鹿児島→新潟を歩いて帰宅する男性を直撃! 彼はなぜ歩いて帰るのか?
秋は旅の季節。電車や飛行機での移動も良いが、四国八十八カ所や五街道などを歩いて巡るのも良い。だが、そうするには体力や気力、時間、お金などが必要で、なかなか思いきれるものではない。そんな諸事情を乗り越えて、鹿児島から新潟の自宅までを歩いて旅している男性を直撃した。
新潟市在住の高橋剛さん(40)は、2015年9月にまとまった時間が取れることから、新潟に雪が降り移動が困難になる12月ごろまでに、どこかから歩いて帰宅する旅がしたいと思いついた。出発地は鹿児島か北海道で迷ったが、秋の深まりを考慮し、温暖な気候の鹿児島に決めたという。
9月4日に自宅を出発した高橋さんは、全国のJR線普通列車などが乗り放題となる「青春18きっぷ」を使い、鉄道を使って8日に鹿児島・志布志駅に到着。そこから徒歩で帰宅している。鹿児島から九州を北上して山口に入り、島根、広島、岡山、鳥取を経て21日現在、兵庫県までたどり着いた。直線距離にして550キロ以上。旅を始めて既に40日以上が経過している。これからさらに東に進む予定だ。
高橋さんの存在を知ったのは、携帯電話やスマートフォンで現在地登録を繰り返し、キャラクターを育てる位置情報ゲーム「キャリー・ストーリー」がきっかけだ。ゲームの中に、ユーザーが自由に作成、公開できる「ゲームブック」という機能があるのだが、そこで高橋さんが旅日記を公開していたのだ。
「すごい人がいるものだ」と感心しながら読み進めると、21日は筆者の自宅から車で約30分の兵庫県丹波市の道の駅に宿泊するとの書き込みを発見。もしかしたら会えるかもと、ダメ元で向かうと、道の駅ではなかなか目にしない大きなリュックサックを発見。もしやと思い近づいてみると、それが高橋さんだった。
高橋さんは30歳ごろから、いろいろな方法で旅をしているという。バイク旅から始めたが、慣れるとおもしろさを感じられなくなり、ママチャリ(自転車)にシフトして日本一周を2回達成。しかし、自転車は壊れた時の修理が大変なため、体さえ壊さなければ続けられる徒歩の旅に興味を持つように。四国で歩き遍路を3回達成して自信をつけ、今回の旅に臨んだのだという。資金は14年冬から15年春に派遣の仕事でためた。
自衛隊に勤務していたこともある高橋さん。毎朝午前6時に出発し、日が沈むまでをめどに10〜13時間、平均30キロの道のりを歩く。ルートは大まかには決めているが、道路の状態やその時の気分で変えることもある。峠を大きく迂回(うかい)する国道を歩くより、県道などを突っ切って峠越えしたほうが近い場合もあるからだ。
インターネットカフェやホテルに泊まることもあるが、だいたいは道の駅や公園で寝袋にくるまって夜を明かす。最近は夜が冷えるため、テントを使うようになった。
道路をひたすら歩くだけの旅。少しの寄り道で大きな時間のロスになるため、ほとんど寄り道はしない。当然のことながら、歩き続けていると疲労はたまるし、体も痛くなってくる。野宿は寒いし、危険も伴う。警官から職務質問を受けることもある。なぜそこまでして旅を続けるのか。
「観光地に行っておいしいものを食べて楽しむのならわざわざ歩く必要はない。結局は自己満足なのだろうが、自分に課したキツイことを乗り越えて『やってやったぜ』と思うためにやっている」
誰かに言われてやっているわけではない。だからこそ、「きつくなったら途中でやめてもいい」と思っている。高橋さんは、「基本的にM(マゾヒスト)だから」と言って笑った。
ガラケー(フィーチャーフォン)ユーザーである高橋さんは、今回の旅の行程や感想は日記形式でゲームブックに書き込んでいる。なんとなく始めた取り組みが注目されるようになり、他のプレーヤーから励ましやルート情報などが書き込まれるようになった。「これまでゲーム内で交流のなかった人たちが情報をくれたりして本当にありがたい」と感じている。
今後は「中津川で栗きんとんを買う」ために岐阜県を目指し、そこから長野などを通って帰宅する予定だ。当初は2カ月ぐらいを想定していたが、それ以上かかりそうな感じだという。「とりあえずは行けるところまで行ってみます」。自己満足と言っても、なかなかできるものではない。残りは直線距離でも450キロ以上。体に気を付けて歩き続けて、「やってやったぜ」と感じてほしい。
(ライター・南文枝)
今の会社を辞めることになったら、何か挑戦してみたいなぁ。
少なくとも、30年ほど前に行ったことのある、青森・小泊あたりを旅してこようか。