ブラジルの国家会計の違法な粉飾をめぐってルセフ大統領が弾劾裁判を受けることが確実な情勢となっている。弾劾手続きの引き金となったのは、ルセフ氏が師と仰ぐルラ前大統領も訴追された国営石油会社ペトロブラスをめぐる史上最大の大規模汚職「ラバジャト事件」。ブラジル国民は捜査の進展を強く支援しており、担当した日系人捜査官のニュートン・イシイさんが人気を呼んで、一躍時の人となった。
イシイさんは容疑者が逮捕されるたびに、連行する容疑者の隣に付き添い、その姿がブラジルの全国ニュースで中継された。次第に、白髪で黒いサングラスをした風貌の「あの日本人捜査員は誰だ?」と脚光を浴びることになった。
「ありがとう。イシイさん」
その後、テレビや雑誌で特集が組まれて、イシイさんの名前はさらに有名となり、ネットでは「ありがとう。イシイさん」と題した動画が作られたほど。今年2月、リオデジャネイロのカーニバルでも「今年の顔」として、イシイさんのお面が登場した。
ある外交官は「ブラジル国内でイシイさんは、勤勉で実直な日系人の象徴としても受け止められている」と話している。(リオデジャネイロ 佐々木正明)
2016.5.8 産経 【ブラジル情勢】