今日の朝日新聞のコラム『天声人語』に、チェスタトンの『ブラウン神父』シリーズの一節が引用されていました。
ここ最近世間を騒がしている、郵便不正事件の押収資料改ざん問題に、大泥棒を説得する神父の説教を絡めたものです。
大泥棒を改心させ、盗んだダイヤを返させる、となれば、『飛ぶ星』だな、とちょっと嬉しくなりました。
クリスマスストーリでもあるこの短編、私大好きなのです。ことに中学生の頃は、お気に入り短編ミステリの筆頭でした。
(そういえば、同じくお気に入りの推理短編のホームズもの『青いルビー』、今は『青いガーネット』あるいは『ブルー・カーバンクルの冒険』かな、これもクリスマスストーリーでした。クリスマスとミステリって、意外に相性いいんですね)
それとともに思い出したのは、懐かしいラジオドラマ。私がそもそもブラウン神父の短編を最初に知ったのは、中3の時に聴いたラジオドラマでした。
夏休み期間に、どこのラジオ局かは忘れてしまいましたが、ミステリの名短編を連日ひとつずつオンエアしていたのです。時間は午前中、10時か11時頃だったかと思います。
けれど聴けたのはほんの2、3編。というのも、当時私は受験生で、しかも学校で夏の集中補習などをやっており、全員参加が鉄則だったのです。
でも当時、サボることを真剣に考えました。それほど、ドラマが面白かったのです。後になって、“やっぱサボるべきだった……他のも聴きたかったよぉ”と後悔したほどです。
ことに、私の心をとらえたのは、SF作家としても有名な、アシモフの短編でした。
『黒後家蜘蛛の会』(ブラック・ウィドワーズ)シリーズの最初の1編、『会心の笑い』というものなのですが、この幕切れに私はやられてしまった。
早速、文庫本も買って読みました。でも、自分で本を読むのも楽しいのですけれど、耳で聴くドラマは、また違った味わいがあるものでした。
声優は、久米正雄さんとか入ってたかなぁ……。もう忘れてしまいました。ラジオドラマとかって今は流行らないのかもしれませんが、名手の語る物語を、もう一度聴きたい気がします。