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『明治座の変~麒麟にの・る』〈第一部〉ストーリーと感想

2020-01-04 15:19:48 | 劇場・多目的ホール
明治座にて『明治座の変~麒麟にの・る』12月30日(月)昼の部を観劇してきました。今作で9作品目となる、る・ひまわり制作の年末お祭り舞台です。
第一部はお芝居、第二部はショーの二部構成で、今年の第二部は「3.5次元舞台-LMS歌謡祭-」と銘打っております。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
※画像はる・ひまわり公式サイトからお借りしました。








【演出】
原田優一 


【脚本】
赤澤ムック


【出演】 
平野良(W主演)、安西慎太郎(W主演)
神永圭佑、木ノ本嶺浩、大山真志
井阪郁巳、松田岳、小早川俊輔、吉村駿作、土屋神葉
林剛史、谷戸亮太、川隅美慎、二瓶拓也、井深克彦、中村龍介
加藤啓、内藤大希(Wキャスト)・原田優一(Wキャスト)、椿鬼奴
辻本祐樹、粟根まこと、凰稀かなめ(特別出演)


【日替わりゲスト】
多和田任益、佐藤貴史、佐奈宏紀、永田崇人、永田聖一朗、近藤頌利、杉江大志、山崎大輝


【ストーリー】
「この世に名君現るとき、麒麟もまた現る」
時は戦国。武将たちが天下統一を目指して戦を繰り広げた戦乱の世。残虐非道な第六天魔王、織田信長は今日も今日とて戦に明け暮れていた。
一方。令和元年。動物好きで歴史オタクの青年が、動物園で突然“きりん”に突進される。青年が気が付くとそこは-戦国時代だった。何故か擬人化した“きりん”が言う。
「おめでとう。今日からお前は竹中半兵衛だ。」
更に“きりん”は言う。
「“きりん”は織田信長を探しています。あ!見つけた信長!」
話を聞かない“きりん”が再び突進したその先にいたのは、明智光秀と名乗る武将だった。
「何故、明智光秀は織田信長を討ったのか」トンデモ設定で繰り広げる本能寺の変。


【相関図】



【感想】
今まで観てきたる・ひまわりの作品の中で、一番お芝居も劇中歌もしっかりとしていて見応えがありよかったと思う。
プロジェクションマッピングを多用した美しい美術、明治座の機構を目一杯使い、盆やセリ、ワイヤー宙吊りのフライイングなど、派手でワクワクする仕掛けがてんこ盛り♪

なんといっても、赤澤ムックさんの脚本がよい!キャストたちにあて書きした繊細で幾重にも折り重なったストーリー。
それらを後半きっちりと伏線を回収し、美しくも哀しいラストに仕上がっている。
(滝口幸広が急逝されたため、あて書きはそのままで代役の大山真志が浅井長政役を演じた。)
原田優一の演出も緻密で繊細、それでいて明治座の機構を目一杯使ったりと大胆。ご本人も俳優であるので、俳優の生理や心理がよくわかるのだろうと思う。

ストーリーの主軸は戦国時代の武家に生まれ、時代に翻弄された織田家の兄弟二人のお話。
織田家の長男として生まれ、美濃の斎藤道三の娘、帰蝶を正室に迎えながら、弟の信行のほうが跡取りにふさわしいと出奔、のたれ死に寸前のところを明智光秀に拾われ、体の弱い光秀に代わって影武者を演じることになった信長。
一方、弟の信行は子供の頃から星が好きで天文学者を夢見ていたのに、織田家と帰蝶を残され、兄の代わりに信長と名乗り天下を目指すことになる。
二人とも南蛮渡りの甘いお菓子、金平糖が大好きで劇中に何度も登場する。
兄はよかれと思って弟に家督も妻も譲って出奔するのだが、それこそ弟には屈辱であり兄に対する憎しみを募らせることになった。夢を諦め、密かに慕っていた兄嫁の帰蝶を譲られたことに対する屈辱が相まって、冷酷無比な第六天魔王へと変貌していく。
弟は諦めた夢、欲しかった帰蝶の愛も得られず、屈折した想いをこじらせて冷酷になっていくさまは哀しい。

ストーリーテラーとして、粟根まこと演じる“おっちゃん”を称する紙芝居屋が出てくる。傍らには“おっちゃん”の語る話を聞き続ける、原田優一演じる徳川家康がいる。実はこの“おっちゃん”は生き延びた織田家の信長の弟、信行なのだ。
本能寺で平野良演じる兄の明智光秀こと信長は、明智家を裏切り安西慎太郎演じる信長こと信行の弟を庇って死にゆき、弟だけが傷を負いながらも生き延びていた。
織田家の家臣であった木下藤吉郎が豊臣秀吉と改名して天下人となり、更にその豊臣家が滅亡し、天下は徳川家へ渡っていったのを見てきた人。どんな想いを抱いて語り続けているのだろう。

兄弟で夜空を見上げ「あれが北極星」と指差し、ポリッ…と音を立てて金平糖をかじるラストシーン。哀しくて、でも美しくて。。
本当は二人とも天下など欲しくなかったし、戦などしたくなかったのだと思う。ただ、こうやって兄弟二人で夜空を仲良く見上げていたかっただけなのだろう。

オープニングアクトは毎年、キャスト全員が体育着や全身タイツだったりしてふざけ倒しているのだが、今年は“るひま航空”のパイロット姿で登場。山本リンダさんの『狙いうち』を踊り狂う。
今年も「頭おかしい、るひま」(ほめ言葉)は健在!

キャストの中で一番気になって好きだったのは、なんと加藤啓演じる神獣“きりん”。ダボッとしたキリンの気ぐるみを着て、頭には角のカチューシャ、お顔には髭をたくわえているのに可愛い♡天駆ける神獣のはずなのに、高所恐怖症で数段のステップすら怖くてプルプルしてる“きりん”。ひたすら「きりん!きりん!」と名前を言葉の替わりに連呼する“きりん”。
平野良曰く「頭のおかしい大人っているんだな~て思った。天才なんだと思う」と話されていたが、奇才、天才というのは合っていると思わざるを得ない。
なんだろう~頭をなでなでしたい♡トンデモ設定なうえ、こんなに見た目のギャップがあるのに可愛い神獣“きりん”なんて奇跡だ。

平野良演じる明智光秀は飄々として、嫌なことからはダッシュで逃げるへたれなのだが、その端々に弟想いの優しさが垣間見える。
彼はこの手の役がとても似合うと思う。軽いけどチャラくはない絶妙なバランス。

安西慎太郎演じる織田信長は感情があるのかないのか、ニコリともせず無機質で冷酷な織田信長そのもの。乾いた甲高い笑い声が怖い。
彼もこの手のサイコパスな役がとてもよく似合うと思う。

辻本祐樹演じる正親町天皇は双六のサイコロを振り、コマを動かすように人の運命を動かしていく、自分の手は汚さずに。サイコロを振るのも、退屈な日々の慰みくらいにしか思っていないさまが浮世離れしすぎて怖い。天皇の御位にあるがゆえ、自身の運命からは逃れられない諦念と哀しみを感じる。
彼は気品があり時代物の衣装がよく似合う。それでいて、なにを考えているのかわからない怖さを奥底にもっているのが魅力的。

椿鬼奴演じる帰蝶は茶髪のソバージュで元ヤン感満載で、家臣たちからは「姉御!」と呼ばれている。さすが“蝮”の娘だけのことはある。
彼女のお芝居は初めて観たが、自然でよかったと思う。

凰稀かなめ演じるお市は大河ドラマから抜け出てきたような出で立ち、立ち姿も所作も美しい。宝塚出身の方は本当に立ち姿が美しく華がある。
浅井長政の正室のときは可愛らしく、兄の織田信長に夫を殺されたとき、哀しみに暮れながらも従順に兄に従い柴田勝家に嫁いでいくところとか、その時々で感情が手に取るように感じられた。
トンデモ設定の舞台でシリアスシーンを担っていて、作品がぴしっと締まっていた。

井深克彦演じる明智熙子はヒロイン役。今回もかわいい♡
キャスト発表の動画で演出の原田優一が言ってらした「井深、可愛くあれ!」は達成できた模様。

中村龍介演じる飼育員田村さんは、淡々と“きりん”を扱ってストーリーを進める。実は神様。
「“きりん”が役目を終えて死んでしまっても、また次の“きりん”が現れる」とさらりと言ってのけるのも怖いといえば怖い。
彼はごつい印象があるが顔立ちは綺麗な女性顔をしているので、水干のような白い衣装がよく似合う。もっと出番が欲しかったな~。

井阪郁巳演じる竹中半兵衛は現代のオタクな理系男子。なんでもありのトンデモ設定なので、戦国時代なのにロボットや携帯、ルンバも出てきて大活躍!ある意味、登場人物の中で一番まともかもしれない。人の役に立てて嬉しいオタク理系男子を好演されていた。

土屋神葉と吉村駿作演じる森丸と森蘭の双子の女の子は、男性なので背も高いし体つきもごついのだが、おかっぱと真っ赤な着物を着てはしゃぐ姿がかわいい♡


【余談】
本作で浅井長政役を演じることになっていた滝口幸広が、11月13日に急逝された。ビジュアル撮影やユニットPV撮影も終わっていて、稽古に入る直前のこと…。
急遽、大山真志が代役にたち、無事に舞台は開幕し、31日のカウントダウン公演をもって閉幕を迎えた。
いろいろと思うところはあるのだけど。。舞台はとにかく目一杯楽しんできた。
滝口幸広のことは、また改めて記事にしたいと思う。


長くなるので次の記事に続きます。→ 「『明治座の変~麒麟にの・る』〈第二部〉感想」


















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