「目が泳ぐ」という慣用句はありますが,「眼が溺れる」という使い方はありません。ところが,それが眼の症状として現れたのです。驚きました。テレビを観ていた時です。突然左眼の縁から水がわき出すように見えたのです。ひたひたと湧く水に眼球が溺れ始めました。慌てて目を閉じても見える様子は変わりません。15分ほど続いて,眼球の周りの水はひき,正常な視界が戻りしました。
症状から病名などを調べました。まれに脳梗塞を起こすとか,恐ろしい病気の前兆でもあるようです。急ぎ,眼科を受診しました。白内障の疑いがあるといわれて5年前に診ていただいて以来です。
おなじみの眼球に空気を吹き付ける眼圧検査から始まり,眼底の写真なども撮りました。意外なことに待ち時間が少なく,診察室に入りました。「多分一過性のものでしょう,症状が出ているときに来るといいのですが無理ですよね」「白内障は進んでいません」「右目の眼球の腫れは脂肪腫というもので大ききはならないでしょう」 人に不快な印象を与えないか気になりますというと,先生がのぞき込んで「私は気になりませんよ」と。可愛い女医さんがそう言ってくれたので安心しました。「溺れた」左眼は一過性,右目は気にならないほどの腫れ,白内障は進んでいない・・・それまでのもやもやが吹き飛び,会計を済ませ病院を出ました。
比喩でなく,一瞬目の前が真っ白になりました。検査の点眼液で開いた瞳孔がおさまっていなかったのです。目を細めても,手庇で避けてもどうにもなりません。自宅は徒歩で10分「目と鼻の先」なのですが,病気には詳しく「一目置く」妻に車で迎えに来てもらいました。
怖ろしい病気であるかもしれないと一時は「目の前が暗く」なりました。でも,安心しました。これで「眼のない」お酒がゆっくり飲めます。「眼が座る」ほど飲むと「痛い目に会いそう」ですが。