あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

一途な愛にたじろぐ本 その2

2009-11-18 23:20:14 | 本(エンタテインメント)

神様のボート 神様のボート
価格:¥ 460(税込)
発売日:2002-06
これは以前、勤め先の先輩に貸していただきました。

一口にいえば、離れ離れになった恋人を、娘を連れて旅しながら探し続ける母親の物語、なのですが、自分の人生も娘の人生も犠牲にして追い求めるのが凄まじくも怖ろしい。

語り口は静かで、さまよう母娘がその時々の短い期間を暮す、それぞれの町の描写も美しく、ロマンティックな恋愛の物語としても読める気はします。

しかし、母の旅の行きつく先の選び方は根拠がなく、まるで何かに追われる逃亡者のよう。

作者自身が、“これは狂気の物語です”とあとがきで書いているのには共感しました。

『神様のボート』というタイトルにも、やはり、さまよい人、というイメージを重ねてしまう。

とても好きな本なのですが、私はやはり、これを怖ろしい物語として読みました。

誰かを深く愛する、というのは狂気と紙一重のものなのでしょうか。

(そういえば、ニーチェの言葉で、“どんな愛の中にも一片の狂気があり、どんな狂気の中にも一片の真実がある。”というような一節があったような……読んだときはとくに深く考えなかったけれど、これも怖い箴言だ)

物語はクライマックスを経て、意外に穏やかに終わりますが、どう感じたかを他の人とも話し合ってみたくなる小説です。

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一途な愛にたじろぐ本 その1

2009-11-14 00:04:20 | 本(エンタテインメント)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫) 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
価格:¥ 500(税込)
発売日:2009-02-25
この本は最初は、ライトノベルの範疇に入っていた本ではないかと思います。

にもかかわらずこの内容!OKを出した編集者の方には感心します。

私は桜庭一樹氏の作品はまず、『桜庭一樹読書日記』を読んでご本人に興味を持ち、それから『赤朽葉家の伝説』『少女には向かない職業』『私の男』と一般向けのものを読んでいきました。

でも、このジュニア向けの一冊は、桜庭氏のターニングポイントになった作品だと聞いていたので、以前から興味を持っていて、やっと最近読みました。

期待を裏切らない内容で、しかも一気呵成に読めますが、あおり文句に“青春暗黒小説”とあるとおり、かなり凄まじい内容で驚きもしました。

作品の冒頭、少女のバラバラ死体が山中で発見された、という新聞記事抜粋の体裁をとった短い文章が掲げられ、悲劇は最初に予告されます。

母子家庭で暮らす主人公の女子中学生が、転校生で、父子家庭の美少女と次第に心を通わせますが、当然物語はひとすじに悲劇へと駆け下りていくのです。

でも、なによりこの物語の悲劇は、“とても、愛していること”だというのが、思わずたじろがされるところでした。

作者の桜庭氏も、今年5月の朝日新聞のコラムで、このように書いています。

 “彼女が殺される前に語った言葉「お父さんのこと、すごく好きなんだ」「好きって、絶望だよね」は、書いた本人である自分の胸の中で、今でも、過去からの鐘の音のように鳴り続けている”

以前アガサ・クリスティの『終わりなき夜に生れつく』の書評で、“女の幸福の一つは、愛している男の手にかかって殺されること”というような事が書いてあって少し驚いたことがあったのでしたが、“肉親への一途な愛”のための暗転を描いたこの物語は、さらに胸に重く響きました。

それでも、終末にはどこか、不思議な清々しさがあります。それが、桜庭氏が持っている本質からくるものなのか、それとも主人公の若さのせいなのかは分からないのですが。

その清々しさが、この暗黒の物語の一筋に光にも、赦しのようにも思えます。

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ヘタレな化け猫

2009-11-12 23:39:16 | ペット

ヘタレな化け猫

群よう子さんのエッセイだったと思いますが、猫を長く飼っている人はみな、“老猫は実に人の言うことがよくわかるようになる”と言う、という文章がありました。

わかる!と思いました。 私も、ウチの猫は実に人の話すことがわかるなぁ、と思ってるので。 というか、人語を理解するように見える所が、猫が『化け猫』なぞと言われる由縁かな、と思います。

さて、ウチの化け猫、もとい、老猫ですが、あんまりボーッとしているようなので、うしろ頭をコツンとつつきました。(よい子は真似しちゃダメ)

すると『ん?何今の?』という顔になったので、「これが浮遊霊です」と言いました。

すると猫が『ええ~っ!』という表情になったので、「嘘、うそ!からかっただけだよ」と抱きしめました。

けれどその後も、周りを見回しては何か物音がするたびにびくびくしていたので、なんだか言葉がわかるみたいだなぁ、と可笑しくなりました。

ただ、一つ言えることは、こんなヘタレな臆病な動物に祟る力はないな、という事ですね

(えっ、ウチだけ?)

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サンライズ・サンセット

2009-11-11 23:35:52 | 日記・エッセイ・コラム

食卓は笑う (新潮文庫) 食卓は笑う (新潮文庫)
価格:¥ 460(税込)
発売日:1986-08
昨日は市橋容疑者の逮捕、という大ニュースが日本中を席巻しました。

逮捕されたのはよかったと思うし、被害者の家族の方はほんの少し、ほっとされたのかな、と思いますが、加害者のご両親のこととか、もろもろ考えると重苦しい気持ちになります。

そして、昨日はもうひとつ、大きなニュースがあったのでした。

それは、俳優、森繁久彌さんの訃報。

私の年代でも、そうなじみがある俳優さんではないかな、と思います。私自身は、『知床旅情』の作者である、という印象しかなく、舞台での代表作の『屋根の上のバイオリン弾き』も、洋画の方を高校の時観ただけなのでした。

ただ、私は森繁氏、というと最初に思い浮かぶ小話があるのです。

それが、この『食卓は笑う』に載っているエピソードでした。

表紙を見て、うかがい知れるかもしれませんが、これは開高健さんが集めた、艶笑小話、つまりちょっとエッチなジョークの本なのです。

でも、ちょっと知性と品位、いや、そこまではいかないか、でも女性が読んでもそういやな感じはしない洒落たジョーク本であります。

ほとんどが海外のジョークなのですが、森繁氏作、という伝説がある艶笑小話があって、これが、もちろんエッチで、しょーもない、ともいえますが、素敵に洒落ているのです。

(とはいえ、ここに引用するのはちょっとはばかられます)

森繁氏自身も、きっと洒落た方だったのだろう、と思いました。

“サンライズ・サンセット”の哀感あるメロディも、思えばぴったりするような……。

ご冥福をお祈りいたします。

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男の子たち。 その3

2009-11-11 23:09:42 | 日記・エッセイ・コラム

以前印刷所に勤めていた時、編集機のオペレーターをしていました。

印刷所といっても、家内制手工業のような小規模な会社でしたので、オペレーターは私ひとり。

作成するのはチラシや伝票、広報誌の類が多かったのですが、年末から年度末の3月にかけては、学校文集がぐっと多くなります。

そして、子どもの文章というのはとっても面白くて、ついつい読んでしまうことがよくありました。

(もちろん、校正のために目を通す必要はあるのですが、あんまり読み込んじゃいけないですね)

とくに、男の子の作文が面白いのです。

たとえば、あるサッカー少年は、自分はスピードには自信があるけれど、当たり負けしやすいのが課題なので、そこのところを強化していきたい、と真面目に書いていました。

けれどある野球少年は、“ぼくは将来、野球選手になりたい。それは、野球選手はみんな、きれいな奥さんをもらっているからです”とちゃっかり書いてた。

でもどちらの子も、可愛いと思いませんか?

あと、サッカー少年といえば、ある子はジュニアの日本選抜で、海外遠征した時のことを書いていました。(相当、巧いのでしょうね)

スペインと試合をしたけれど、後半試合が荒れて、反則したスペインの少年に審判がカードを出したら、選手たちの何人かが激しい抗議をしたとのこと。

そうして、そのうちの何人かは退場処分になってしまったとか。

“さすがラテン系、子どもの時分から審判に抗議、そして退場”とちょっと驚きました。

お風呂で転んで、ガラス戸に突っ込んで大怪我をした男の子が、『お母さんはまっ青になっていました。でもぼくは救急車にのれてうれしかった』とあったのは思わず笑ってしまった。

謎も、ありました。男の子3人、女の子ひとりで、キャンプ地に行って魚釣りなどして帰ってきた、という作文があったのです。(うち、2人の男の子が触れていた)

楽しかった思いにあふれたいい作文でしたが、私が気になったのは紅一点の女の子の存在。

彼女は男の子たちのマドンナ、いわゆる“姫”なのか、それともボーイッシュな、異性を意識せず付き合える“仲間”なのか。

もちろん、謎は解けずじまいでしたが。

もう10年近く前の話ですので、作文の少年たちも成人しているはず。

どんな大人になっているのでしょうか。

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