キイタンとちょっとした親子ゲンカ
木曜日、昼休みが終わって会社へと戻る途中でツキさんに出会いました。
ツキさん、とても大きくて嬉しそうな声を上げて近寄って来ましたが、
家に一緒に戻って、ごはんをあげる時間の余裕がもうありませんでした。
ツキさんには「時間がないから、また帰る頃に来てね。」
と謝って、その場を去りました。
ツキさんの母親と別れた時の事を思い出して、
また同じ事をしてしまったのかもしれない。
と思いました。
今度はツキさんと、小雨の中での最後のお別れに
なってしまうかもしれないと思ってしまいました。
ツキさんの母親は「昼休みにまた来てね。」
と言ったのに、姿を現さずにそのまま行方不明になりました。
キジさんにも「家に残りなさい。」と言ったのに、
去年の10月の30日に遊びに出たまま、二度と帰りませんでした。
そういう事もあって、
「猫は言い聞かせても分らないのでは?」
と思うようになっていたのです。
会社が終わって、家の側まで来た時に、
ツキさんの名前を呼んでみました。
そしたら、嬉しそうな鳴き声が聞こえて来て、
ぴちぴちと魚が飛び跳ねるような勢いで、
ツキさんが薄暗闇の中、
背の低い植え込みの陰から飛び出して来たのでした。
もしかしたらここで待っていれば、
帰って来る私と確実に会えると思ったの?
「あんたって、ちゃんと私の話が分ってんだね!」
と私はツキさんに言いました。