不登校になった自分のことを親しい友達が面白そうに噂しているのを聞いた翌日、
いつものようにプリントを持ってきてくれた彼に、息子は会おうとしませんでした。
「昨日、ユウト君が近所の子に言ってたこと、気にしてるの?」
私が用心深く探りを入れると、息子の顔がゆがみました。
「ユウト君は、悪気はなかったんだと思うよ」
でも息子は何も言わずかぶりを振るだけでした。
私は、元気そうなのに登校しない息子に腹を立てていた時期でもあり、
悪く言われるのも無理はないと思っていました。
子供同士、噂をすることもあるだろう。学校に行けないのは、事実なんだし。
言われるのがイヤなら登校すればいいのだ、と思いました。
「ごめんね。今は、学校の人に会うのもつらいみたいなの。
プリントは今度からお姉ちゃんに持って帰るように頼むね」
驚いたように私を見上げたユウト君は、
「あ、はい」
とだけ言うと、心なしかしょんぼりと帰っていきました。
親切で、気のいい子でした。
息子が休み始める直前の夏休み、近所の子供たちみんなで花火をしたことがありました。
アイスを食べながら楽しく花火をして、最後に線香花火をしている時、
ユウトくんが何かの話の流れで
「僕、誰からも嫌われたことないもん」
と言いました。
(自分で言うか?)
と思って少し可笑しかったのですが、確かにユウト君ならそうかもしれないなと思い、
「そうなんだ」
と私は相槌を打ちました。息子はもちろん私も、ユウト君が大好きだったのです。
ユウト君にとってはただの面白い噂話だったのかもしれませんが、
息子には受け止めきれないほどのダメージだったのでしょう。
息子の生活リズムは急速に乱れ始めました。今思うと、
友達が登下校する時間に居間にいるのが苦痛だったのかもしれません。
この頃のことは今思い出すのもつらいです。
息子は何日も徹夜をし、飲まず食わずでゲームをするようになりました。
風呂も入らず、だんだんに着替えも億劫がるようになり、
パンツ1枚でいることがほとんどでした。まるで廃人のようでした。
私の小言は、
「早く宿題を片付けて学校に行きなさい」
から、
「しばらく休んでいいから、生活のリズムは崩さないで」
に、さらに、
「もう学校は行かなくていいから、時々は寝なさい。ご飯も食べなさい」
に変わりました。
ゲームに疲れ果て、椅子に座ったまま眠り込んでいる姿を見て、私はゾッとしました。
私の知らない間に、私が寝ている間とか、目を離した隙に死んでいるのではないか。
本当にそんな恐怖を感じました。
まだ長くなりそうなので続きは今度書きます。
いつものようにプリントを持ってきてくれた彼に、息子は会おうとしませんでした。
「昨日、ユウト君が近所の子に言ってたこと、気にしてるの?」
私が用心深く探りを入れると、息子の顔がゆがみました。
「ユウト君は、悪気はなかったんだと思うよ」
でも息子は何も言わずかぶりを振るだけでした。
私は、元気そうなのに登校しない息子に腹を立てていた時期でもあり、
悪く言われるのも無理はないと思っていました。
子供同士、噂をすることもあるだろう。学校に行けないのは、事実なんだし。
言われるのがイヤなら登校すればいいのだ、と思いました。
「ごめんね。今は、学校の人に会うのもつらいみたいなの。
プリントは今度からお姉ちゃんに持って帰るように頼むね」
驚いたように私を見上げたユウト君は、
「あ、はい」
とだけ言うと、心なしかしょんぼりと帰っていきました。
親切で、気のいい子でした。
息子が休み始める直前の夏休み、近所の子供たちみんなで花火をしたことがありました。
アイスを食べながら楽しく花火をして、最後に線香花火をしている時、
ユウトくんが何かの話の流れで
「僕、誰からも嫌われたことないもん」
と言いました。
(自分で言うか?)
と思って少し可笑しかったのですが、確かにユウト君ならそうかもしれないなと思い、
「そうなんだ」
と私は相槌を打ちました。息子はもちろん私も、ユウト君が大好きだったのです。
ユウト君にとってはただの面白い噂話だったのかもしれませんが、
息子には受け止めきれないほどのダメージだったのでしょう。
息子の生活リズムは急速に乱れ始めました。今思うと、
友達が登下校する時間に居間にいるのが苦痛だったのかもしれません。
この頃のことは今思い出すのもつらいです。
息子は何日も徹夜をし、飲まず食わずでゲームをするようになりました。
風呂も入らず、だんだんに着替えも億劫がるようになり、
パンツ1枚でいることがほとんどでした。まるで廃人のようでした。
私の小言は、
「早く宿題を片付けて学校に行きなさい」
から、
「しばらく休んでいいから、生活のリズムは崩さないで」
に、さらに、
「もう学校は行かなくていいから、時々は寝なさい。ご飯も食べなさい」
に変わりました。
ゲームに疲れ果て、椅子に座ったまま眠り込んでいる姿を見て、私はゾッとしました。
私の知らない間に、私が寝ている間とか、目を離した隙に死んでいるのではないか。
本当にそんな恐怖を感じました。
まだ長くなりそうなので続きは今度書きます。