(東京都)沖に中国船とみられる不審船が押し寄せている。目的は高級サンゴの密漁とみられ、その数は日を追うごとに増加。夜間には水平線に不審船の明かりが並び、島の近くまで接近する船もある。「自分たちの領土で好き勝手にされているのに、見ていることしかできない」。傍若無人な振る舞いに地元漁業にも影響が出ており、国境の島では不安が広がっている。(松岡朋枝)
海上保安庁も小笠原周辺で中国船とみられる不審船を確認。その数は9月15日に17隻、23日に25隻、今月1日には40隻と増加を続けている。
(記事抜粋)
検査忌避の中国人船長を逮捕 小笠原沖、今月4人目
2014.10.27 産経
横浜海上保安部は27日、小笠原諸島・北之島(東京)沖の排他的経済水域(EEZ)で、停船命令を無視し逃走したとして、漁業法違反(立ち入り検査忌避)の疑いで、漁船「浙嶺漁運622」の中国人船長、曽勇容疑者(31)を現行犯逮捕した。