あおこのぶろぐ

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「拍手どころ」のジレンマ 新国立劇場「ウェルテル」

2019-03-22 23:32:24 | 日記
「ウェルテル」は私がオペラ的に「物心がつく前」、つまり初心者の時に観たオペラです。

最初に観たのは、1980年の二期会公演。
小林一男さんのウェルテル、荒道子さんのシャルロッテでした(指揮はコバケン、オケは東京交響楽団、演出は栗山昌良さん)。

「オシアンの歌」をはじめとする美しい音楽と、幻想的な舞台、遥か昔(幼い頃の夢か前世で)見聴きしたかのような「懐かしさ」を感じ、このオペラが大好きになりました。
フランスオペラではいちばん好きです。

その後、CD等でいくつかの演奏を聴きましたが、「観た」のは、新国立劇場の2002年と2016年、それにカウフマン主演ののMETライブビューイングくらい。

今回の公演は2016年と同じプロダクションで、タイトルロール以外邦人キャストです(2月20日鑑賞)。

ウェルテルのサイミール・ピルグは、若干ウェルテルのイメージと違うところもありますが、歌もヴィジュアルもOK。

シャルロットは世界に誇るメゾの藤村実穂子さん。今までフリッカとかヴァルトラウテとかしか聴いたことなかったけど、こういう、しっとりと聴かせる役もいいですね。

ソフィーの幸田浩子さん、アルベールの黒田博さん、お二人とも日本を代表する実力派スターで、期待通りの演唱でした。

しかしプログラムに、ウェルテル23歳、シャルロット20歳、アルベール25歳、ソフィー15歳と書いてあるのを見てしまうと、オペラグラスは使わないほうがいいなと思ってしまったけど。

大法官は、ありゃ、この前「他の役で観聴きしたい」と書いた、びわ湖のファーフナー、伊藤貴之さんではないですか! やはり良い声でした。

シュミットの糸賀修平さんはちょっと線が細い感じだけど明るい声、ジョアンの駒田敏章さんはいい声で、今後が楽しみです。

指揮のポール・ダニエルも良かったなあ。オケは1980年と同じ東響。

ニコラ・ジョエルの演出は、気になるところもなくはないけど、大きな不満はありません。

総じて満足の公演でした。

ただ、シャルロットの「手紙の歌」とウェルテルの「オシアンの歌」の後に、拍手用に音楽を止まったところが、個人的には「うーむ」。
拍手が起こったから止めた、というより拍手用に止めていました。
初日のリアクションをみてそうしたのかもしれないし、それが世界的スタンダードだからかもしれません。
だけど、私は前々から気になっていました。

確かにここは「拍手どころ」。拍手と演奏がかぶってしまうとよくないのはわかります。

特に「オシアンの歌」はテノール最大の聴かせどころです。
拍手はもちろんわかる!
……んですが、「オシアンの歌」はその後の音楽を考えても、切らないで欲しいなと思ってしまうのです。
ハープのアルペジオが続いて、シャルロットが返して、ウェルテルがたたみかけて、二人の思いが最高潮に達する大事な場面。
ドラマがブチッと切れてしまうようで。

オペラという総合舞台芸術。それぞれ楽しみ方がありますが、私は、演奏(歌)より、ドラマと音楽を重視したい派である、ということを自覚したのでありました。