WOWOWライブで2020.9.17(木)放送の舞台 地球ゴージャスプロデュース公演Vol.15『ZEROTOPIA』を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【番組の詳細】
岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット「地球ゴージャス」の2018年公演。柚希礼音、西川貴教、新田真剣佑ら豪華俳優陣が集結。今回はWキャストの宮澤佐江の回を放送。
【ストーリー】
大き豪華客船が沈んだ…。生き残った人間達が辿り着いたその島は、地図にない、色彩もない島だった。
大き豪華客船が沈んだ…。生き残った人間達が辿り着いたその島は、地図にない、色彩もない島だった。
打ち上げられた男女数名はそれぞれ心の奥底に、過去に体験した地獄に対する怒りや憎悪を秘めていた。罪を隠す女、恨みを隠す男、悲しみを隠す男、狂気を隠す女、何も隠さない男、そして企みを隠す男。
ひとつひとつ剥き出しになっていく彼らの隠された過去。そして彼らは知る。客船は沈没したのではなく、沈没させられ、この島に流れ着かされたのだと…。色を失った地図にない島に…。
ひとつひとつ剥き出しになっていく彼らの隠された過去。そして彼らは知る。客船は沈没したのではなく、沈没させられ、この島に流れ着かされたのだと…。色を失った地図にない島に…。
彼らは何故集められたのか?心の奥底に巣食う闇を抱えて生きてきた彼らに、魔の手が近づく…。
【感想】
美術はとてもシンプル、見上げる断崖絶壁と海岸。岩肌に絡みつくように生長した大木の根。時折、聞こえる波の音。転換はほとんどない。
オープニング。背景に白い布、プロジェクションマッピングで蛍光グリーン、ブルー、赤の光が波打つように映し出される。西川貴教の歌唱とバックダンサーが踊っている。ここから物語が始まる。
地図にない、花も咲かず色彩のない島に流れ着いた彼らは、次第に交流して助け合って暮らしていく。彼らの命を繋ぐのは、客船に残された食料と島にふんだんにあるヤシの実だ。実はこのヤシの実は恐ろしい陰謀の鍵だった。
ドラキュラのような姿の謎の男(ヒュー)が現れ、彼らを過去の世界へ誘い、心を揺さぶる。忘れようとしていた、封印していた過去を掘り起こしていく。
ジュンに言う言葉が残酷だ…。「捨てきれなかった夢と残酷な現実。苛立ちがつのる」と。辛いな…。
彼らは過去に地獄を見てきて心に闇を抱え、心に開かずの扉が生まれた。この扉をこじ開けさせたのは、ヤシの実に含まれる脳に作用する化学物質だった。悲しみは憎悪に、そして怒りへと変容する。これこそがヒューの狙い。実験の最終段階だ。
ただ、ワンだけは全く効かない。彼には辛い過去がない。楽しく生きてきたから。ワンはヤシの実を捨て、皆の呪縛を解く。
この島は最新の化学兵器工場の島だった。人の心の怒りを抽出して、最新の化学兵器を製造する計画を実行している。
怒りを抽出されると感情がなくなる。人に危害を加えることのない無害な生きものになる。「平和的正義」の名のもとに。誰のため?それはもう人間ではない。
怒りを爆発させヒューたちと戦うロマン。ここで伏線が回収される。オープニングのシーンはここだったのだ。
地球が怒り色彩をなくしたと言うヒュー。ヒューは人類は地球にとってテロリスト、人類にとってヒューはテロリスト。ヒューは全てを“ゼロ”にする“ゼロトピア”を目指していた。
戦いはヒューたちの敗北で終焉を迎える。怒り、憎しみから許すへ、そして“ゼロトピア”を“ユートピア”へと変えていくのだ。
絶望から希望に向かっていくラスト。胸が熱くなった…。
今回も歌唱とダンスのシーンが多く、エンターテイメントとして魅せる舞台。特に、柚希礼音のキレのある魅せるダンスと歌唱は素敵だった。
【余談】
>人に危害を加えることのない無害な生きものになる。「平和的正義」の名のもとに。誰のため?それはもう人間ではない。
佐藤史生の漫画『ワン・ゼロ』を思い出した。コンピューター制御の曼荼羅が人類をカルマから解き放つ装置として登場する。「無害な草を喰む羊たち。それは誰のため?」と疑問を抱き、神と魔の戦いに加わる高校生たちの話。
>ヒューは人類は地球にとってテロリスト、人類にとってヒューはテロリスト。ヒューは全てを“ゼロ”にする“ゼロトピア”を目指していた。
ドラマと映画にもなった『スペック』を思い出した。ガイアの存在と思惑が根底にある話。
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