不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

妻にも母親にもいい顔をする夫

2018-08-28 08:55:18 | 日記
「おじいちゃんが生きてたら、こんなにバカにされないのに」
義母は一人で興奮して、うっすらと涙まで浮かべています。

バカにしてるわけじゃ、ないんだけど。
10年も詐欺師にいいように遊ばれていることだって、
(いい人だから、だまされるんだ。お義母さん、かわいそう)
と、私は思っていたのです。義母が怒鳴り始めるまでは……。

でも、義母が「いい人」である範囲は、どうやら「よその人」に対してだけで、
私のことは些細なことで怒鳴りつけても平気なようです。

「じゃあおふくろはさ、俺たちくらいの時に田舎にどのくらい電話したの?俺に電話させたこともないよね?」

夫の皮肉に、義母はグッと詰まりました。
義父は長男だったのですが、駆け落ちして東京に出てきて、親の面倒は見ていないのです。
義母は末っ子で、もちろん自分の親の面倒も見ていません。

「まあ、性格ならしょうがないよ。私も他に頼る人がいないんだから、老後はお前たちに見てもらってもいいから」
最後はごにょごにょと言葉を濁して、義母はそそくさと2階に上がってしまいました。
要するに、義母の怒りの裏に隠された要求は「老後の面倒を見ろ」ということのようです。

「なんか、ごめんね」
と夫が言いました。
そもそも夫が猫トイレの片づけをしてくれないから悪い、と言おうとして思い直しました。
義母は猫トイレを片付けるのがイヤだとか、私の態度が気にくわなくて怒ったのではなく、
怒る口実を見つけてどさくさ紛れに老後の世話を約束させたかったのです。
今日でなくても、近いうちに何か口実を見つけて怒鳴ったに違いありません。

「お義母さんは私みたいにまじめで面白みのない人間より、口のうまい詐欺師のほうが好きなんでしょ」
と嫌味を言うのがやっとでした。
夫はまた「ごめんね」と言いました。嫁姑の戦争に巻き込まれるよりは、
両方を適当になだめておくのが得策だと判断したのでしょう。まったく食えない男です。

帰ってからしばらくの間、自分だけいい子になろうとする夫に腹を立てたり、
自分の悪かったところをいろいろ考えたりして落ち込んでいました。

私が義母のサービス精神に甘えすぎていたのではないか。もっと感謝するふりでもすべきだったのではないか。
内心は、過剰なサービスに辟易していたわけですが……。

なぜって、食事中でも義母が忙しそうにしていたら、私も座っているわけにはいきません。
でも夫は一人っ子で、他に親戚が来ているわけでもなく、いるのは私の家族だけなんです。
当時仕事がすごく忙しかった私は、お正月くらいちょっと休みたかったのに、夫と子供はのんびりしていて、
私だけが義母の手伝いをしなければならないというこの現実……。

でも、私は義母が好きでした。いつ怒鳴られるかとびくびくしながら付き合うのは嫌でしたが、
以前のように仲良くなれるなら、このまま詐欺に遭ったことには触れずに、できる範囲で老後の面倒も見てあげたいのに……。

結局、春休みは、子供の部活動が忙しいのをいいことに義母の家には行きませんでした。
私と義母が決定的に決裂する事件が起きたのは夏休みでした。

他人にはすごく人当たりのいい義母

2018-08-20 17:12:40 | 日記
私も最初は、
(もし詐欺師ならお金をくすねた途端に姿をくらますはずだ)
と考えて、本当に友達なのかと思ったのですが、10年以上返してくれないというのは尋常ではありません。

それもお金がないというわけではなく、わざわざお金の入った通帳を見せてくれて
「ほら、ちゃんとあるでしょう?明日こそ返すから」
などと言っておいて、その日になると都合が悪くなるというのです。

それでも、義母が「友達だ」と言うならどうすることもできません。
返すつもりがあると相手が言い、義母が納得しているなら、犯罪としては成り立たないのです。

詐欺に遭ったと自分で認めた途端、ショックでボケたりしたらよけいに困るので、
私も夫もその問題にはそれ以上触れずにいました。

もしかしたら義母は、いよいよお金が返ってこないので、私に老後の面倒を見てほしくなったのかもしれません。

それまではいつも、
「お金ならあるんだから、お前たちに老後の面倒はかけないよ。有料老人ホームに入って暮らすから」
と常々言っていたのです。

社交的な義母なら、ホームで大勢の仲間に囲まれて暮らしたほうが楽しいだろうと思って、私も感謝していました。

ところが貸したお金がなかなか返ってこない。
(自分が死んだ後で返ってきたら、お金が転がり込むのはこの嫁のところだ。
だったら、思い描いていた何不自由のない老後を実現するために、嫁に尽くしてもらう権利がある。
でもこんな不愛想な嫁では、自分が親戚に恥をかいてしまう。この際、口の利き方も叩き込まなければ……)
義母がそう思ったとしても不思議はありません。

普通に
「やっぱり老後の面倒を見てくれない?」
などと言えば、無遠慮な私に
「結局お金は返ってこなかったんですか」
と聞かれてしまう。それは避けたい。義母の考えでは、いつかお金は必ず返ってくるのですから。

(義母にはもっと敬意を払うべきだと骨の髄まで思い知らせれば、嫁は恐れ入って言うことを聞くだろう。
そのためにはぐうの音も出ないほど怒鳴りつければいいい)
と、義母は思ったのでしょうか。

それなのにいくら怒鳴っても私が恐れ入らないのを見て、義母は焦り始めたようです。

「おばあちゃんももうすぐ80なんだよ。医者には不整脈だって言われてるし。
心臓がどきどきしてくると、このまま息が止まるんじゃないかって思う時もある」

じわじわと泣き落としに方針を転換し始めました。

義母の怒りの裏にある目的

2018-08-14 08:34:22 | 日記
義母の怒りはまだ収まりません。

「この前テレビで見たんだけどさ、6人孫のいるおばあちゃんが出てきて、
曜日を決めて孫たちがかわるがわる電話してくれるんだって。
だからちっとも寂しくありませんってニコニコしてた。そういう人もいるのにさ……」

また別の話を始めます。

(そりゃ、そういう人が珍しいからテレビに出てんじゃないの?孫にもっと電話させろってこと?)

私はイライラしてきました。怒ってると見せかけて、自分の要求をのませようとしてるんじゃ?

この時はアドラーは読んでいませんでしたが、まさに義母は「目的を達成するために怒ってみせている」みたいでした。
いろいろしてほしいことがあるけど、言い出しにくいから、
怒鳴って委縮させておいて、どさくさ紛れに要求を通そうという……。

最初は猫トイレのことで怒り始めたのに、「帰ってきた時はこういうふうに挨拶しろ」とか、
「おばあちゃんと呼べ」とか「孫に電話させろ」とか、あとからあとから要求が出てきたのがその証拠です。

ではなぜ正面切って要求しないのか。それも私には心当たりがありました。

実は義母は詐欺に遭って、老後の資金をそっくりだまし取られてしまったのです。
オレオレ詐欺なんてかわいいものではありません。生涯働いてためた2千300万円を、
酒場で知り合った「友達」に、「何倍にもしてあげる」と言われて預けてしまい、それきり返ってこないのだそうです。

貸して10年以上もの間、何度も「返す」と言ったのに、
約束した日にはきっと何らかのトラブルが起きて、返してもらえなかったとのこと。

いわく、親戚のせいで口座を差し押さえられた。
印鑑を盗まれた。
交通事故に遭った。

そのたびに繰り出される言い訳は一見筋が通っていて、「無理もない」と思わせられるようなものでした。
でも、それが10年って……。

「それ、詐欺ですよ」
と私は言いました。

「詐欺じゃないよ、あの人も気の毒な人なのよ。絶対に返すって、約束してくれたんだから」
そりゃ、口ではそう言うだろうけど。

「これ、その人が田舎から送ってもらったお米だって。ね、義理堅い人でしょう?半分持っていきなさいよ」
「えっ、いいですよ。毒でも仕込んであるんじゃないですか」

疑い深い私は怖気づきましたが、豪胆な義母は
「だーいじょうぶ、私も食べてみたから」
と平気です。

あとでじわじわ効いてくる毒かも。と思いましたが、断り切れずにお米も半分もらいました。

性格だからしょうがない

2018-08-08 09:46:27 | 日記
義母の家に泊まっている時、義母が突然キレてしまいました。
私が猫のトイレを洗わず、挨拶もそこそこに寝てしまったと言うのです。

ひとこと言い訳させてもらうなら、私は義母を家族のように思っていて、あまり気を使っていなかったのです。
何かしてもらうたびにお礼を言うのも他人行儀だと思うほどに。

そこが気にくわなかったのかもしれませんが、なにしろ義母は私たちがお土産を持って遊びに行くと、
余った料理を入れたタッパーと一緒に、そのお土産まで持たせて帰すような人です。
食べきれずに持たせてくれるお土産には、賞味期限の切れたケーキまで交ざっていて、危なくてしょうがありません。

他人行儀な関係なら、
(せっかくのお土産をそのまま返してよこすなんて、気に入らなかったのかしら)
と傷つくところですが、
(家族なんだから……)
と目をつぶっていました。

そもそも義母は、少しでも多くお土産を持たせて帰すのが親切、と固く信じている人で、
ある時など外袋を開封してある生理ナプキンまでくれたことがあります。

「私はもうアガっちゃったからあげるわ。あんたはまだあるでしょ、アッハッハ」
と豪快に笑いながら。他人だったら絶対くれない物ですよね。

それまでも挨拶がどうしたとか、文句を言われたことはなかったので、
義母も家族だと思ってくれているのだと思っていました。

義母のサービス精神は、私にはありがたいを通り越して負担になることも少なくありません。
私はお土産なんて欲しくないし、今日だって、先に寝てくれと再三念を押したのに。

「子供が寝る時間だから、急いでたんだよ。悪かった」
と夫。

「お前のことは言ってないの。Nちゃんのことを言ってるの」
「ああいう性格なんだから」
「あんな性格じゃダメだって言ってるの。あれじゃお前たちの将来が心配だよ」
へえ、こんな性格ですみませんね。
「まあ、まあ」
近所まで聞こえそうな怒鳴り声に、夫も防戦一方です。

私は意を決して2階から下りてきました。
「違うんですよ、お義母さん。Bが私と寝るって言うので、猫トイレは後で片付けようと思ったんですよ」
なるべく感情的にならないように、私は説明しました。

「だけどさ、」
聞かせるつもりだったのだろうに、いざ本人が現れるとたじろいだように、義母は少ししどろもどろになりました。
「起きて待ってた人に、今日は楽しかったですよ、くらい言うもんだろう、普通」
「はあ、すみません」
人付き合いの少ない私は、礼儀をあまり知らないので、(そういうもんか)と思って謝りました。

義母は思い出したように、
「お義母さんじゃなくて、おばあちゃん!」
と付け加えました。

え、呼び方が気に入らなかった?若いつもりなのにおばあちゃんと呼ばれて気を悪くするならまだ分かるけど。
別に怒鳴らなくても、「おばあちゃんと呼んで」と言えばそう呼ぶのに……。



義母が突然キレました(2)

2018-08-01 07:09:54 | 日記
階下から義母のすごい怒鳴り声が聞こえてきました。
「あれじゃ、駄目だよ」
夫はきょとんとしたように聞き返しました。
「何が?」
「まったく、お前は」
義母はさも情けないというように言いました。
「今、Nちゃんが言っただろ。シロがオシッコしちゃったって」
Nちゃんというのは私のことです。
「ああ」
「そう言っておいて、始末しないで2階に上がっちゃったんだよ」
「ああ、ごめん。俺がやっとくよ」
「そういう問題じゃないだろう」
義母はまた怒鳴りました。地声も大きいほうですが、怒鳴っているのでご近所にまで聞こえそうです。息子の顔をうかがうと、目を閉じていましたが、誰の味方をしていいか分からなくて寝たフリをしているのかもしれません。この家に来るといつも義母と一緒に寝る娘は、さっき義母の部屋に行きましたが、まだぐっすり眠り込んではいないでしょう。義母はわざとみんなに聞かせようとしているかのように、ますます声を張り上げました。
「大体、帰ってきたら『今日は楽しかったよ』くらい言うのが普通じゃないのかい」
それは夫も言いませんでした。
「いや、ごめん。早く子供を寝かせようと思って…」
寝かせてるのは夫ではなく私なのですが。
「いくら早く寝かせたくっても、一言でいいんだよ。起きて待ってた人に、ただいまも言わないで」
義母は泣きださんばかりに興奮しています。
「いや、ただいまは言ったよ」
「いや、お前は言ったけど、Nちゃんは言わなかった」
「声が小さかっただけじゃない?寝ててって、言ったのに」
夫は少しうんざりしてきたようです。
「そういう問題じゃないよ」
義母はまた怒鳴りました。
「ムスッとして、人が洗濯してたたんでやった子供の下着をありがとうも言わずに持って行ってさ…」
私の心臓は、悔しさと恥ずかしさで早鐘を打ちはじめました。確かに私は、義母の親切に甘えていたのかもしれない。不愛想なのも確かです。それが私の性格だと、義母も承知して付き合ってくれているのだと思っていました。そんなに不満をためていたなんて……。