あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

終末と再生の狂詩曲 『ジャカランダ』

2010-02-13 01:04:23 | アニメ・コミック・ゲーム

ジャカランダ ジャカランダ
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2005-06

これは友達に借りた本です。

彼女はもともとこの本の作者“しりあがり寿”氏の作品が好きで、いままで何冊か貸してくれたのですが、その大半はギャグマンガでした。

しかも何も言わず、何の先入観も与えないで貸してくれたので、ちょっと内容に驚きました。

私の個人的感想ですが、これはとても恐ろしい本だったのです。

ストーリーは、作者自身があとがきに書いているように、きわめて単純です。

ある日突然現れた巨大な木“ジャカランダ”が、大都市東京を一夜にして壊滅させる話。

ただそれだけの内容なのですが、それだけに、膨大な死と、阿鼻叫喚の描写のすごいこと。ちょっとノンストップムービーみたいで、一気呵成にラストまで読ませます。

冒頭の凄惨なエピソードや、巨大な木が芽を出した時点での人間の呑気で滑稽な対応などを見ると、この物語にある種のメッセージを読みとることも可能でしょう。

でもやはり、作者があとがきで描いている通り、“ボクのアタマに一夜にして東京を壊滅させる巨大な木のイメージがうかび、それが300頁のマンガを描かせるほどに強かった”という、シンプルなスタンスで読んだ方がいい気がします。

ラストはカタルシス、というか、ある種の爽快感があり、それもちょっと怖い気もするのですが……。

しかし、ロバート・フロストの『火と氷』という詩を読んだときは、世界の終わりは火と氷だけかと思っていたのに、まさか、木、という選択肢があったとは……。

そうして、おそらく私はこの状況だと、生き延びて最後の光景を見ることはできないな、と思うと、少し残念だったです。

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ちょっと奇妙なテイスト 『ゴールデンスランバー』

2010-02-13 00:40:48 | 映画

先日、『ゴールデンスランバー』を観に行ってきました。

伊坂幸太郎作品は、『アヒルと鴨のコインロッカー』と『重力ピエロ』は、原作は読んだけれど映像化作品は観ていなくて、この『ゴールデンスランバー』は逆に、原作は未読のまま、映画を観たかたちでした。

ゴールデンスランバー ゴールデンスランバー
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-11-29

で、あらかじめこんな話かなぁ、と想像していたイメージがあったのですが、ちょっと違っていました。

なんとなく、もっと爽やかな話かと思っていたのです。青春小説の名残みたいな味わいの。

ところが、“首相暗殺犯に仕立て上げられ、警察から追われる男”が主人公なわけですから当然といえば当然なのですが、まあ、人の死ぬシーンの多いこと!

しかもどこか黒いユーモアが根底にある気がして、ちょっとイメージと違うな、と思ってしまいまた。

キャラが強いのは、キルオこと通り魔の青年と、永島敏行氏演じるクレイジーな刑事。

とくに小鳩沢刑事というのかな、彼の不気味さは、観終わっていっしょに行った母と、“気持ち悪すぎる!”と言いあったほど。

一方、通り魔キルオくんは、ちょっと不思議なキャラクターでした。“突然無差別に他人に切りつける”という許せぬ犯罪者ですが、何となく憎めないムードもあって、人間離れしている感じだった。

ちょっと、西洋の悪さをする妖精みたい。パックやロビン・グッドフェローみたいな悪戯好きなタイプと、レッドキャップなどの不吉な妖精の間みたいな感じかな……。とにかく、この世のものじゃない雰囲気でした。

主人公も、堺雅人さんが演じてることもあって、絵に描いたような優男って感じなんだけど、驚くほどハートが強くて、ちょっと圧倒されました。私が警察側だったら少し不気味かも……。

観終わって母が“面白かったけど内容ナイね”といっていましたが、あんまり深く考えないでサラっと観た方がいい映画なのかもしれません。

(面白くはあったのですが……。なんか、オレンジジュースと思って飲んだものが、知らない果物のジュースだったみたいなテイストだった)

原作を読んでみると、また味わいが変わるのかもしれません。

余談ですが、そのあと母とお茶して、母が初めてワッフルを食べて喜んだのは良かったです

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