月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

神戸の弓削牧場「ヤルゴイ」から「神戸森林公園」へ

2020-10-15 00:50:39 | コロナ禍日記 2020

  7月18日 (土曜日)晴れ

 

 

 風は葉の間をぬけて清々しい、暑い一日。今月のNの滞在は4泊5日という。朝起きると「一日たりとも無駄にはしたくない。ね、どこ行く」と朝食の間、3回は聞くのでとりあえず家族そろって車で出発した。

 

 スマートフォンから顔をあげて、道路標識へ目を移した瞬間に、あ! と閃く。うん、「弓削牧場」へ立ち寄ろう。六甲山の北側(神戸市北区)、標高400メートルにある(正式には箕谷酪農場)個人経営の牧場だ。ちょうどそのあたりを走っていたのだ。

 

 ラジオやテレビでおなじみのパーソナリティ、豊島美雪さんをインタビュアーに、神戸製鋼所の情報誌「smile」巻頭特集の連載(5ページ)を私が3年担当。「弓削牧場」の弓削忠生さん和子さん夫妻をふと思い出す。いまの季節、きれいに違いない、と思ったわけである。

 



 


 

 


 カラフルな家が並ぶ住宅街の角をいくつも曲がると、細い山道へ入る。風が、山の風へと変わった。おー!この景観だ!

 

 

 

 牛舎にチーズ工房、牛や羊の小さな放牧場、ハーブの畑、果樹園。こんな緑の里山が神戸から車で20分たらずとは。

 

 弓削さん夫妻の経営されている山小屋風の人気レストラン「ヤルゴイ」へ。コロナ禍、4組の来客がいた。通常なら、予約がとれないくらいの混雑と言ってらしたが、このとおり。外のテラス席もいいが、きょうは日差しが強い。

「おすすめランチセット」と、「マルゲリータピザ」を注文。

 



 




 



 

 前菜である3種のフロマージュ、深い生乳のコク。いきているミルクを食べているような感覚。湿気のある神戸の風土が育む丘陵に咲くハーブや山野草のニュアンスさえ、感じられる。

 ハーブで焼いたチキン、フロマージュフレ(原乳を絞ってから2、3日でできる熟成前の生チーズ)、ホエーのシチュー、チーズたっぷりのピザ、ブルーベリーのアイスクリームなどを味わった。

 店内には馬の鞍が飾られていた。朝ドラ「エール」の馬具職人の仕事風景が頭をよぎる。おそらくご主人の忠生さんのものなのだろう。南アメリカのカウボーイ的な鞍、ログハウスに調和している。

 

 食事のあと、Nはヤギにクローバーを食べさせていた。

 

 牛舎から出て、ひなたぼっこをしている牛たち。日差しが暑そう。ここの牛たちは競りにかけられて神戸霜降り肉になるのではなく、乳を搾る牛だというところで、安心して見ていられる。居心地がよいとみえて、ぼーと考えごとをしているつぶらな眼の牛や親牛に甘えている仔牛もいた。ふんの上で脚を45度に折り曲げて眼をつむっている仔牛もいる。

 







 

 

 ここ「弓削牧場」から車で15分も走れば、神戸森林公園だ。6月、Yちゃんとアジサイ散策をしたばかり。

花は若干、弱っているがあじさいが残っていた。あじさい園から、長谷池のスイレンをみにいく。葉の表面が半分化粧をしているように白い「半夏生」が幻想的でよい。

 







 






 

 特別天然記念物のニホンカモシカをみる。名前はさちこ、という。山の神といってもいい威厳。じっと立ち止まって岩のところから人間を観察していた。なにを思っているのだろう、人間と共生し、見せ物になるべく動物ではないという気がする。雄々しい角のせいだ。あぁ、宮崎駿監督の映画「もののけ姫」のシシ神の顔立ち。有り難いものに出会えた。なんとも不思議な気持ちになった。

  





 

 そこから、最短距離で「うさぎの国」を目指して森林の中15分〜20分近く歩く。鬱蒼とした森林の空気。もはや遊歩道ではない。人を隠してしまおうとする山の強い気を感じる。足があがらない。無言で黙々と歩いた。へとへとに疲れて、うさぎの国へ到着(Nの強い希望で)。思わぬ登山になる。

 檻にいれられたウサギの群れ。かわいそうに、こんな大自然の中にいて(鍵のかかった小動物園)閉じ込められ、つまらなそうにじっとしている。やることがないので幾つもの穴々を掘っていた。40羽はいただろうか。可愛いなど、思わない。餌は固いカボチャが転がっているが、食物に飛びついて食べているウサギは一匹たりともいない。観覧者のいない、置き去りにされたウサギたち。こんな山の中でひっそりと飼われて、冬はどうしているのかと気になった。神戸森林公園、またゆっくりと野鳥ウォッチングに出かけたい。

 

 

 

 



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