戦ひにもどる夫と国境に抱きあふ妻の手にネコヤナギ
二歳なる吾は防空壕に泣きしとふキエフの地下に子らが凍てをり
向日葵と小麦の大地に春近し銃を持つ手に種は蒔けない
桜もちの匂ひがのこる空つぽの箱すてられずお手玉いれる
干瓢に剥かれし後の夕顔の実と泳ぎたるふるさとの川
先生にしかられてゐる子の横に叱る言葉に傷つく少女
ひとり言つぶやくやうに語りつぐ受話器のむかふ枯野あるらし
故郷の空へゆつくり秋の雲 詫びねばならぬ人ばかりなり
地下鉄の10番出口に開きたる Googleマップに迷ふ月島
おのが身を窓に打ちつける鵯(ひよ)に似て相談室に少女が呻く
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