花と死と運命
木村素衛(1895-1946)
木村素衛(哲学者・教育学者)の、病と闘った晩年の日記。
「私はこの様に美しく神秘な自然の荘厳を見るとき、時が来て花が何の未練もなくひらひらと散つて行つて行く様に、人間も亦その自然の死を、あの様に未練なく受けて行つていいものの様に思ふ。自然がこのように美しく神秘に出来てゐる事をしみじみ見るだけで、その自然の中に生れた人間もこの自然に充分な信頼をつないでこの一生の終りを托し切つていいものだと思ふ。心安さが生れる。霊は滅か不滅か知らない。それを問ふよりも問はないところに絶対の信頼がこの実在に向つてかけられているのではないか」
「人生の真実は実践である。人生は行の世界である。祈りは一つの行なのである。それは真実に人間が願ふべきものが何であるかを本当にはつきり知る事の行なのである。つまり祈りに純真に徹して行けば、祈りが祈りを洗ふのである。真実の祈りは内なる運命を変える事ができるに違ひない」
2021.6.10読了
アテネ文庫
昭和23年3月25日初版発行
昭和29年12月15日6刷
旧仮名遣い
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