真夜中の2分前

時事評論ブログ
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ファイト!

2015-09-23 20:04:20 | 音楽と社会
 先日、安保関連法案の反対運動に関するツイッターを見ていて、ある歌の引用を目にした。中島みゆきの「ファイト」という歌である。あらためてその歌詞を思い起こしてみると、じつにいまの状況にぴったりな気がしてきた。そこで本記事では、今回の騒動とからめて勝手に注釈をくわえながら、この歌を紹介したい。


  あたし 中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた
  女の子の手紙の文字は 尖りながら震えている
  ガキのくせにと頬を打たれ 少年達の目が歳をとる
  悔しさを握りしめすぎた拳のなか 爪が突き刺さる



 このフレーズは、「就職できなくて震える」などと心ない大人たちから罵声を浴びせられる若者たちの姿を思い起こさせる。


  わたし本当は目撃したんです 昨日の夜 電車の駅 階段で
  転がり落ちた子どもと 突き飛ばした女の薄笑い
  私こわくなってしまって 助けもせず 叫びもしなかった
  ただ怖くて 逃げました 私の敵は私です



 転がり落ちた子どもと、突き飛ばした女の薄笑い――この一節からは、未来世代を終わりのない対立と紛争の淵に突き落とす法案を薄笑いを浮かべながら通す与党議員らの姿が思い浮かぶ。そんな状況に遭遇して、助けもせず、叫びもせずに、ただ怖くて逃げてしまうような自分を許せないという人たちが立ち上がり、全国各地で声をあげた。そんな人たちにむけられたエールのように感じられるのが、次のサビの部分。


  ファイト!
  闘う君の唄を 闘わない奴らが笑うだろう
  ファイト!
  冷たい水の中を震えながらのぼってゆけ


 さらにそこからの歌詞は、まさにいまの状況を歌っているようだ。


  暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく
  光ってるのは傷ついて はがれかけた鱗がゆれるから
  いっそ水の流れに身をまかせ 流れ落ちてしまえば楽なのにね
  やせこけて そんなにやせこけて
  魚たち のぼってゆく
  勝つか負けるか それはわからない
  それでもとにかく闘いの 出場通知を抱きしめて
  あいつは海になりました


 この部分に注釈は不要だろう。
 抗議活動などしたところで意味がないという人もいるが、絶望的な状況で、それでも立ち向かっていく姿は、多くの人に勇気を与えるのではないだろうか。それによって、また新たに立ち上がる人が出てくる。その連鎖が、今回の大規模な抗議行動につながった。


  薄情者が田舎の町に 後足で砂ばかけるっていわれてさ
  出てくならお前の身内も 住めんようにしちゃるっていわれてさ
  うっかり燃やしたことにして やっぱり燃やせんかったこの切符
  あんたに送るけん持っとってよ 滲んだ文字 東京行き

  あたし男に生まれたらよかったわ 力づくで男の思うままに
  ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれたよかったわ


 終盤の歌詞は、このように暗澹とした状況が歌われる。これは個人的な感想だが、私の地元である福岡あたりの方言で歌われているために、なお切々とせまってくる。“世間”、あるいはどこか官僚主義的な日常とでもいうべきものが、重苦しくのしかかってくる。
 しかし最後は、かすかな希望のようなものを見せてもくれる。


  ああ小魚たちの群れ きらきらと
  海のなかの国境をこえてゆく
  あきらめという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく



 いま、小魚たちの群れは、“あきらめという名の鎖”から逃れつつあるのかもしれない。
 そこに大きな苦難が待ちかまえているであろうことはたしかだが、暗い水の流れに身をまかせて流れ落ちてしまうことなく抗う力と勇気を、抗議者たちは見せてくれたし、今も見せ続けている。その力は、やがて海のなかの見えない国境をこえてゆくかもしれない。
 政府与党の側は、とにかく法案をごり押しに可決成立させることで、抗議者たちがあきらめてしまうことを狙っている。だが、あきらめることなく、世の中を闇の淵に引きずり込んでいく重力に抗い続けるかぎり、希望はある。傷つき、やせこけても、それでも水の中をのぼってゆく魚たちの群れに、最後にもう一度このフレーズを繰り返しておこう。


  ファイト!
  闘う君の唄を 闘わない奴らが笑うだろう
  ファイト!
  冷たい水の中を震えながらのぼってゆけ

反ファシズム統一戦線樹立へ! まずは、社共から

2015-09-21 21:03:02 | 政治・経済
 安保法案は成立したが、今なお反対運動は継続している。
 そんななか、共産党が「国民連合政府」樹立のために野党への選挙協力を呼びかけて話題となっている。

 共産党という政党は世界各国にあるわけだが、どこの国でも、共産党というのはたいてい(良くも悪くも)頑固一徹で、古今東西めったに他党と選挙協力をすることはない。どころか、日本共産党の場合だと、かつては、300あった小選挙区すべてに候補者を立てるという自民党でさえやっていないことをやっていた。その共産党が、他党と選挙協力して候補者調整をしようというのである。
 このことは、現在の状況がそれだけの非常事態だということを意味している。
 共産党が他党と協力した例として私が想起するのは、たとえば、ムッソリーニ時代のイタリアである。このときは、社会党と共産党が統一戦線を組んでファシスタ政権に対抗した。そういうふうに、共産党が他の党と手を組まなければならないような状態に、いまの日本は陥っているということなのだ。

 このような選挙協力が実現すれば、今後の選挙で自公支配を崩せる可能性は高まる。
 民主党の下野以来、国政選挙での大規模な選挙協力は行われておらず、それが自公の圧勝につながっているわけだが、地域レベルでの共闘は行われていて、大きな成果をあげている。
 たとえば、昨年の衆院選では、沖縄の辺野古新基地に反対する勢力がオール沖縄で結束して自民党を零封した。また今年は、橋下大阪市長率いる維新が提起した大阪都構想に、共産党を含む複数の党が結束して反対し、都構想を葬り去った。このように、左右問わず多くの党が結束してあたれば、一強といわれる勢力を妥当することもじゅうぶんに可能だなのだ。安倍ファッショ政権を退陣に追い込むために、小異を捨てて大同につくのが、安保法制に反対し続けた国民の声に応える道だろう。とりあえず安倍政権を退陣させるまでの一時的なものでかまわないから、幅広い野党共闘を実現すべきである。

 そして、まずは社民党が共産党の呼びかけに応じるべきだと私は考える。
 社民党は、野党のなかで、おそらく共産党ともっとも思想的に近いだろう。そういう意味で手を結びやすいし、衰退の一途をたどる社民党にとっても、これは起死回生の手となる。はっきりいって、今のままでいけば社民党は今後十年存続できるかどうかもあやしい。どうせ危機に陥っているのなら、いちかばちかの社共連合にかけてもいいではないか?
 そして、その二党の共闘が実現すれば、そこに生活、民主など他の野党が加わる呼び水ともなる。維新の参加は難しいかもしれないが、社共民生で統一戦線のようなものを作ることができたなら、それが有権者の間にも安倍政権打倒が現実的なものと認識され、さらなる反安倍闘争の起爆剤となるだろう。
 繰り返しになるが、とりあえず一時的なものでいいので、些細なちがいはこの際わきにおいて、野党は大規模な選挙協力に踏み出すべきである。

民主主義は死んだ(そして新たな戦いがはじまる)

2015-09-19 03:37:44 | 政治・経済
 ついに、安保法案が可決・成立した。
 これだけ反対の声があがっているにもかかわらず、そして、国会審議において嘘やごまかし、矛盾が次々と明らかになったにもかかわらず、政府与党は強引に押し通した。
 これによって、本日をもって、この国の民主主義は死んだ。
 だが、いま死んだ民主主義も、また生み出すことができる。
 最後の参院本会議で多くの野党議員が述べていたように、ここから本当の戦いがはじまるのである。立憲主義、民主主義、平和主義を取り戻すための戦いだ。反対運動を続ける団体・個人の多くは、運動をやめるつもりはまったくない。むしろ、ここからだといっている。ここから、新しい戦いがはじまる、と。その戦いによって、新たに民主主義を生み出すことができる。
 いや--実際のところ、それはもう生まれつつある。それは、この日本の全国各地で、いま産声をあげているのではないか? この声を絶やさぬようにしていけば、新しい民主主義は、可能だ。国会議員も、学者も、学生も、ママたちも、その他多くの人たちも、新しい日本にむけて、手をたずさえてともにここから歩んでいこう。

安保法案審議、いよいよ最終局面へ

2015-09-16 20:29:04 | 政治・経済
 いよいよ安保法案をめぐる攻防も大詰めをむかえている。今日、採決の前提となる地方公聴会が行われ、ただちに参院の委員会採決・本会議での可決・成立という流れを政府与党は狙っている。
 しかし、そんななかでも反対派は、まったくあきらめていない。
 天神では、昨日に続き、今日もまた抗議集会・デモが行われた。

 今回は、福岡の地方議会議員らも駆けつた。



 いま、「自治体議員立憲ネットワーク」というものが存在していて、各地の地方自治体議員が連帯して安倍政権の解釈改憲というやり方に異論を唱えている。このネットワークの公式ツイッターでは、《これまでの安倍政権の様々な政策は立憲主義の否定であり、私たちは、これまでの「護憲」対「改憲」という構図から、近代立憲主義に基づく「立憲」と立憲主義自体を否定する(壊す)「壊憲」という対立軸が鮮明になってきたと考えます》と安倍政権を批判しているが、まさにその通りであろう。全国の数百の自治体で安保法案に反対、あるいは慎重審議を求める意見書などが採択されているが、一般市民の生活に近いところにいる地方議会の声こそ、真に国民の声を反映しているのだ。



 この集会は、明日、明後日と四日連続で行われることになっている。またこのブログで何度か紹介してきた学生団体FYMも、今週の金曜・土曜に行動を予定している。国会の動きはまだ予断を許さないが、最後の最後まで、あらんかぎり抵抗の意思を示すことが重要だ。私はここで福岡の情報を紹介しているが、全国各地で同じような抗議活動は行われている。それぞれに、SNSなどで拡散させて、できうるかぎり抗議の声を大きくしていこう。
 そして、仮に法案が可決・成立したとしても、それで終わらせてはいけない。ただちに、安部政権の暴走を止めるために、来夏の参院選に向けた活動に移行しなければならない。いま集会やデモに出ている人たちにはその準備はもうできていると思うが、とにかく今は、安保法案を廃案に追い込むかすかな可能性に賭けて、声を上げ続けよう。

ありがとう、安倍晋三。そして、さようならー―0913九州一斉行動

2015-09-13 20:46:30 | 政治・経済
 9月13日九州一斉行動として、九州各地の学生団体が安保法案に反対する行動を起こした。
 福岡のFYMと北九州のFYMkita9、熊本のWDW、長崎のN-DOVE、宮崎のSUL、鹿児島のLINKが、同時に集会・デモを行った。

 このうち、FYMの集会は天神の警固公園で行われた。



 参加したのは、主催者発表で521人。
 FYM主催の集会としては、これまでで最大規模である。しかし、私は実際に集会に参加した人数はもっと多いと思う。前にも書いたが、主催者発表人数というのはデモで数えた人数だろう。こうして端数まで出しているということは、おそらくデモで行進しているところをカウントしたのではないかと推測する。だが、私の見たところ、集会に参加していた人でデモには加わっていないという人もかなりいる。だから、実際にこの抗議集会に集まった人はもっと多いと思われるのである。

 いよいよ、今週中にも政府与党は安保法案の可決・成立を目指している。
 これで安保法案が可決・成立されれば、時間が経つにつれて国民の反対の声も薄れていくと彼らは考えているかもしれない。
 だが、はっきりいっておきたい。
 それは考えが甘い。

 今回、デモ後にスピーチした「ママの会」は10月下旬の抗議行動について告知していたし、FYMのメンバーもまた、たとえ強行採決で法案が可決成立したとしても「この行動はやめません」とはっきり明言している。また、今日、名古屋で行われた集会でも、10月の行動の告知が行われたそうだ。
 このように、安倍政権への抗議行動は、すでに安保法案成立後のことも見据えて行動しているのである。
 先のFYMのメンバーは、スピーチのなかで「このカルチャーを一過性のもので終わらせたくない」と語り、「これが民主主義ですよね?」と参加者らに問いかけた。聴衆が大きな拍手と喝采でそれに応えたことはいうまでもない。この国における新しい政治参加のかたちは、いま種がまかれ、芽を出し、根をはりはじめているところなのである。
 これはFYMの複数のメンバーが語っていたことだが、安倍晋三の横暴は、これまで政治に無関心だった若者たちのなかにも「このままじゃヤバい」「自分たちで考えて行動しないと世の中がおかしくなる」という意識を持たせた。そういう意味で、安倍総理は「最低で最悪だけど最高」な総理であり、「安倍さん、ありがとう」という言葉さえ出てきたのだった。
 まさにそのとおりで、安倍政権のゴーマンがあったればこそ、私たちは9条を中心として憲法の大切さを再認識し、立憲主義・民主主義の重要性を理解し、それらを守るために立ち上がる勇気を持ったのだ。そういうわけで、私もまた、ここでいっておきたい。ありがとう、安倍晋三。そして、さようなら。さっさと総理を辞めて、もう二度と戻ってくるなよ――と。

 さて、そこで今後このことである。
 先述のとおり、たとえ安保法案が可決成立しても、その後も反安倍運動は継続していくだろう。安倍政権の進める政策には、安保法案以外にも、国民の多くが反対しているものが少なくない。強行採決で支持率を低下させたうえ、頼みの綱の経済もうまくいかない状態で、原発再稼働、辺野古移設など国民の間で反対の根強い政策を進めていけば、「アベ政治を許さない」行動はますます燃え盛り、来夏の参院選で炸裂することになる。参院選は、衆院選のようなトリックが働かないために、国民の支持を失えば過半数維持は難しくなる。実際、安倍総理にとって参院選は鬼門で、幹事長として臨んだ2004年、総理として臨んだ2007年の参院選で惨敗している。いずれも、あれこれと言い訳して未練たらしくしがみついたあげくに結局は辞任に追い込まれており、次の参院選でもそうなる可能性は低くないのだ。

 いま、与党内部では、衆院側と参院側が、互いに「お前のところで採決しろ」と“強行採決の押し付け合い”をしているのだという。
 ばかげた話である。どっちにしたところで、このまま強行路線を突き進めば、いずれ針のむしろ状態で選挙に臨まなければならなくなるのだ。また――これは以前にも書いたことだが――仮に選挙をなんとか乗り切れたとしても、安保関連法案が将来最高裁で違憲という判断をくだされる可能性があるということも忘れてはならない。そうなれば、この法案成立に費やしたエネルギーはすべて無駄になり、そのうえ自公は「国民の反対を押し切って違憲の法案を通した」という汚名を着ることになる。そういう意味では、いま安保法案を通すことは、数年後に爆発する時限爆弾を抱え込むようなものなのだ。
 こうしたことを考えれば、なにが一番得策かは中学生でもわかることである。今からでも遅くないから、自公の議員らは安保法案を撤回したほうがいい。