鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

埋もれた軍歌・その28 行李の進軍歌

2014-10-05 21:52:25 | 軍歌
前回に引き続き『へいたい』第二号からのご紹介です。雑誌に掲載された文章では冒頭に「私の実感です共鳴下さい 愛馬進軍歌曲に合はせて」とあり、また詩の後に「他の隊では第五番の第二三句を次の様換へて下さい」とあります。自分の所属する隊だけではなく、南支派遣軍の他部隊でも通用する「軍歌」となることを作者が念頭に置いていた事が伺えます。なお、この「他の隊」バージョンの歌詞は以下の場合(カッコ)に入れて示しました。


行李の進軍歌
           荒川隊 高木喜三郎
           愛馬進軍歌曲

一、九段の華に咲く覚悟
 戦く胸と血を抑へ
 断崖巡る三日月夜
 車陣をつくり駒と寝る

二、星の光に鞍をいて
 進む十 十五粁
 越えたあの山この麓
 秣あたへて朝餉炊く

三、舟を連ねて粗朶しいた
 假橋浮かす濁流を
 挑む敵兵壓へつつ
 彼岸に進む勇め駒

四、曠野の草木こがす日も
 塵にまみれてもろともに
 銃聲送る夕まぐれ
 今一息だ進め駒

五、御前を叱り鞭打つは
 紅に染つた傷兵の(弾薬兵糧前線へ)
 治療の任務重ければ(輸送の任務重ければ)
 哭くな果さういとし駒



この作者が所属した「荒川隊」はどうやら馬匹を利用した輸送部隊であったようで、メロディを利用した「愛馬進軍歌」が戦闘部隊としての騎兵について歌っているのとはかなり印象が異なります。敵との直接的な戦闘を感じさせるものは三番の「挑む敵兵…」くらいのもので、あとはひたすら輸送途上のことを歌っています。また荒川隊は負傷した兵士の後送任務にも従事していたようで、五番はそれについて歌っています。
二番の「進む十 十五粁」という部分は実際に口ずさんでみるとややメロディに合わない部分がありますが、もしかすると最初は「進む十粁 十五粁」であったものが編集の過程で脱字となったのかもしれません。また、四番の「銃聲…」も私が見た復刻版では三文字目がかなりかすれており判読困難でした。この部分については文字起こしが誤っている可能性がありますがご容赦ください。

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