9月からずっーと仕事が切れ目なく続き、ありがたいのだが
ここ最近は、どうもうまく進まない案件が連続して、ストレスがはんぱない。石の上をゴテゴテに走っている。
忙しいからこうなるのか、というと「絶対に違う」と、いおう!
最近自分の小ささを改めて痛感する。キャパにしてもそう。
考え方も誰かのようにワールドワイドでないから、小ぶりな案しか浮かばない。
大プロジェクトの依頼がくれば、それも多額が動き、間に2・3社、コンサルタントまで入る案件となると、たちまち怖じけづく。
あーと嘆くまえに。
せめてグジグジと反省したり思い返して妄想を広げたりするよりも、
前へ進もう。前へ!…。前へ。ということで、
ずっーと途中下車したままの、旅行記をおしまいまで書いてみることにいたします。
再び真夏の台北へ旅します。
途中下車したのは、点心で有名な「點水樓」から。
再び台北市内を走るMRTで「東門」までやってきた。
「西門町」(ティーンの活気あふれる町)とは全く異なる落ち着いた大人の町だ。
台湾はいろいろな顔をもっているなぁ、と改めて実感。
野犬に吠えられたディープすぎる台北も夢のようである。
台北の「鼎泰豊本店」もこの街に。
麗水街や永康街を歩いているだけで、思わず入りたくなるようなセンスのいいショップが軒を連ねる。
まず、麗水街の入り口にあるブティックで、刺繍使いのドレスやブラウスに釘付け。
しかし台湾デザインをあなどるなかれ、値段も6000元という結構の値札(約2万円)。素晴らしい~。
ともかく、この街ではいいもの、珍しいものをたくさん観た。
特に「圓融坊」のシノワ雑貨はすごい。
最初にのぞいてから帰り際にも訪れて2回も入店した。
「成家家居」、「雲彩軒」、自然ジャムの「自然結果」、
銀製品の「玩銀工房」。
(Nはまたシューズショップで、靴を物色。洋服も購入していた)。
この街は中心部に大きな公園があって、
ガジュマルの木の下で語らうおじいさんたちの微笑ましい風景や、子供たちの元気な笑い声も響く、
とてもピースフルなところも気に入った。
小吃料理の店。いくつかの画廊、茶館、イタリアンレストラン、雑貨店、そして昭和町文物市集…。
豪華な豪邸と素朴な古いアパート。
さらに昔懐かしい木造家屋など、新旧が交わり合う、このミスマッチな感覚が愉しい。
西瓜ジュースを手に歩き、「マンゴースィーツ」の有名店へ。
マンゴーかき氷は、成熟した果実がものすごくフルーティーで練乳たっぷり。
大盛りでもぺろっと。胃袋にストンという感じだった。
そうして、2時間くらい街散策して訪れたのが、念願の「泌園」だ。
私は、ここを訪れたくて台湾行きを決めたくらい、茶葉と骨董の茶道具を扱うこの「泌園」という店に恋い焦がれていた。
その理由は、婦人公論新社で掲載されていた平松洋子さんのエッセー「台湾名香」、
そして、「旅で恋に落ちる瞬間」を何度も繰り返して読んでから。
平松さんは、2000年に「泌園」で、お香を求めて以来、在庫を補充しつつ、
「毎日忙しい東京での生活を潤わせてくれるのは、あなた(泌園の店主)が調合したこのお香。
台湾から帰って以来ずっと朝に夕に焚き続けてきました」というほど、
この店を、このお香を愛してこられたという。
「ゆらりひとすじ居間の片隅で香煙が立ち昇っている。
私のふだんの香炉はベトナムの蚊取り線香入れ。
その枯れた風情の銅色の上蓋からふくよかな、しかし奥底にきりりと1本芯の通った上品な香りがあたりを満たしていく。(中略)」
お香の名は「正黄奇楠沈香」だ!
黄奇楠と呼ばれるベトナムの沈香に
松香が調合されている。
沈香とは、永い歳月を積み重ねながら沈丁花科の樹木に樹脂が蓄積していったもの。
平松さんは、いよいよ残り少なくなった香りを求めて、この店を再び訪れ、店主と再会する。
そして、店主の廖さんは平松さんに言うのだ。
「よくいらっしゃいました。またお会いできてうれしいです。あなたのことはよく覚えています」
(中略)
「泌入心脾」。「心の奥までしみわたっていく香りを中国人はこう表現します。
おっしゃるように、この香りは雑念を取り払い、気持ちを沈めてくれる。沈香は神様と向かい合う時に焚くお香です。
立ち上る1本の煙を静かに愉しみ、しだいに無の状態に近づいていく。
空寂。つまり雑念のない世界に入っていくことができる、このお香はそんな香りなのです。
そのことを深く理解してくださったのですね」(店主の廖さん)。
さて、その「泌園」。
台湾のどことも違う、穏やかで高賀。温かい味のある店だった。
茶藝道具が飾られたカウンターと対面し、南投県の凍頂烏龍茶やプーアール茶などが陳列してあった。
お香は、入り口から一番遠くのプライベートスペースに近いガラスケースに、
ほんとうに目立たないようにひっそりと納められていた。
もともと骨董品屋だったというオーナーの廖さん。
日本に在住経験のあるご主人と20年ほど前にこの店を始めたとあって日本人かと思うほど、
日本語が素晴らしく、やわらかい自然な笑顔と言葉づかいが似合う人だった。
そして私の話を、すごくうれしそうに耳を傾けてくれたばかりか、さっそく、
なんの躊躇もなく、巻き線香を手にしたかと思うと
「正黄奇楠沈香」に点火。 なんと、その場で聞香させていただいたのである。
ほんとうは、来客と雑踏もあって、もっと静かに聞きたかったけれど…。
それでも、確かに日本の香とは違う、高尚なやわらかい息吹。
花のようでありながら、
不思議な静寂に包まれ、「異国の賀なるにほひ」というようなイメージを感じた。
平松さんとのエピソードもゆっくりと語ってくださった。
もちろん、購入しましたよ。
かの「正黄奇楠沈香」。平松さんが購入されているのは、3000元。
あまりに高価すぎて、わたしにはふさわしくないと思い、その半額1500元のものを購入した。
私たちは、メール交換をしあい店を後にしたが、感性がいつまでも研ぎ澄まされ、敏感であるような気がしてならなかった。
そのあと、「回留」や「豊盛食堂」にも行きたかったが、 なんだか自然をみたいなあーという気になる。
そして、再び「MRT」に乗って「淡水」へ(「東門」から30分)。
車窓に台北の街を見ながらゆっくりと電車に揺られた。
そこからがまたまた、場面変換。
ではないけれど新しい台北の顔に出会う。
これがまたインパクト大!
台湾のベニスといわれる「淡水」。
「MRT」を降りたら、すでに黄昏で。
海の台北を満喫しようと、あたりにレンタサイクルを探していたら、すごい活気にのまれそうだった。
独特の雰囲気!なにこれ!
この日は、土曜日。「淡水河邊夜市」に繰り出す人で溢れかえっていたのだ。
皆大急ぎで走っているのはなぜ?皆が、小走りなのである。
もうきゃーきゃーと歓声も。それほど?というほど、一様にうれしくてたまらないよう。
とにかく、おばちゃん、おじちゃんが颯爽と走っている。
お母さんは両手に子どもの手をひしっと握りしめ、ある人はさらに前後ろに子どもを連れて。
顔をにやつかせて、夜市へダッシュ!
皆が、誰もかれもが、大騒ぎ。
なんだか、遠い昔。自分が幼稚園児だった頃に、夏祭の夜店へ掛け出していた頃をふと思い出す。
それも地方の、田舎にある小さな夏祭りだ。
周囲を見渡すと、
私たちのように、台湾のベニスに浸る人は観光客ばかり。
それでも、せっかくレンタサイクルを借りたので淡水河側の整備された道を、
風を切って自転車をこいだ。
気持ちいいー!最高だ!
ビュンビュン走らせるわけにはいかなかったが、遠くの島はキラキラして、
船舶が浮かんで、波がゆらゆら。風がゆらゆら、とても心地いい夕暮れだった。
私たちは、自転車を波止場で止めて。
今度は、山側をテクテクと歩いて、階段を上る。上る。上る。
はぁはぁと肩で息をしながら今度はどんどん、どんどんと山のほうにむかって上がった。
そして目当ての「紅樓中餐チィン」(1399年築)へ。
美しい夕日のいビュースポットとしての絶景を目にして、ほっーとため息。
きれいだった。
予約をしていなかったので、1階の「中華料理」は満席だったが。
少し手前の部屋で点心だけいただけて。
さらに3階にある「レッドスリーカフェ」で、
台北一の海の夜景を堪能しながら、ビールを飲み、イタリアンメニューを愉しむことができた。
(つづく)
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(台北旅行記)2
(台北旅行記)1
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