寿迎夢・寿迎夢

海砂利水魚水行末雲来末風来末

タイムサービス

2013-03-26 | Weblog
(タイムサービスか)
女は、行きつけのスーパーののぼりを、ぼんやりと見上げていた。
この店、五時から六時まで、生鮮食品は大安売りになる。 

でも、それだけじゃないのだ。
女は、何も、知らないようだ。

相変わらず、気のない顔で、中に入ってきた。
(なに、作ろうかな)

肉、魚、野菜、果物と、ながめていきながら、ある場所にきてから、
足が止まってしまった。というよりも、とめられたのだ。

(あんたが、今日の、夕方の女王だ)
はっぴ姿の、若い男が、彼女を押しとどめた。(え、なに、それ)
女の目は、点になっている。まだ、よく飲み込めてないらしい。

実は、この店、タイムサービス来店中の客の中から、このはっぴのにいちゃんが、
えらんだ女性客が、夕方の女王になって、願い事が、ひとつかなうって寸法だ。

真相を聞かされた女は喜んだ。
女の願い事を聞いて、男はちょっと困り顔だ。

女は、言ったのだ。
(私の家に来て、夕飯作って)だって。
(しょうがない。 引き受けた。 でも、材料は、全部うちの店で、調達してくれよ)
(わかってるわよ)

女は、笑いが止まらない。
男は、しょうがねえやって顔だ。

夕方になると、こんなスーパー、どこかにあるかもよ。

祇園を歩く