不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

息子が好きだった先生(3)

2018-03-07 08:16:41 | 日記
息子が友達にお金を取られた顛末を聞くと、息子が好きだった先生は、
「ユウトがやるわけない」
と一言で決めつけました。

たとえ内心思ったとしても、わざわざ保護者が相談に訪れているというのに、根拠もなく否定するなんて。
いい先生だと思っていたのに、この先生も息子の味方ではなかった……。
ヨシノ先生に抱いていた信頼はもろくも崩れてしまいました。

「外面のいい子なんですよ!」
ショックと悔しさで、思わず語調が強くなりました。
ヨシノ先生もエノモト相談員も戸惑ったように顔を見合わせています。

「それで、お母さんとしては、どういう対応をお望みなんでしょうか」

改まって聞かれ、私はグッと詰まりました。何かの対応を望んでここまで来たわけではありません。
ご近所との関係もあるし、証拠もないし、お金も返してくれたようだから、事を荒立てたくはありませんでした。
ただ、このやり場のない悔しい気持ちを聞いてほしかったのです。

「校長に言ってみますか?」

実は今日ここに来る前に、お金を取られたことを学校には言わないでほしいと息子に言われていました。

「適応指導教室は学校とは別の組織だから、頼めば秘密は守ってくれるって」
と息子を説き伏せて、ここまで来たのでした。

「いや……いいです」

「担任から、ユウトとショウタに指導させましょうか」

それも結局学校に言うことになってしまいます。
そもそも証拠もないし、ユウト君がそんなことをするはずがないと、きっと担任も思うでしょう。
息子のいない欠席裁判で、口のうまいユウト君がしっぽをつかませるようなマネをするでしょうか。

「いいえ、結構です」
と言うと、ヨシノ先生はホッとしたような表情を浮かべました。

かわいいユウト君を追い詰めずに済んでうれしいのでしょう。
または私か息子のことを嘘つきだと思ったのかもしれません。

先生たちは、結局、学校に来ている子がかわいいのです。
学校に来ていない子は、なんとかしてまた来させるか、来ないならせめて問題を起こさずにおとなしくしていてほしいのです。
「ユウトはやってない」というのは、今思えば、ポロっと出た失言にすぎなかったのだろうとは思いますが、
それだけに本音のにじんだ言葉でした。

別れ際にヨシノ先生は機嫌を取るように笑いながらこう言いました。
「ご主人に、PTAでご一緒させていただいて、すごく楽しかったとお伝えください」

夫は小学校のPTA会長だったのです。だけどなんで今PTAの話を?
夫とは親しかったのだから、少しくらいの失言は大目に見ろということでしょうか。
私は余計にげっそりしてセンターを後にしました。