季節風~日々の思いを風に乗せて

喜寿になったのを機に新しいブログを始めました。日々の思いをつぶやきます。

80歳の坂を上がる~来年は何をしようか

2022-12-31 15:43:55 | 日記
梅雨の地にはずまぬ球は投げあげる 中村草田男 

不思議な俳句だ。梅雨で湿った地面にボールを落としてもはずまない。そんなボールはせめてどんより曇った空へ投げ上げてみようか、という意味だろうか。草田男の心象風景なのかもしれない。

この句は,今年の私の弱気を変えてくれた俳句でもあるのだ。 
4月ごろ、短歌の会から原稿依頼が来た。毎月10首程度の作品を選んで、その作品の批評をしてほしい、ページ数 は2ページ。それを1年間続けるのだと。

その依頼を断ったのだ。もちろんそんな力がないことはわかっている。しかし,これまでの私なら、力不足は承知で書かせて下さいと言っただろう。書くことによって学ぼうという意欲があっただろう。意欲が落ちたのだ。
はじめてもうすぐ80歳という年齢を感じた。 
ここ10年かけて「共に生きる」というキーワードで道徳の研究をまとめあげた。その結果,もう無理しないでいいかなという、気持ちが出てきていたのだろう。

弾まないボールになっていたのだ。これではいけない、もう少し自分のためではなく、誰かの役に立つことをしていきたい、自分の考えを前に進めたい。はずまないボールを投げ上げよう。

でも何ができるだろう。 周りの人に喜んでもらえることはなんだろう。今問題になっていることなどを一緒に聴いたり語り合ったりするのはどうだろう。 6月から月1回の講演会を企画した。会場借用に関する団体の立ち上げ,今年7回のテーマと講師依頼,資料等の準備,経費…。当たり前だがすべて自分で行った。幸い講師に依頼した人たちは多忙にもかかわらず,また薄謝にもかかわらず(ほとんどの方がそれさえも受け取らなかった)快く90分の話を引き受けてくれた。

第1回「墓石は語る」(地質研究家)第2回「命に寄り添う」(看護師・生と死を考える会会長)〇「ボランティアの楽しみ」(臨床心理士)〇「「今」を生きる」(僧侶)〇「感謝して生きる」(道徳研究団体関東ブロック部長)〇「子どもが危ない」(精神保健福祉士 市教育委員)〇「上皇后美智子様のお歌」

毎回20名定員の会場がほぼ満席になった。
弾まないボールをそのままにせず,投げ上げて良かったと思う。
さて,年齢とともに衰えていく肉体と頭脳,「分かるとは何か」「分かったつもりにならない」という生涯のテーマを考え続け,周りの人たちのために来年は何ができるだろうか。ゆっくり考える正月でありたい。

大晦日,穏やかな空に白い雲が流れている。



慈悲の光~上皇后・美智子様のお歌(2)

2022-12-30 13:17:52 | 短歌
慈悲の光~上皇后・美智子様のお歌(2)

話し終えて以下のような挨拶をした。これで今年企画した全7回の会を終了。来年また喜んでいただける会を行いたいと思う。
                  *
今を生きる私たちに世界は必ずしも穏やかな日々を保証してくれるものではありません。
今こうしている中でもミサイルに怯え寒さに震える人がいる。世界人口78億人のうちトイレのない生活を送っている人20億人,年間約30万人(一日800人以上)の5歳未満の子どもたちが汚れた水や不衛生によって命を落としている。地球温暖化による異常気象は,SF映画の氷に覆われた世界を現実のものにしようとしている。戦争,災害,子どもの貧困,憎しみや偏見や中傷・誹謗・・  嘆くことはたくさんあり不安は募ります。

しかし,時には,私たちは何かわからないけれど,大きな光に包まれて生かされていると感じることも安心感を得るには必要だと思います。
一人では生きられない,誰かに助けられている,恩を感じているとは口にしますが,誰に助けられているのか,何に守られているのかを具体的に考えることは多くありません。忘れがちでもあります。実際に忘れています。

私たちは目に見えぬ大きな慈悲の力に包まれているのではないか,その力によって生かされているのではないか,そう考えることによって不安が安らぐこともあるのではないでしょうか。
私たちを包む慈悲の光の一つに美智子さまのお歌がある。
今日ご紹介したお歌の一つでも,これからの生活の中で思い出していただければ,今日お話しさせていただいた甲斐があります。
最後までお聞きいただいてありがとうございます。よいお年をお迎えください。



慈悲の光~上皇后・美智子様のお歌(1)

2022-12-29 15:49:50 | 短歌
個人的に立ち上げた勉強会を月一回の頻度で開催した。少ない謝礼(それもほとんど受け取ってもらえなかった),多忙な中にも関わらず,6人の方々にお話しいただいた。「墓石は語る」(地質研究家)「命に寄り添う」(看護師)「ボランティアの楽しみ」(臨床心理士)「今を生きる」(僧侶)「感謝して生きる」(道徳研究団体役員)「子どもが危ない」(NPO理事)いずれも専門的な知見に基づいた有意義なお話しであった。

最終回は私が標記のテーマで話した皇太子妃殿下,皇后陛下,上皇皇后陛下としてこれまでにお詠みになられたお歌
   あづかれる宝にも似てあるときは吾子ながらかひな畏れつつ抱く
                                                                                           (昭和34年)から
     今しばし生きなむと思ふ寂光に園の薔薇のみな美しく
                              (平成31年)までの45首,もちろんいちばん好きなお歌
   命あるもののかなしさ早春の光のなかに揺(ゆす)り蚊の舞ふ
 も含めて鑑賞した。

美智子様のお歌を進んで読むという人は,ファンか研究家でなければそう多くないと思われる。文語,旧仮名遣いで書かれたお歌を分かりやすく伝えるために苦慮した。そこで,当時の報道写真やエピソードなどを利用し,56枚のシートで約2時間のパワーポイントにまとめた。さらに資料として「ご略歴」を作成し配布した。

この話を通して伝えたことは次の三点であった。

  • 雅子さまがどうとか秋篠宮妃殿下紀子さまがどうとか,ゴシップしか伝わってこない皇室の本来の姿を考えること。
  • 私たちが生きてきたここ80年の出来事や歴史を振り返ること。
  • 何よりも美智子様のお歌そのもののすばらしさ~思いやり・慈悲の心に満ちたお歌を味わうこと

美智子様のお歌には「光」が歌われることが多い。この「光」とは,神仏のまなざしや思いなのだろうが,美智子様ご自身の「思いやり・慈悲のお心」であるように考えられる。「かなし」の平仮名にはどのような漢字をあてればいいのだろうか・・・十分に美智子様のお歌の意味を伝えられたかどうかは分からない。参会してくださった方々が,美智子様の「やさしさ」に包まれてくれたのなら嬉しいのだが。


サンタさんにおせんべいを

2022-12-25 09:51:19 | 日記
孫の書いた日記を読みました。

12月25日
(前略)朝おきてすぐ,1かいにおりて行きました。
なぜかというと、プレゼントをとどけてくれるサンタさんに
おれいのお手紙とおせんべい、
トナカイさんにはにんじんをおいておいたからです。
見たらなかったのでうれしかったです。 (後略)

お礼のお手紙の内容は教えてもらえませんでした。
トナカイに人参という発想は「アナと雪の女王」のルドルフとオラフからでしょうか。

それにしても、サンタクロースにお礼の手紙を書き
お腹がすくだろうとおせんべいを置き
トナカイにごほうびの人参をあげるとは、、、、
いつまでもやさしさを持ち続けてほしいと願いました。
パパとママも同じような気持ちで、そっとサンタさんへの手紙を読み
人参とおせんべいをしまったのでしょうね。

自選・今年の10首

2022-12-24 15:16:38 | 短歌
戦ひにもどる夫と国境に抱きあふ妻の手にネコヤナギ
 
二歳なる吾は防空壕に泣きしとふキエフの地下に子らが凍てをり

向日葵と小麦の大地に春近し銃を持つ手に種は蒔けない
 
桜もちの匂ひがのこる空つぽの箱すてられずお手玉いれる

干瓢に剥かれし後の夕顔の実と泳ぎたるふるさとの川

先生にしかられてゐる子の横に叱る言葉に傷つく少女

ひとり言つぶやくやうに語りつぐ受話器のむかふ枯野あるらし

故郷の空へゆつくり秋の雲 詫びねばならぬ人ばかりなり

地下鉄の10番出口に開きたる Googleマップに迷ふ月島

おのが身を窓に打ちつける鵯(ひよ)に似て相談室に少女が呻く