季節風~日々の思いを風に乗せて

喜寿になったのを機に新しいブログを始めました。日々の思いをつぶやきます。

枯野あるらし~「塔」3月号 永田淳・選

2022-03-18 15:02:09 | 短歌
●ひとり言つぶやくやうに語りつぐ受話器のむかふ枯野あるらし

 訥々と話し続ける電話の相手は誰なのだろう。年老いた親を想像しながら読む。茫洋とした語り口,話の内容,まるで枯野に向かって話しているように感じられるのだ。説明的にならずに差し出される景がいい。

 *「説明的にならず差し出される景」,これからも心掛けたいと思います。
   ありがとうございました。

●日の暮れの早き冬日は熱燗に今日のひと日を肯ふがよし
●眠る子の小さき柔らな手の中に小春の丸く包まれてあり
●ビルも木も影絵に替へて冬夕焼飲みに行こうと誘ふ友なく
●約束のスタバに向かふ街路にはヴェルレーヌのやうな雨降る
●パソコンをつま先立てて膝に打つ電車のをみな爪に色なく

「選歌欄評」 白井 均

●採りきたる芒に庭の萩を添へ団子五つに月の出を待つ

 仲秋の行事を詠う。陰暦八月十五日の夜に供え物を月光のさす廊下や窓辺に置く。この夜を良夜ともいう。感心するのは伝統行事を今でも続けておられることである。今,どれほどの家庭が行っておられるのだろか。高安国世は「息ぐもる夕べの窓やほのかにも望なる光(かげ)の訪るるとき」と詠った。絶やしたくない行事の一つである。

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*庭にはヒイラギも植えてあります。もちろん,イワシの頭を挿し節分に玄関に飾るためです。ありがとうございました。