私は結局手術の同意書は夫に任せ、義母の入院している病院に行くことはありませんでした。
義母は退院したあとしばらくしてまた電話をかけてきました。今度は打って変わってはしゃいだ声でした。
「あんた、お米要らない?」
「いえ、お米ならあるので……」
心の中で警戒警報が鳴りました。
「ありがとうございます」と言って受け取ったら、次に差し出される善意もなしくずしに受け取らなければならなくなる。
怒鳴ったことも悪口を言いふらしたことも、お米でチャラにされてはたまりません。
お米なんか要らないから、謝ってほしいし、できれば伯母や、悪口を言いふらした人たちの誤解も解いてほしい。
もっとも、今さら誤解を解こうとしても無駄でしょう。
「本当はいい嫁なのよ」
などと言ってくれたところで、
「Hちゃんって、心が広いのねえ!」
と、義母の株が上がるだけです。
義父に帰ってきてほしいと言うのを聞いて、私が義母を尊敬したのと同じように……。
私がお米で釣られないので、義母はちょっとひるんだようでしたが、わざとらしい明るい口調でたたみかけてきました。
「お米ならいくらあってもいいでしょ、新米だよ、おいしいよ」
また詐欺師が送ってきたのでしょうか。それなら余計欲しくありません。
「いいえ、本当に、いいです」
「そんなこと言わないで、食べなさいよ」
「いいえ、いいので」
「遠慮しないで」
「アハハ……」
私は仕方なく笑いました。すると義母は、ようやく諦めたのか
「ああ、そうかい」
と怒った声で電話を切りました。
義母はそれからまたせっせと周囲に私の悪口を言いふらしたようで、
たまに電話をかけてくる親戚からも私は冷たい扱いを受けています。
かばってくれる親が私にいないため、何を言っても平気だと思っているのでしょう。
(いい人って、恐ろしいな)
私はつくづくそう思いました。
それきり私は義母に会っていません。
翌年息子が不登校になったため、よけいに会いに行けなくなりました。
息子が不登校だなどと知れば、私の欠点を血眼になって探している義母は、鬼の首でも取ったように喜んで
私の育て方が悪いと言いふらすでしょうから……。
義母は退院したあとしばらくしてまた電話をかけてきました。今度は打って変わってはしゃいだ声でした。
「あんた、お米要らない?」
「いえ、お米ならあるので……」
心の中で警戒警報が鳴りました。
「ありがとうございます」と言って受け取ったら、次に差し出される善意もなしくずしに受け取らなければならなくなる。
怒鳴ったことも悪口を言いふらしたことも、お米でチャラにされてはたまりません。
お米なんか要らないから、謝ってほしいし、できれば伯母や、悪口を言いふらした人たちの誤解も解いてほしい。
もっとも、今さら誤解を解こうとしても無駄でしょう。
「本当はいい嫁なのよ」
などと言ってくれたところで、
「Hちゃんって、心が広いのねえ!」
と、義母の株が上がるだけです。
義父に帰ってきてほしいと言うのを聞いて、私が義母を尊敬したのと同じように……。
私がお米で釣られないので、義母はちょっとひるんだようでしたが、わざとらしい明るい口調でたたみかけてきました。
「お米ならいくらあってもいいでしょ、新米だよ、おいしいよ」
また詐欺師が送ってきたのでしょうか。それなら余計欲しくありません。
「いいえ、本当に、いいです」
「そんなこと言わないで、食べなさいよ」
「いいえ、いいので」
「遠慮しないで」
「アハハ……」
私は仕方なく笑いました。すると義母は、ようやく諦めたのか
「ああ、そうかい」
と怒った声で電話を切りました。
義母はそれからまたせっせと周囲に私の悪口を言いふらしたようで、
たまに電話をかけてくる親戚からも私は冷たい扱いを受けています。
かばってくれる親が私にいないため、何を言っても平気だと思っているのでしょう。
(いい人って、恐ろしいな)
私はつくづくそう思いました。
それきり私は義母に会っていません。
翌年息子が不登校になったため、よけいに会いに行けなくなりました。
息子が不登校だなどと知れば、私の欠点を血眼になって探している義母は、鬼の首でも取ったように喜んで
私の育て方が悪いと言いふらすでしょうから……。