落語に出てくる若旦那といえば、大方は道楽者と決まっている。ちやほやされているうちはいいが、親に勘当されるとたちまち窮してしまう。
▼「船徳(ふなとく)」の主人公、徳三郎も、なじみの船宿にころがりこんで、退屈な日々を送っている。ある日、何を思ったか、「船頭になりたい」と言い出した。「冗談いっちゃあいけません」。親方が止めても聞かない。
▼鳩山由紀夫元首相(69)も、国民から愛想を尽かされ、4年前に政界を引退した。もう隠居してもいいお年だというのに、まだ若旦那気分が抜けないようだ。「冗談いっちゃあいけない」ような、あきれた言動が止まらない。
▼中国、韓国を訪れるたびに、両国の肩を持って、日本を貶(おとし)める発言を繰り返してきた。昨年は、日本政府の制止を振り切って、ロシアがウクライナから一方的に併合したクリミア半島を訪問している。「いよいよ宇宙人になった。少なくとも日本人ではなくなった」。つい先日亡くなった、弟の鳩山邦夫氏も嘆いたものだ。旧民主党を離党したとはいえ、鳩山氏は生みの親である。その言動が話題になるたびに、マイナスイメージが強まる民進党の悩みも深い。
▼中国主導の国際金融機関AIIBの総裁は、そんな鳩山氏に「国際諮問委員会」の委員就任を要請していた。氏は快諾の意向を示している。AIIBへの参加を見送っている日本と米国の分断、そして国内の混乱を狙う、中国の意図は明らかである。
▼落語は、にわか船頭の徳三郎が客を乗せて、船を出す場面へと続く。同じ所を3度も回ったり、石垣に衝突したりした揚げ句、浅瀬に乗り上げる。米紙から「ルーピー」(愚か者)とまでからかわれた、かつての鳩山政権の迷走ぶりをほうふつとさせる。
2016.6.28 【産経抄】