月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

徒然なる怠惰と明日こそはの決意。

2021-06-10 00:04:00 | コロナ禍日記 2021






 

 4月22日(木曜日)晴れ

 

 インドでは二重変異のウイルスが拡大しているらしい、というニュースを聞いて布団にはいったせいか、朝方4時半、息苦しくて目がさめる。咳が出た。ぎょっとする。ふと、人類はコロナウイルスに果たして勝てるのだろうか、ワクチン接種がはじまって、イギリスやイスラエルの状況をテレビのブラウン管を通して目にし、開放感が漲った民衆の、よろこびっぷりを、乱痴気騒ぎを恐ろしくなった。予期せぬことの序章ではないか、ソファーに転んでいたのに飛び起きてしまったのである。

 

 昨晩は1時半まで仕事していたので少し寝不足だ。

 

 散歩にでた。外は新緑がいっせいにはじまっていて、まぶしい緑の幕開けだ。近所をぐるっと歩いていたら、桜の木々にさくらんぼが落ちそうにしがみついている。赤い実と、緑の実と。かわいらしくて、ほおずりしたくなる。一輪だけ、桜の花が実の中に混じっていた。少しいくと、今度は梅の実が一本の枝に行儀よくならんでいた。一昨年前におとずれた青森の奥入瀬渓谷を思い出す。









そろそろ、新しい葉っぱが出て、せせらぎの川面にゆれているに違いない。行きたい! 青森! 急いで帰って息をきらしながら、家人に、そう告げると、「いまは緊急事態宣言だからね、常識ははずれのことをしちゃあいけないよ」なんとも……返す言葉がない。正論とは、人を黙らせるだけだ。

 

 思い直して朝食を食べ、個室にこもってヨガ、瞑想。

 昨晩からよみはじめた、辻邦夫氏の本を読む。水素ガス吸入をしながら。

それから仕事をする。午後、デザイナー女子のAと電話。来月号のうちあわせ、互いの仕事をほめあい、1時間くらい話す。

 

 けらけらと笑いながら、レースのカーテン越しに外をみると。ベランダに3人の男がはいりこんで、電動ドリルとかなずちで、マンション修繕のための作業をしていた。むこうからはみえないと思って平気な顔をして(私は)電話をしているのだが、本当をいえば相手の灰色のズボンのたれ具合をみながらしゃべっている。と。あちらも、しごく自然体で、仲間の作業員とだじゃれをいいながら、「コンコン」「ガンガン」と外壁をたたいて、大笑いしているのをみて、やるな、と気になる。負けてはいられぬ。電話を切っても、サッシのむこう側で、ずっと刷毛で白いペンキのようなもので、あちらこちら塗りたくって、あげく「びゃくしょん!」とくしゃみをしたりするので、大急ぎで風呂に潜伏した。できたところまで原稿の推敲。

 

 一昨日につづいて、お風呂の中で本を読む。体があたたまりすぎて、また眠気けに襲われた。我慢できず、バタンキューッと、50分の睡眠。(風呂はやはり夕方以降でなければいけない)

 

 起きると、ゴールデンウィークの仕事が雪崩込んでいた。レギュラーの仕事だが、雑誌社から10本の依頼。こ、これは………。来週から、定期ものの仕事にもはいらねばならない。うーん。頭を悩ませ、なんとか良い返事を書こうとしていた。断ってはならぬ、ならぬのだ。コロナ渦に、お仕事を頂戴できるだけでもありがたいことなのだ。自分はついている!ラッキー!と奮い立たせるのだ、そうだ!と強く心に誓いながら。

 

 気を取り直して、止まったままの原稿に戻った。

夕ご飯は、羊肉のステーキ肉(薄いもの)を2枚。ポテトサラダ。新キャベツと海老の炒めたもの。納豆。味噌汁。デザートは夏蜜柑(皮はピューレにするために保存)

 

 食事後。テープ起こしをして、11時になったのでレンタルDVDをセット。映画館で見逃していた「82年生まれ。キムジュン」。話題作なのだ。面白かった。ストレスが、人間の細胞を変異させて、精神を犯していく話。病に侵されたキムジュン本人はもとより、彼女を見守る母と夫の悲しみが、心を打った。しかし、怠惰は癖になる。明日こそは絶対に勤勉に励もう!





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