不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

夫が俄然協力的になった理由

2018-04-25 07:53:07 | 日記
私は不登校新聞を購読しています。当事者の書いた記事が多く、とても面白い新聞です。

ただ気になるのは、母親が書いた記事の中には、父親について触れられていないものが
少なからずあるということです(個人的な感想です)。

もしかしてシングルマザー?と思っていると、義母の話が出てきたりして、やっぱり旦那さんがいるらしい。
世間の目だけでなく母親自身も、育児の責任を一人で負いすぎているような気がします。

うちの息子はおとなしい性格ですが、パソコンを取り上げようとした時、
一度だけ夫を殴ろうとしたことがあります。

それ以来夫は息子を恐れて自分からは近づかず、機嫌がよくて居間に下りてきた時しか相手をしませんでした。
当時中学2年生だった息子は夫より30センチも背が低く、体つきもひょろひょろでした。
そんな息子の怒りさえ、夫は受け止めるのを避けたのです。

もうちょっと、子供と向き合ってくれてもいいのに……。
まるで家庭を顧みない言い訳に外で活躍しているかのようです。

そんな夫が俄然協力的になったのは、不登校のストレスによる私の体調不良がきっかけでした。
と言っても夫は、私を気遣ってくれたわけではありません。

その日私が布団に入ると、夫からラインが届きました。

「今週の土曜日あたりイベントどうでしょう?ご検討を」

イベントというのはセックスのことです。ラインを子供に見られたりして、気まずい思いをしないための暗号です。

「心配事が多くて体調悪い(T_T)しばらく休むね」

少し間が空いて、
「了解です~(^-^)お大事に」
気遣うような返事が返ってきました。

私はため息をつきました。息子が高校浪人するかどうかという瀬戸際に、セックスとはのんきだな。
私などはストレスで常時無意識に歯を食いしばっているらしく、歯がぐらぐらして背中は板のように凝っています。

(まあ、夫婦で落ち込んでるよりは、一人でも明るいほうがマシか)
と気を取り直してその夜は寝ました。

ところが翌日から、夫は人が変わったように息子に関心を示し始めたのです。
毎日引きこもっている息子の部屋の前まで行って、「行ってきます」「ただいま」の挨拶をするようになりました。
高校選びにも積極的に乗り出してきました。

なるほど、と私は思いました。

(夫が子供の問題に取り組もうとしないのは、自分が痛くもかゆくもないからなんだ。夫にも不利益があれば動くんだ!)

考えてみれば当たり前のことですが、目からうろこが落ちました。
夫が無関心で不満を感じていましたが、おかげで少し溜飲が下がりました。

こんな素晴らしいお父さんがいるんだから、不登校は直ります

2018-04-18 08:29:04 | 日記
不登校児のための進学説明会で、私は目当てのブースに座りました。

「ほとんど通わなくて済むって、このパンフレットには書いてありますけど……」
私は半信半疑でした。

「はい。ちゃんとクラスがあって、通ってくる生徒さんもたくさんいますけど、
ほとんど出席せずに家でレポートをやるお子さんもいらっしゃいます」

「ほとんどというのは、必ず出席しなければならない日もあるってことですよね?」

「はい。最低限のスクーリングと、テストも受けてもらわなければなりません」

「それにも行けなかった場合、どうなるんですか」

今の息子の様子では、行きたくても当日心が折れてドタキャンしかねません。
高校だけは卒業させたくて、もう私は必死でした。

「その場合は、別料金になりますが、教師がご家庭に訪問して授業を受けていただくこともできます」

地獄で仏とはこのことです。一通りの話を聞くと、私は何度もお礼を言いながら席を立ちました。
感じのいい先生は、丁寧に立ち上がって挨拶をしながらこう言いました。

「こんな素晴らしいお父さんがいらっしゃるんですから、不登校はきっと直りますよ」

私は思わず立ち止まりました。

ちょっと待ってください。ほんの二言三言話しただけで、素晴らしい父親って分かるんですか。
向き直って問いただしたいくらいでしたが、私はグッと我慢しました。

夫には生まれつき「人たらし」の才能があるようで、どんな人からも嫌われません。
そういうところは、息子のお金を盗んだユウト君に似ています。

夫は小中学校のPTA会長を歴任し、よその人からは非の打ちどころのない父親に見えるでしょう。
けれど私に言わせれば、家族には関心のない人です。

横暴な父親であるという意味ではなく、家庭内でも外と同じように人当たりはいいのですが、
我が子とも「波風を立てない」ことを重視して、踏み込まないのです。
子供に嫌われれば落ち込みますが、嫌われてさえいなければ子供が不登校でも、
友達にお金を取られてもあまり気にしません。

子供の問題を私が一人で抱え込んでいても、「大変だね、応援してるよ!」みたいな感じで、
自分の問題だとは思わないようです。

息子が何をしようと、後ろ指を差されるのは私で、夫は痛くもかゆくもないのです。
自分のいい人イメージは盤石だから、「妻が子育てに失敗して……」みたいな顔をしていれば、
悪口ひとつ言われない。

家事も育児も妻に丸投げな分、子供にかかるお金はきちんと責任を持ってくれるかと言えば、金遣いは荒く、
1本500円もする輸入ビールを毎晩何本も飲みます。

お金が足りなければ、私が母からもらったなけなしの遺産を取り崩すか、私がバイトでもすればいいと思っている。
夫は公務員なのでバイトもできないのです。
子供の将来が心配だったら、そんな無駄遣いはできないはずです。

その夫が、素晴らしいお父さんですって?

不登校児のための高校説明会へ

2018-04-11 10:14:37 | 日記
やっとのことで息子から高校に行くという言質を取ることができたのは1月に入ってからでした。

高校を決めるのに先立って、私は夫と不登校児のための高校説明会に行きました。

都内のとあるビルで開催された会場に足を踏み入れると、学校名を掲げたデスクがずらりと並び、
それぞれのデスクの前に折り畳み椅子が数個ずつ並べられています。

入口で配られたパンフレットには、学校の所在地や費用のほか、週に何日通えばいいのか、
部活はあるかなど、詳しい情報の書かれた表が載っていました。

「この学校はゲーム制作が学べるって」
夫はまだゲーム制作にこだわっています。

「もはや何を学ぶとか言ってるレベルじゃないってば。Bの様子を見てないの?
週に1日だって通えたら奇跡だと思うよ私は。なるべく通わずに高卒資格が取れることが先決じゃない?」

「ここは卓球部もある。卓球、好きだったじゃん」
「部活までは無理でしょ」

そう言いつつ私も、近郊にこれだけ通信制高校があると知って、未来は明るいような気がしてきました。

表に書いてある情報から何校かに絞って、席が空いているブースから座りました。

「とても落ち込んでいて、ほとんど家から出られないんですけど」
「やはり全く通えないというのでは困ります。最低でも週に2日は来てもらわないと」
「ですよね……」
がっくりと肩を落とす私。

中学に通っていた頃の息子は、学年150人中20番くらいの成績を取っていたのに、
大学はおろか高校すら行くことができないのでしょうか。

学校って何だろう。勉強する所ではなくて、集団生活を学ぶ所なのでしょうか。
集団生活が苦手な子供は、たとえ頭脳が優秀でも勉強する場も与えられず、将来は社会のお荷物になるしかないのか。
それは社会的にも損失ではないのか。などと私が思ったところで、世の中は変わりません。

「お願いしまーす……」
少し自信をなくして私は何校目かのブースに来ました。

「頭はいい子なんですけど、中2の時のクラスになじめなくて、夏休み明けから不登校なんです。
あまり通わなくても卒業できる高校に行かせたいんですけど」
「そうですか、それはご心配でしょうね」
担当の女性は、若くて感じのいい先生でした。

不登校のまま高校へ

2018-04-03 14:10:57 | 日記
冬でも布団もかけず、ろくに服も着ないで過ごしていた息子は、ひどい風邪をひきました。

「こんな時に布団をかけてやることも、服を着せてやることもできないなんて」
と言いながら,
私はおろおろ息子の周りをうろつくばかりでした。

そんなある日、息子が自分から、
「胸が痛い。病院行く」
と言ってくれました。
私を嫌ってめったに話しかけてくることもなかったのに……。

仕事がちょうど忙しい時でしたが、本当にありがたかったです。
このままでは息子が死ぬのではないかと、本気で心配していましたから。

それ以来、布団はかぶって寝るようになったものの、志望校に提出するはずの課題は出せないまま、
とうとう最終締め切り日を迎えてしまいました。

(高校進学は、無理かもしれない)
と、私は一人で気をもんでいました。私はこの頃ストレスのためか歯を食いしばる癖がつき、
顎が痛かったことを覚えています。

「あなたも慰めてやってよ」
と私は夫に頼みました。

「だって、居間に下りてこないんだもん……」
夫は息子が近づいてこないのが悪いと言いたげです。

「部屋に行けばいいじゃない」
「部屋に入ると、怒られるもん」
子供か、お前は。

「自分が傷つくのがそんなに怖い?
自分の育て方が悪かったんじゃないかとか、親なら思うのが普通じゃない?」
「俺、別に何もしてないもん」
確かに夫は何もしていません。

「何もしてないのが自慢?昔からAばっかりかわいがって、Bにだけ何もしてやらなかったじゃない。
何もしないのが一番いけなかったんじゃない?」

私はもうキレる寸前ですが、
(こいつに言っても無駄だな……)
という無力感で黙り込むしかありませんでした。

たとえ進学できたとしても、この状態では毎日通えるはずもありません。
私は通信制の高校を調べて、なるべく通う日数が少なそうな学校を2校ピックアップしました。
たくさんあると優柔不断になって決められないと思ったからです。意欲が低下している時は、決断力も低下するものです。

「ほとんど通わなくても卒業できる高校もあるよ。こっちの学校はきれいだけど、通う日数は少し多い。どっちがいい?」

どんな形でもいいから居場所を与え、高卒資格を取らせてやりたい一心でした。

わざと高校浪人という選択肢を隠して選ばせると、息子は
「じゃ、こっち」
と渋々、通う日数が少なくて済むほうを指差しました。