タイで子連れ狼

何の因果か運命か、異国の地にて親父単独で二人の子を育てることに。

さあ大変の、てんやわんや育児&生活日記

昔話、おもいっきりタイ人から騙された想い出 その⑤

2016-03-26 11:18:31 | 日記
少し時計の針を戻してみよう。

今から25年~15年前の日本の地方なんてのは、バブルが弾けた余波が残るとはいえ、まだまだ金銭的に豊かで、財布の紐がゆるい人たちが多かった。
海外の民族的な商品が珍しくて、それに円高という追い風も影響して、何かを海外で購入して持って帰れさえすれば大概は売れた時代である。

売れないモノがあったとしても、値段を落としてゆけばいつかは売れるわけで、仕入れの失敗は単なるデーター取りと言っちゃえばいいほど気楽だった。

販売に定価なんて関係ない、テキトーに値付けをして半額と書いとけば飛ぶように売れるので在庫が増える心配もない。

特にチャトチャックマーケットや北タイのハンディークラフト商品はドル箱だった。

こんなボロい商売はなかった、後は販売チャンネルを増やすだけでいいのだから。



ホコ天が大流行り、少額資金でひと山当てろ!?


まあしかし、そんなウマい話なんてのは長く続くはずもなし。

雨後の竹の子のごとく増殖するする同業者にマーケットを浸食されはじめてからは、販売は頭打ち。

フリーマーケットなんかで原価の2倍程度で安売りする学生が増えてきて、やりにくいことこの上ない。

ヒッピー風の学生や運動家風のシロートさんは店舗もなければ従業員もいないわけで、基本運転経費はゼロ。
「次回の旅費が出ればいいや」程度の値付けで同じ商品を売ってくるから困ったもんだ。




また、関西周辺から進出してくる安売り業者なんてのは、定価からウチの半値に設定してくるわけで、その手口のエグさときたら、明らかに地元業者を駆逐する目算が感じられた。

駆逐した後は平然と支店を鎮座させて、さも「ウチが業界大手です」と老舗になりすます話は多かった。

攻めてくる外敵を迎え撃つ地元組は脆弱、大きな競争に晒されたこともない。

団結して向かい打つような試みもなく、個別に撃破されては消えていった。

もちろん地元組の中には大都市東京まで切り込んでいき、或いはイオンモールなどに店舗を出すといった巨額の投資に踏み切り、自らが大手となる道を選びサバイバルを模索する業者もあるにはあった。

それができる会社はほんの一握り、もともと土建屋や飲食業などの本業で成功している会社、つまり資本力がある業者に限られていたのだ。







翻って我が個人商店であるが、アイデア頼みで首の皮一枚、資本力など欠片もない。

それでも消滅するのを指をくわえて見ているほどの無策でもない。

「他社が資本力にモノを言わせた安売り合戦ならば、こちらは逆にオリジナルな高額商品を開発する」

そう思った私は、利益率の低い雑貨類から、なるべく毎年買い替え需要があり、しかも単価の張る商品に少ない資本を集中することにした。




そうこうするうちに、私の大嫌いだった業界、軽く浮いた感が漂うファッション業界とやらへの進出を余儀なくされる。

もともと趣味で母と叔母が創作服を作っていて、ギャラリーやデパートの即売会で販売していたので下地がないわけではない。

東京から都落ちして、無職だった私が初めに手伝った業態もこれだった。



写真は現在のバンコク、スクムヴィット通りの新しいデパートEmQuartierから


当時のバンコクには「ナライパン」という土産物デパートがあって、そこで幅広い商品群を物色しながらパトナムやチャトチャックといった仕入れのメッカで商品を調達していた。

そんな場所でオーダーしたりすると、とんでもないクオリティーの商品が、とんでもない時期に送られてくることは珍しくなく、しかもオーダーしてない別商品だったりするからのけ反りも派手になる。

そんなことだから、どうしても店頭に重ねられている商品から程度の良いものを選んで買い進んでゆくスタイルになってしまうのであるが、店頭に置いてある商品は返品くらった欠陥商品ばかりってことも珍しくなく、
そんな笑えない包囲網を潜る努力は何処にでも用意されていた。

既製品を仕入れて日本に持ち帰り検品してみると、最低でも三割の商品は売れるレベルに届かない低品質なモノが混じり込んでいて、返品したいが税金上持って行けない輸入業者なりの頭痛のネタは多かった。

もちろん衣料品なんてのもトンでも品が多くて、どうしてもデパートなどで並べるような高額商品とはなりえないものばかり。

たまに有るとすれば、思いっきりハイソ系に振った高級シルク衣料で値段もとびっきり、日本とどっちがどっち?っていう金額だ。

デザインだって、タイの上流階級が好みそうなヒラヒラしたモノや、ラメがギラギラ入ったドギツイ色合いとなるので日本マーケットには合っていない。




「その辺りに隙間アリ」と考えた我々は、早速企画をたて、タイの小さな縫製工場を数軒選別し、小ロットから生産を開始した。

できた商品は、今までの既製品を拾い買いしていたものに比べて品質も良く、事業の根幹を成す商品ラインへと育てていくに十分な手応えを感じていた。




それでも、やはり幸運は長続きしない。

なにせタイは知的所有権といった文明社会の常識など通用しないコピー天国。

アイデアやデザインの横流しは日常茶飯事である。




少し詳しく説明すれば、ある業者が持ち込んだアイデアを、「しめしめ」と、「こんなのもウチでは作れますよ」と、他の業者に持ち掛けては仕事を得るような業態なので、結果的に同業者は同じような商品をそろえることになってしまう。

販売される場所がタイ国内であれ、また日本のような外国であれ、消費者としては同じ商品ならば安い方が良いに決まっている訳だからして、いつのまにか薄利多売の値段競争に晒される。




我々輸入販売業者ができることといえば、なるべくマーケットを拡大して数のメリットを生かす事。

組み合わせの妙で、客の目線をかく乱して魅了する事。

怒涛の販売力で、強引に売り上げを伸ばす事。

または、他社が持ちえないオリジナルな商品構成にすること、それくらいであろう。



変なTシャツはタイ人ユーモアの結晶、日本語をモチーフに使っている





ある時、先月オーダーした新しいデザインの商品がまだ入荷もしてないってのに、驚くべき事に、同業他社がすでに店頭販売してたことがある。

偶然イベントで横並びになったために発覚したのであるが、
「こ、これってワシのデザインやん!、なんでお宅が販売してんの?」、とも言えずに、
ガンガン売れる我が商品を横目に地団太を踏んだものだ。


その月末には渡タイして、「一言いってやらないと気が済まない」と商品を受け取りに生産工場へ向かったところ、「あの商品、まだできてませんね」という返事にのけぞった。




よく見ると、その商品が店頭サンプルで並んでたりするし。

「この商品じゃん、ここにあるじゃないよ!」と指摘したところで、眉一つ動かさずに惚け通すことはお手のもの。

「ああ、これね、どうしますかな? こちらはキャンセルしても大丈夫アルよ」
寛容を演出した慇懃無礼な物言いに、一言の苦情も受け付けないという態度が窺える。

それ以上追求したところで「文句言うんだったら他の店に行けばいいじゃん」と、「あんただってウチの商品からパクッてるだろ?、お互い様じゃん!」いわんばかりに奥に引っ込んでしまうだけなので、文句を言える状態でもなかった。




この私のオリジナル商品を横取りした大阪船場系の業者、大量買いの現金払いにモノを言わせて横取りしたことは容易に想像できる。
ライバルの商品だと分かれば、喜々として高値でも買うはずだ。

このように、販売力、つまり購買力に勝る業者にアイデアが集まってゆく流れを塞き止める事は不可能である。

なにせ、生産セクションが簡単に「現金ポン」になびくのだから。

ゆえに業界内では「現金が最強」なんて云われていたのだろう。





ちなみに、今から10年以上前に私が持ってきたアイデア雑貨たちは、少し形を変えて、未だにバンコクやチェンマイの何処の土産物屋でも販売されている。

もちろん、日本のあちらこちらの観光地や問屋街でも売られている。

私が販売した量の数千倍、数万倍の量を生産販売しては、タイ人の生活の糧になってきた商品たち。

誰からも感謝はされないが、その商品を見るたびにイラッとくると同時に、少し誇らしげな気持ちになる時がある。

このような数限りない関係者たちのアイデア、歴史が結集して出来上がっているのが現在の陳列される商品群なのであるが、タイ人の手が加わると、なぜか的を外れた商品となるのはご愛敬。






そういうことで話は戻るが、大手に飲み込まれたり踏みつぶされたりして消えてゆくのも嫌だったし、だからといって、これといったひらめきや打開策がある訳もなし。

「なんとかせねば」と焦りながらも日々の業務に埋没していた時に、あの日本語の堪能な若夫婦と出会う事となった。




お互いの知識や経験がスパークして、新しい商売形態が生み出せる。

「もう失礼千万な横流し生産者たちに頭を下げて注文する必要もなく、堂々とアイデアを持ち込んで独自の高額商品を開発できる」と、生き残りに一筋の光明を見出せていた。 




ところが、この若夫婦に翻弄され、いいように操られてキャッシュマシーンと化してしまうのであるから人生は一筋縄ではいかない。 




いままで知らなかった真実の世界

綺麗事の通じない、人間の欲望と弱さを嫌というほど見せつけられる旅の始まりだ。                                                      

                                              つづくはず

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