政治家を目指しつつ落選し続ける夫を、妻のあやめは、文房具店を経営しながら資金援助しつつも、夫の後輩の新人議員に思い寄せるが……。
「一たん妻とよび、夫とよんでつないでしまった縁の暗い深さ。戸籍面の事実とか、世間体とか、時には愛情をさえ取りのぞいてもなおそこには、無数に二人をつなぐ糸が残っている。一旦結婚して、生活が織り込まれてしまったということが既に取り返しのつかぬ事なのだ……。」
揺れ動く女性の心理が赤裸々に描かれていてスリリングでもあるのだが、如何せん、彼女に関わる男たちの心の動きの描写が希薄というか不自然なのが惜しいところ。
2021.3.2読了
平林たい子「愛情旅行」
角川文庫
昭和31年5月20日初版発行
旧仮名遣い
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