気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

食品ロスに特効薬

2016-06-11 17:12:31 | 日記

 長野県松本市の職員の懇親会には席を立ってお酌をして回ることを禁ずる時間帯がある。乾杯に続く冒頭の30分間とお開き前の10分間だ。各人が自席でしっかり料理を食べる時間とされた。30・10(さんまる・いちまる)運動と呼ばれる。

▼食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」を減らそうと、菅谷(すげのや)昭市長が6年前に提案した。運動は市役所から企業へ広まった。

▼家庭版30・10も考案された。毎月30日は食材を使い切る「冷蔵庫クリーンアップ」の日。10日は「もったいないクッキング」の日。大根の皮やブロッコリーの茎、古いパンを使ったレシピを紹介する。

▼次代を担う子供たちにも働きかける。職員らが公立の保育園と幼稚園全46園を訪ね、紙芝居やクイズで食べ物の大切さを伝えた。園児らが家で父母に言う。「もったいないよ」「なんで捨てちゃうの」。反省した親たちが習慣を改めつつあるそうだ▼松本市へは大阪府豊中市など各地の自治体から視察が続く。佐賀市熊本県あさぎり町からは「30・10運動の名称を使わせて」と電話が来た。

▼いま世界では9人に1人が飢餓に苦しむ一方、年間約13億トンもの食品が食べられずに捨てられる。フランスでは今年、大型スーパーによる食品廃棄が規制された。中国は、完食して皿をピカピカにする「光盤」運動を提唱している。日本は信州発の「30・10」運動を国内外へ広められないだろうか。宴会版、家庭版ともに異文化圏でも通じる普遍性があると思うが、どうだろう。

2016年6月11日 天声人語