翌日は曇り空で、肌寒かった。
Nが東急線の「自由が丘」を案内してくれるというので、付いていく。雑貨やアクセサリーの店をひやかしたあとで、「あ!ここきっと好きだよ」と教えてくれたのが、「大山生煎店」。
小さな店舗は、調理場と商品の受け渡しする所の反対側がカウンターになっていて、
ハイチェアによいしょっ!とよじのぼって座り、あつあつの点心(生煎)や担々麺を食べられるようになっている。古くてあまり綺麗じゃないところなど、どこか台湾っぽい造りだ。そこが気に入った。
この日も、近くの女子学生や近所のおばさん数人が担々麺や、ビールと生煎のセットメニューを食べていた。
生煎は上海のローカルフードだ。鉄鍋で焼く下側がカリッと香ばしい、もちもちっとした皮に少し穴をあけて汁を啜って、この旨い皮とともに濃い肉汁、肉餡をはふはふと、いいながら口にいれる。ごま風味でネギものっている。最初はそのまま。次に黒酢に浸して味わう。
1930年創業の北京の「阿三煎餡」のレシピを受け継ぐ店で休日には行列ができるそうだ。安いのもいい。
このあと、N御用達のパン&ケーキがおいしい「パティスリーパリセェイユ」に。
クロワッサンの焼き具合がよいとのこと。
そして、イデー(IDD)自由が丘のショップやエヴァムエヴァ、蚤の市をのぞき、
熊野神社のそば「カフェリゼッタ」で、いちじくのプリンアラモードとカフェオレで一服。
ブティックの「リゼッタ」は質のよいリネンやカシミアを扱う店で、大阪淀屋橋の芝川ビルの入る美容室(アトリエスタンズ)でカットしてもらった後で時々のぞく店。この日も、裾にかけてのシルエットが美しい綺麗な緑地のスカートがあって、欲しいと思うがこの日ばかりは見送った。
自由が丘を出たら、日比谷のペニンシュラホテル東京へ。
香港で購入して最高に気に入ったダージリンティーをぜひ買い求めたいと思って向かったのだが、1階のショップで「今期はお取り扱いありません」と丁重に断られ、がっかり。自由が丘でお茶したばかりだったのでアフタヌーンティーも飲めなかった。
そのまま、日比谷公園や皇居外苑に続くブティック街を歩く。
京都「一保堂」の真向かいに、京都「和久傳」がショップを構えているのが印象深い。
関西の老舗は、東京では堂々とした風格を讃えながら、よそ行き顔の風情で店を出されていて、それが大変ユニークだし個性的に目に映り、微笑ましい。
この通りには帝国劇場がある国際ビルにバカラショップがあるのだが、ショップの下にバカラのグラスでお酒を飲むことができるバー「B bar Marunouchi」もあるとか。
このあとは、東京ミッドナイトタウンなどをブラブラとみて歩いて、
有楽町や銀座を歩く。本日の〆は、銀座のそば屋「明月庵ぎんざ田中屋本店」。昔の銀座がここに。東京へ行くと一度は銀座に足が向かうのは、銀座という街があまりにも昭和な味わい深いエピソードをたくさん有しているからだ。
待つこと20分。いよいよ2階へ。
いかにも、江戸の粋を知るお年を召した男女が、冷酒やビールとともに、酒の肴をテーブルいっぱいにオーダーして〆にそばを啜っていかれる。
ごま豆腐、手羽先の塩焼き、銀たらの西京焼や丸ごとトマトサラダなんてのもおいしそう!などと、目を光らせていたら、万札がポンポンと飛んでいきそうな勢いだ。なにしろ、卵焼きが千円近くするのだから。
それでも、文人墨客っぽい人達が旨そうに、ものを食べている人をみるだけでも、楽しかった。ここを選んでよかった。
私たちは、季節の野菜が入る白和えを注文。ビールで乾杯して、Nは「きすの天ぷらそば」。私は「海老と季節野菜のかきあげそば」をいただいた。濃く甘めのだしで、しめにはぴったりだろう。そばはややこしあって、最後までしっかりと旨い江戸風のそばを味わえて満足。