国土交通省は30日、大手建材メーカー「ニチアス」(東京都港区)が、住宅用の防火建材を製造する際、虚偽のサンプルで耐火性試験を受け、国交相の認定を不正に取得していたと発表した。
この建材は全国で計約10万棟の住宅に使用され、同社の調査では、うち約4万棟は認定基準より耐火性が劣っていたという。同社の社長らは昨年10月に問題を把握しながら公表せず、今月29日まで出荷を続けていた。国交省は同社に対し、すべての住宅について改めて耐火性があるかどうか調査を指示した。
国交省などによると、問題の建材は、軒裏に使用する防火用天井板(不燃板)。同社は2001年10月~05年8月、指定性能評価機関の耐火性試験を受け、3タイプの不燃板について、30~60分の耐火性を認められ、国交相認定を取得した。
ところが、同社は試験を受ける際、耐火性が高まるように、屋根の垂木の上に敷く不燃板に基準の2~6倍の水を含ませていたほか、軒下側の不燃板の材質を断熱性の高いものに取り換えていた。
実際の商品は、耐火性60分タイプは45分、45分タイプは30分しか耐火性がなかった。オフィスビルなどの耐火用間仕切り壁も、不燃板に水を含ませる方法で認定を不正に取得し、約750棟に使用していた。
同社は昨年10月の社内調査で、川島吉一社長ら役員3人が問題を把握した。しかし、納入先の旭化成ホームズ(東京都新宿区)やミサワホーム(同)などの住宅メーカーには知らせず、その後も約1万7000棟分を出荷していた。国交省への報告は、今月17日だった。
川島社長は国交省内で記者会見し、「顧客より住宅メーカーとの関係を優先させ、代わりの資材開発を急いでいるうちに時間がかかってしまった」と釈明した。
一方、ニチアス最大の取引先だった旭化成ホームズは30日、問題の建材を使用している住宅は、首都圏を中心に約3万8000棟に上ることを明らかにした。大半は1時間の準耐火構造をセールスポイントにした「ヘーベルハウス」ブランドの一戸建て住宅で、01年7月以降の契約者が対象。同社は、すべての住宅を無償で改修することにしている。
親会社の旭化成の蛭田史郎社長も記者会見し、「不正は非常に残念。改修にかかった費用の請求も含め法的手段を検討する」と話した。
2007年10月31日 読売新聞