「おじいちゃんが生きてたら、こんなにバカにされないのに」
義母は一人で興奮して、うっすらと涙まで浮かべています。
バカにしてるわけじゃ、ないんだけど。
10年も詐欺師にいいように遊ばれていることだって、
(いい人だから、だまされるんだ。お義母さん、かわいそう)
と、私は思っていたのです。義母が怒鳴り始めるまでは……。
でも、義母が「いい人」である範囲は、どうやら「よその人」に対してだけで、
私のことは些細なことで怒鳴りつけても平気なようです。
「じゃあおふくろはさ、俺たちくらいの時に田舎にどのくらい電話したの?俺に電話させたこともないよね?」
夫の皮肉に、義母はグッと詰まりました。
義父は長男だったのですが、駆け落ちして東京に出てきて、親の面倒は見ていないのです。
義母は末っ子で、もちろん自分の親の面倒も見ていません。
「まあ、性格ならしょうがないよ。私も他に頼る人がいないんだから、老後はお前たちに見てもらってもいいから」
最後はごにょごにょと言葉を濁して、義母はそそくさと2階に上がってしまいました。
要するに、義母の怒りの裏に隠された要求は「老後の面倒を見ろ」ということのようです。
「なんか、ごめんね」
と夫が言いました。
そもそも夫が猫トイレの片づけをしてくれないから悪い、と言おうとして思い直しました。
義母は猫トイレを片付けるのがイヤだとか、私の態度が気にくわなくて怒ったのではなく、
怒る口実を見つけてどさくさ紛れに老後の世話を約束させたかったのです。
今日でなくても、近いうちに何か口実を見つけて怒鳴ったに違いありません。
「お義母さんは私みたいにまじめで面白みのない人間より、口のうまい詐欺師のほうが好きなんでしょ」
と嫌味を言うのがやっとでした。
夫はまた「ごめんね」と言いました。嫁姑の戦争に巻き込まれるよりは、
両方を適当になだめておくのが得策だと判断したのでしょう。まったく食えない男です。
帰ってからしばらくの間、自分だけいい子になろうとする夫に腹を立てたり、
自分の悪かったところをいろいろ考えたりして落ち込んでいました。
私が義母のサービス精神に甘えすぎていたのではないか。もっと感謝するふりでもすべきだったのではないか。
内心は、過剰なサービスに辟易していたわけですが……。
なぜって、食事中でも義母が忙しそうにしていたら、私も座っているわけにはいきません。
でも夫は一人っ子で、他に親戚が来ているわけでもなく、いるのは私の家族だけなんです。
当時仕事がすごく忙しかった私は、お正月くらいちょっと休みたかったのに、夫と子供はのんびりしていて、
私だけが義母の手伝いをしなければならないというこの現実……。
でも、私は義母が好きでした。いつ怒鳴られるかとびくびくしながら付き合うのは嫌でしたが、
以前のように仲良くなれるなら、このまま詐欺に遭ったことには触れずに、できる範囲で老後の面倒も見てあげたいのに……。
結局、春休みは、子供の部活動が忙しいのをいいことに義母の家には行きませんでした。
私と義母が決定的に決裂する事件が起きたのは夏休みでした。
義母は一人で興奮して、うっすらと涙まで浮かべています。
バカにしてるわけじゃ、ないんだけど。
10年も詐欺師にいいように遊ばれていることだって、
(いい人だから、だまされるんだ。お義母さん、かわいそう)
と、私は思っていたのです。義母が怒鳴り始めるまでは……。
でも、義母が「いい人」である範囲は、どうやら「よその人」に対してだけで、
私のことは些細なことで怒鳴りつけても平気なようです。
「じゃあおふくろはさ、俺たちくらいの時に田舎にどのくらい電話したの?俺に電話させたこともないよね?」
夫の皮肉に、義母はグッと詰まりました。
義父は長男だったのですが、駆け落ちして東京に出てきて、親の面倒は見ていないのです。
義母は末っ子で、もちろん自分の親の面倒も見ていません。
「まあ、性格ならしょうがないよ。私も他に頼る人がいないんだから、老後はお前たちに見てもらってもいいから」
最後はごにょごにょと言葉を濁して、義母はそそくさと2階に上がってしまいました。
要するに、義母の怒りの裏に隠された要求は「老後の面倒を見ろ」ということのようです。
「なんか、ごめんね」
と夫が言いました。
そもそも夫が猫トイレの片づけをしてくれないから悪い、と言おうとして思い直しました。
義母は猫トイレを片付けるのがイヤだとか、私の態度が気にくわなくて怒ったのではなく、
怒る口実を見つけてどさくさ紛れに老後の世話を約束させたかったのです。
今日でなくても、近いうちに何か口実を見つけて怒鳴ったに違いありません。
「お義母さんは私みたいにまじめで面白みのない人間より、口のうまい詐欺師のほうが好きなんでしょ」
と嫌味を言うのがやっとでした。
夫はまた「ごめんね」と言いました。嫁姑の戦争に巻き込まれるよりは、
両方を適当になだめておくのが得策だと判断したのでしょう。まったく食えない男です。
帰ってからしばらくの間、自分だけいい子になろうとする夫に腹を立てたり、
自分の悪かったところをいろいろ考えたりして落ち込んでいました。
私が義母のサービス精神に甘えすぎていたのではないか。もっと感謝するふりでもすべきだったのではないか。
内心は、過剰なサービスに辟易していたわけですが……。
なぜって、食事中でも義母が忙しそうにしていたら、私も座っているわけにはいきません。
でも夫は一人っ子で、他に親戚が来ているわけでもなく、いるのは私の家族だけなんです。
当時仕事がすごく忙しかった私は、お正月くらいちょっと休みたかったのに、夫と子供はのんびりしていて、
私だけが義母の手伝いをしなければならないというこの現実……。
でも、私は義母が好きでした。いつ怒鳴られるかとびくびくしながら付き合うのは嫌でしたが、
以前のように仲良くなれるなら、このまま詐欺に遭ったことには触れずに、できる範囲で老後の面倒も見てあげたいのに……。
結局、春休みは、子供の部活動が忙しいのをいいことに義母の家には行きませんでした。
私と義母が決定的に決裂する事件が起きたのは夏休みでした。