不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

何?この無駄モテ期

2019-06-25 10:25:20 | 日記
実は私は8年ほど前にも、若い男に思われてさんざんな目に遭ったことがあります。

相手は子供にスポーツを教えてくれるボランティアの大学生でした。
子供がらみだったので、ママ友にも疑われておおいに面目を失いました。
まあもともと私に面目なんてあるかないかわかりませんが。

その時も心の中で好きだっただけで実際には何もなかったので、噂だけで済みましたが、
失恋と恥のダブルパンチでかなりダメージを負いました。

(もう恋なんてしない)とその時誓ったのに……。

もう生理も上がっちゃったし、今さらモテたくなんかないのに、何この無駄モテ期。

私は愛情に関して意地汚いところがあります。
夫がいるのに、愛してくれる男がいると、手放すのが惜しくなってしまうのです。
子供の頃から周囲の大人の愛が姉に集中していたせいでしょうか。

私の場合寂しさは性欲と直結しており、友達では埋められないようです。
私が若く見えるのは恋愛体質のせいかもしれません。

休憩に行くため現場の鉄扉を押し開けて廊下に出ると、
ちょうど正面の総務部からMさんが出てくるのが見えました。

総務の受付の女性と何か話しながら歩いてきます。
朝も会ったのに、今日は2度も顔が見られてラッキー。

「クリスマスの物量なんか聞いてどうするの?」
「いや、ちょっと……」
Mさんはごまかして笑っています。

このタイミングで3階に来れば私に会えると思って、どうでもいい質問をしに来たのでしょう。

隣に立ってエレベータを待ちながら、無関心を装いつつも私はほんの少し彼のほうに視線を動かしました。
その途端、談笑していた彼が私のほうに向きなおりそうになって、
とっさに踏みとどまったのが分かりました。

私のこんなかすかな視線の動きにも、Mさんは全神経を集中しているのです。

かわいいなあ。

こんなオバサンのことを一生懸命追いかけて、バカだな……と思いつつ、いとおしさがつのります。
ああ、どうしよう!好きになればなるほど、つらい思いをすることは分かり切っているのに……。

(まだ大丈夫。まだズタズタになるほどのめり込んでない)
久々の恋の喜びに浸りながらも、まだ引き返せるかどうか自分で自分の気持ちを確かめる日々でした。

その翌日から、突然Mさんは私の前に現れなくなりました。

疲れたオジサンは恋バナで盛り上がる

2019-06-18 08:18:42 | 日記
私がMさんから逃げ回っているのが彼の友達には面白くないようで、休憩などで会うと冷たい目で睨まれることもあります。

友達と言ってもみんなMさんより年上で、社員さんもいるし、そのうちの1人は補充部門の副統括という偉い人なのです。
オジサンたちにとっては若いMさんのいちずな恋愛が眩しく、思わず応援したくなるのかもしれません。
それだけの魅力がMさんにあるのも事実です。

または、きつく無味乾燥な倉庫での労働に疲れたオジサンたちの心に、初々しいMさんの恋バナが潤いを与えるのかもしれません。

どっちにしても私には迷惑な話です。
私としては、年下の男との浮いたうわさなどで、職場で悪目立ちするわけにはいかないのです。そもそも既婚だし。
追っかけられれば追っかけられるほど無関心を装わざるを得ません。

(なんで?私、あの男の愛を受け入れなきゃダメ?その結果私がどんな運命をたどるか考えたことあるの?
離婚でもしたら誰か責任取ってくれる?ただ面白がって彼をあおってるだけのくせに……)

私は集団から圧力をかけられることが大嫌いなのです。こういうところはヒキコモリの息子とそっくりです。

Mさんは黒シャツとはいえ派遣社員で何の権限もないので、私が何かというと2階の応援に呼ばれるのは、
彼を応援している連中の差し金ではないかと思われます。

正直言うと、応援はあまり好きではありません。

Mさんの顔を見られるのはうれしいけど……劇場型恋愛のMさんの派手なストーキングのせいで、
私は2階では有名らしく、周囲の視線が痛いのです。

そもそもブースにこもりきりで1人でできる梱包の仕事が、自閉的な私には向いているのです。
大勢の人とすれ違い、声を掛け合うピッキングや補充の仕事は、私にとって気疲れするものでした。

私のいら立ちは彼の友達に向かっていきました。

(大の大人が寄ってたかって職場で何やってんの?
そもそも私のこと何歳だと思ってる?
年齢はともかく結婚してることくらい、それだけの人脈があれば調べられるんじゃない?)

居心地の悪い日々が続きました。Mさんにとっては純愛でも、私にとっては浮気です。
私にとってこの恋は、苦しく後ろめたい恥ずかしい秘密でした。

結果的にMさんをだましたみたいな形になってしまっていることも、付き合えるはずもない若い男を
未練がましくつなぎ留めておくことも、その男をオカズに夜ごと激しい絶頂に達していることも……。

周囲には隠しておきたいけれど、彼にだけは私の気持ちを知ってほしいという気持ちはもちろんありました。
同時に、知られてはならない、知られたらどんどん踏み込まれてしまうという警戒心もありました。

その頃の私は少女のように恋する気持ちと、イカれたオバサンだと自分を冷めた目で見る気持の間を
行ったり来たりしていました。
彼があまりに魅力的で支配的なので、いざというとき自制できるという自信がこれっぽっちも持てないのです。

まるで魅惑的な男にどこまで近づけるかというチキンレース。
どハマりしたら負けなのに、恋の毒が全身に回ったようになって、どうしても逃れられずにいたのでした。


ヒキコモリの息子がキレる時

2019-06-13 12:01:19 | 日記
川崎で起きた20人殺傷事件から半月経ちました。

私にとってそれよりも衝撃的だったのは、その後に起きた元農林水産事務次官の長男刺殺事件です。

あくまで報道を通して聞きかじったことにすぎませんが、
ヒキコモリの息子さんが他人を傷つけたら困ると思い詰めての犯行だという噂です。

わかります。

こんなことを書いては不謹慎だということは重々承知ですが、親御さんの気持ちもわかります。

「他人様に迷惑をかけるな」
私が子供の時から耳にタコができるほど聞かされた言葉です。

私自身、「息子に幸せになってほしい」よりも、「他人に迷惑をかけないでほしい」気持ちが強いかもしれません。

(この子は将来どうなるのだろう。社会のお荷物になって、絶望して一生過ごすのだろうか。
そのくらいなら、いっそ2人で死んでしまおうか)
という思いが頭をよぎったことも一度や二度ではありません。

ヒキコモリの子を老齢の親が支えることを、8050問題というそうです。
私も息子もまだ若いですが、私が80になった時息子がまだ外に出られずにいたら……?

自分が親なのでどうしても親御さんに気持ちが寄り添いがちですが、息子さんの立場だったらどうでしょう。

息子さんは事件の少し前に親御さんの家に戻ってきたのだと言います。
自分の人生がうまくいかなくて、親御さんに甘えたかったのでしょうか……。

最近落ち着いている息子ですが、不登校を始めて間もない頃に一度キレたことがあります。

私と夫でゲームを取り上げようとした時に、手近にあった金属の棒を持って身構えたのです。
威嚇した拍子に棒が軽く夫の腕に当たりました。息子は泣きそうな顔をしていました。

(お父さん、お母さん、僕に暴力を振るわせないで)
そんな声が聞こえてくるようでした。

「やめよう」
と私が言うと、夫も息子も黙ってそれ以上の争いには発展しませんでした。

それ以外では息子はもっぱら自罰的で、拒食症やリストカットのように自分に対する攻撃に終始して、
親以外の他人に攻撃性が向けられることは一度もありませんでした。

つい先日も私の顔を見て(やれやれ)と言いたげにこんなことを言いました。
「(うちの親には)2人(の子育て)は無理だったんだよ」

あっそうですか、すいません。
わが身を削って少子化対策に貢献している私にこの言いぐさ。

けれど、ホント、他人を攻撃するくらいなら、親を攻撃してくれた方がいいのです。
まして言葉での攻撃なら、もういくら言ってくれても構いません。

「ありがとうございます、もっと言って!」
とすり寄っていったら、息子に変人を見るような目で見られました。

いや、変人はお前だから。

娘の性器いじり

2019-06-04 15:57:28 | 日記
小児性欲と言えば、娘が幼稚園の頃、寝転んで性器いじりをしているのを一度だけ見たことがあります。

私はドキリとしました。この子が私のようになったらどうしよう……。

けれどそれは杞憂で、娘のそんな姿を見たのはその時が最初で最後になりました。
自然に他のことに興味が移っていったのでしょう。
性器いじり自体は珍しいことではなく、むしろ過剰な罪悪感を持たされたことによる二次障害のほうが問題なのだと思います。

私は小学校に入学して間もない頃、クラスメイト達の前でマスターベーションを「実演」して見せたことがあります。
「こうすると気持ちいいんだよ」
と言って私は、机の角に自分の恥骨を当ててぐいぐいと押し付けて見せました。
そうして何度か押していると、子供ながらに軽く「イク」のです。

クラスメイト達は顔を見合わせると、押し黙って1人2人と私から離れていってしまいました。

(いいことを教えてあげたのに……)

私はあまり小さい頃の記憶がないほうなのですが、この記憶だけが鮮明なのは、ショックだったせいでしょう。
自分が「変な子」なんだと初めて意識した瞬間だったのだと思います。

その時私は、新しい友達を喜ばせたかったのでしょう。
そして友達は、そのことの意味も知らないまま、それが「変なこと」だと本能的に悟ったのでしょう。

思えば学校という社会生活の最初から、私はつまずいていたのです。

少し脱線しました。ストーカー王子の話に戻りましょう。

その日私は2階へ補充の応援に行っていました。

商品データをすべてコンピュータで管理するため、棚にナンバーが振られているのですが、
日常の物流業務の傍ら棚づくりを進めているため、まだナンバーの振られていない棚があります。

棚がいっぱいの時は新しい商品を補充することはできません。
商品が出荷されて、棚にスペースができていれば、新たにナンバーを振って新しい商品を補充することができます。

このナンバーを印刷したシールが棚札で、必要に応じて黒シャツさんに頼んで作ってもらいます。

私はコピー用紙を補充するスペースを探していました。
コピー用紙は縦置きするとたわんでしまうため、補充の際は平積みする必要があります。
普通サイズの引き出しには入りません。そのため数が少なくてもわりあいにスペースを取る商品なのです。

棚の隅にちょうどいいスペースを発見した私は、他の人に取られないうちにと急いで黒シャツさんを捜しました。

(うっ、Mさんだ!)
過剰商品置き場にいるMさんを見つけて、私は一瞬ひるみました。
恋をしてからというもの、Mさんに話しかけようとするとひどく緊張してしまうのです。
でも仕事だから仕方ありません。何度かためらったあと、私は意を決してMさんに近づきました。

「あの、Mさん!棚札作ってもらえませんか」
やっとのことでそう言った私の声は、まるで愛の告白でもするかのように上ずっていました。

Mさんもさっきから私が話しかけようとしていたのに気づいていたようです。
視線は上げたものの、チラッと私の顔を盗み見るのがやっとで、
「ああ」
とかすれた声で言うと隣にいたKさんのほうを目で示しました。

あ、Mさんが来てくれるんじゃないんだ。私はホッとしたのが半分、残念な気持ちが半分でKさんの方に向き直り、
「お願いします」
と言いました。

ああ恥ずかしかった!

しかしMさんまで何を恥ずかしがっているんでしょう。
スト-キングならあんなに大胆に、これ見よがしにやってのけるくせに……。