4月末、モスクワから鉄道でウクライナの首都キエフに出張した。対露関係悪化を受け飛行機の直行便がなくなったためだが、モスクワへ帰る際にキエフの駅で悩ましい光景を見た。
私が切符を購入したのは午前2時過ぎにキエフを出発する列車だった。広い待合スペースに行くとベンチは人でいっぱいだった。
しかし様子がおかしい。異臭も漂っている。薄明かりの下、彼らをよく見るとホームレスと思われる人々だった。100人はいただろう。眠る場所をめぐり怒鳴り合う姿もあった。私は小さな喫茶カウンターの席に座り、椅子の足に巻き付けるように荷物を置いた。
ジョージア(グルジア)からモルドバに向かう途中という少し身なりのいい男性が、たまりかねたように話しかけてきた。「3年前に来たときは本当にきれいな場所だった。それが今や、このありさまだ」。ホームレスの一人が彼の荷物を盗もうとしたため、会話はそこで途切れた。
駅にはまた、数多くの若い兵士たちがいた。タクシーの運転手に聞くと、親ロシア派武装勢力との紛争が続く東部に向かう兵士という。出発前に少しでも休憩を取りたかったのか、ホームレスらの間でうたた寝をする姿もあった。ウクライナの置かれた厳しい現状が垣間見えた気がした。(黒川信雄)
2016.5.11 産経ニュース【赤の広場で】
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濡れマスクをして寝るのは喉に良い。