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希望の風、日の光――自然エネルギーはいま

2016-01-01 16:36:45 | エネルギー問題




 世界の風力発電の発電能力が、原発のそれを上回ったという。
 12月29日付の朝日新聞電子版の記事によれば、世界の風力発電の発電能力は今年4億キロワットを超え、3億8千万キロワットあまりの原発をはじめて抜いた。
 といってももちろん、これはいくつか注釈が必要な数字である。
 一つには、この数値はあくまでも“発電能力”であって“発電量”ではない。風力発電は風が吹いていなければ発電できないので稼働率が低く、数字上の発電能力のうち実際の発電量は30%ぐらいだという。一方原発の場合は稼働率が80%ほどで、そのため発電量ではまだ原発のほうが上だ。だが、この記事によると、風力発電は飛躍的に増加しており、2030年には20億キロワットを見込んでいるといい、発電量でみても、やがて原発を抜く可能性がある。また、技術革新と大規模化によって、コストも火力発電と同じくらいのレベルにまで下がってきている。

 一方、太陽光発電のほうはどうか。
 自然エネルギーといえば風力がメインで太陽光はあくまでもサブと考えられているが、その太陽光も、九州ではかなり広がっているようだ。土地の価格が安いということと、日照時間が長いという地の利がそれを後押ししている。
 太陽光もまた太陽が出ていなければ十分に発電できないという弱点があるわけだが、しかし夏場のピークには大きな戦力となっている。じつは、夏場の電力消費量と太陽光発電の量は、うまい具合に自動調整のようなかたちになっているのである。
 夏に電力消費が大きくなるのはエアコンを使うからだが、もちろんそれは、暑いからだ。そして、暑いときにはたいてい太陽がギンギンに照っている。ゆえに、太陽光発電の発電量も増える。つまり、夏の電力消費が多いときには、太陽光発電の量も必然的に多くなるのである。
 結果、今年の夏でいうと、九州電力管内では夏場のピーク時(8月6日の昼)においてじつに発電量の25%が太陽光によるものだったという。全国で見ても、同じ日に太陽光が全体の電力の一割ほどを占めたそうで、この発電量は、原発十数基ぶんに相当するということだ。太陽光発電は、09年からの五年あまりで10倍近くに増加していて、これだけ戦力になるところまできているのである。

 それでももちろん天候に左右されるということからくる非効率性は残るわけだが、しかし、では原発が本当に効率的なのかというと、そういえない部分もあるのではないかと私は思っている。

 原発というのは、火力とちがって細かい調整がきかないらしい。
「いまは電力使用量が少ないからちょっと出力を下げよう」とか「使用量が増えてきたから出力を上げよう」といったようなこまめの調整ができないのだという。たとえば、実際の使用量が3000メガワットであるにもかかわらず、8000メガワットの出力を続けなければならないとしたら、それは無駄な燃料を消費しているといえる。そのように考えれば、原発というのはじつは無駄の多い発電方法なのではないだろうか。
 そのような無駄があるとしても、燃料となる放射性物質が無尽蔵に存在するのならそれでいいかもしれない。だが、実際にはそうではない。核燃料として使える放射性物質の埋蔵量はそんなに多くはない(ものの本によれば、世界のすべての電力を原子力でまかなうとしたら7年ぐらいで枯渇してしまうそうだ)し、核燃料サイクルも先が見えない状況だ。そういったことを考えれば、原発も決して“効率的”とはいえないのではないだろうか。太陽光や風力は、「発電能力を常にフルに発揮できない」という意味で非効率的だが、原発は逆に、「必要でないときにもフルに発電して無駄に燃料を消費する」という非効率があるのだ。

 そして、そうだとすれば、先の見えない原発よりも、事実上無限といってもいい風力や太陽光のほうが将来のエネルギーとしてよほど“現実的”である。
 土地の制約を問題にする人もいるようだが、しかし、太陽光や風力は洋上にフロートを浮かべるといったかたちでも可能である。陸地だけでなく洋上も使えるということを計算に入れれば、潜在的な発電能力は相当に大きいといえる。さらに、太陽光に関しては、宇宙空間に太陽光パネルを設置して発電するという技術も研究されている。これなら、天候や昼夜に関係なくいつでも発電できることになる。実現はまだ遠そうだが、しかしマイクロ波による送電についてはすでに実験に成功しているようである。
 冒頭に紹介した朝日の記事によると、日本の風力発電の増加はほかの国に比べて桁違いに少ない。これは、政府があくまでも原発にこだわっているためだろう。行き詰まりを見せている原発にこだわらずに、風力、太陽光といった再生可能エネルギーを増やしていくことこそ日本の生きる道だと思うが、どうだろうか。


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