初めにのん在りき。の企画だったのではないかと思える程に、のんちゃんの魅力が十二分に発揮されていた映画ですね。
のんちゃん演じる中島加代子という人は、わがままで傍若無人で嘘つきで狂暴で、まあ酷い奴なんです。なんですけど
のんちゃんが演じると、これが妙に可愛らしくなっちゃうんだな。
己の希望、というより野望に忠実で、なにがなんでも成し遂げようとするバイタリティーの凄さ。
作家ですから嘘の話を作るのは得意だし、元演劇部のスキルを活かした、ほとんど詐欺師と言っていい行動で、宿敵の大作家・東十条宗典(滝藤賢一)を手玉に取っていく。
こうして書いてみると、やはりろくでもない人物としか思えなくなっちゃいますけど、これが、のんちゃんが演じると
可愛いんです(笑)。
まあ、コメディということもありますからね。基本コメディなので、すべて笑いに繋がっていくような作りになっているし、そこはのんちゃんのコメディエンヌとしての才能が遺憾なく発揮されているので、やはりこの役は
のんちゃんでなければ熟せなかった役だと思いますねえ。
滝藤賢一さんが演じた東十条宗典は文壇の重鎮で、のんちゃん演じる加代子の大敵。重鎮らしい尊大さといやらしさを持った、「男尊女卑クソジジイ」なわけですが、心の奥底には、若い頃に抱いていた文学への情熱が残っていて、それが加代子とやり合っていくうちに目覚めてくる。加代子との”戦い”が、結果として良いことを齎す。
滝藤さんの演技がまた素晴らしい。尊大でいやらしい奴なんだけど、妙にチャーミング。加代子に翻弄されつつ、結果として加代子のお陰で作家としての情熱を取り戻す。良い役です。
加代子付の編集者、遠藤先輩を演じた田中圭さんも良かった。加代子の野望に時に協力し時に突き放す。敵か味方かわからないところのある男。加代子の作家としての才能は認めており、加代子の行動を冷静に見つめながら、フォローしていく。この人なしに加代子の作家生活は続けられなかった。実に面白い役でしたね。
やはりね、この映画は初めにのん在りき、で始まった企画だと思う。抑々、映画としては地味な企画だし、さほどのヒットは望めない。それでも作った。
そこには、のんちゃんと仕事がしたいという、製作者側の強い意志があったから。だから
のんちゃんの魅力を遺憾なく発揮できる原作を探し、結果
ここに繋がった。
これは私個人の妄想に過ぎませんが、そうとしか思えないんだよなあ。
のんちゃんと仕事したい人、映画人の中には多いんじゃないかな。
分かる人には分かるんですよ。
のんちゃんの魅力が。
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映画『早乙女カナコの場合は』速報